【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ

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33 元家族の悪あがき② 〜フラワ視点〜

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 リミアリアに返り討ちにされた五日後、フラワのもとにナンサンがやって来た。
 本当のことを知り、自分を糾弾しに来たのかと思ったが、応接室で待たせていたナンサンの表情はとても柔らかかった。

「急に訪ねてきて悪かったな」
「い、いえ。ナンサン様にお会いできて光栄です!」

 ナンサンの様子を見て、フラワの重かった心は一瞬にして明るいものになった。

(私を信じて調べるのをやめてくれたのかしら。もしくは、調べたけれど、彼らの言うことなんて信じないって感じ?)

 満面の笑みを浮かべ、フラワはナンサンの隣に座って腕にしがみつく。

「リミアリアが嘘つきだったこと、わかってくださいましたか?」
「……いや。リミアリアの言う通り、フラワは何度も元イランデス伯爵のところに行っていたんだな」
「……え?」
「調べてみたら、元イランデス伯爵の部下が、彼とお前は体の関係があるものだと思っていると証言した」
「そ、そんな」

(エマオ様が口止めしていたはずなのに、どうして話をしているのよ!?)

 フラワは大きく深呼吸して、心を落ち着けてから尋ねる。

「ナンサン様、何をおっしゃっているんですか? それはリミアリアが手を回して、そう、言わせたんだと思います」

 フラワにとって、ナンサンは結婚相手として望んでいるわけではない。リミアリアからアドルファスを奪うための駒の一つなだけだ。
 結婚を求められても断るつもりだった。
 そうすれば、純潔を失っていることをナンサンにバレることはないからだ。

「そうか……。そう信じたいな」

 暗い表情で俯いたナンサンの腕に頬を寄せて拗ねてみせる。

「酷い。信じてくれていなかったんですね」
「フラワに一つだけ頼みがある」
「頼みってなんですか?」
「いいから頼みを聞いてくれ」

 いつもならば、フラワを慰めていたナンサンが、今日は素っ気なかった。

(もしかして、まだ疑ってるの? こんなことなら、毒入りのマドレーヌを捨てるんじゃなくて、彼に食べさせておけば良かった)

 たとえ、フラワの目の前でナンサンが死んでも、マドレーヌに毒を入れたのは自分だとはわからない。
 店か、マドレーヌを買った人物か、リミアリアの邸の使用人が疑われるくらいだろうと考え、フラワはかなり後悔した。

「頼みってなんですか?」

 とにかく今は機嫌をとっておこうと、フラワが笑顔で尋ねると、ナンサンは厳しい表情で言った。

「俺と一緒に元イランデス伯爵の所に行って、噂が真実か確認しに行こう」

 この頼み事は、リミアリアから提案された内容だった。

「……は?」

 エマオは現在、留置所にいるが、面会ができないわけではない。

(会いに行ったりしたら、彼は全てを話すに決まってる! 言い逃れができなくなっちゃうじゃない!)

「やましいことがないなら、一緒に行けるよな?」
「そ、それは……」
「今回の件は父上がとても怒ってるんだ。お前を信じていて良かったと証明したい」
「~っ!」

 断る理由がすぐには見つからず、この時のフラワはうなずくしかなかった。


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