【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ

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55 私からあなたを捨てたのですよ

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 亡くなった人に未来はないというが、その人の未来を奪ったのは誰なのか。

 そして、人の命を奪った人間の未来をどうして優先しなければならないのか。

 今のリミアリアの頭の中には、その言葉しかなかった。
 
 テイランとホリーへの憎しみで冷静な判断ができなくなったリミアリアが口を開こうとしたとき、アドルファスがテイランたちに話しかけた。

「ここまで根気よく話をしてきたが、お前たちがどうあがいたって輝かしい未来はない。動機がなかったと否定しても、毒物を入手し、その毒物をリミアリアの母の食事に入れたのはお前たちだ」
「そ、それは……っ」

 びくりと体を震わせた二人に、アドルファスは冷たい笑みを浮かべて話を続ける。

「言い訳は騎士にすればいい。リミアリア、何か言うことはあるか?」
「いいえ。もう話すことも嫌です」

 リミアリアが首を横に振ると、アドルファスは呼び鈴を鳴らし、駆けつけたメイドに指示をする。

「兵士を呼んできてくれ。彼らを外で待たせている騎士に引き渡す」
「承知いたしました」

 メイドが去っていくと、テイランとホリーは必死に訴える。

「ま、待ってください、アドルファス殿下! 私たちは何もしていません!」
「そうです! 結果的に人が亡くなったのは確かですが、私は人を殺すつもりなんて、一つもなかったのです! 悪いのはテイランだけです!」
「何を言っている!? 悪いのはお前だけだろう!」

 未だに醜い言い争いを続ける二人を見つめ、リミアリアは口を開いた。

「静かにしてください」
「……っ!」

 今は逆らってはいけない。
 本能的に察したのか、テイランたちは口を閉ざし、居ずまいを正した。

「今になって何をしようがあなたたちのやったことに変わりはありません。それから、母を奪われた私にとって、あなたたちの未来が絶望的であっても痛くもかゆくもありません」
「そんな! 私はお前の父なんだぞ!?」
「それは過去のことです。私からあなたを捨てたのですよ。父だから助けようなんて感情が私に浮かぶと思いますか?」
「ううっ!」

 テイランは言い返せないのか、言葉にならない声を上げた。

 リミアリアも、ここまで強い言葉を吐くつもりはなかった。
 だが、母の無念を考えると、リミアリアはどうしても口に出さずにいられなかった。



 
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