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9 私の婚約者が浮気をする理由 3
ジェラ伯爵令嬢は、ニールからピロートークで聞いた話をララベルに教えてくれた。
彼はまだ、ララベルを愛しているが、一番の関心はフィアンであり、今の彼の望みはフィアンの死だった。
比べられる人間がいなくなり、楽になるからだという。
何より、彼が死ねば、ララベルも彼を忘れるだろうと思った様だった。
(彼にフィアン兄様をそこまで憎ませたのは、私にも一因があるのね…。だけど…)
ララベルは小さく息を吐いた後、呟く。
「ニール様は嘘をついていたんですね…」
「何がですか?」
ジェラ伯爵令嬢に聞き返され、ララベルは、以前、ニールから聞いた話を彼女に伝える。
「私には、商売の女性としか関係を持っていないと…」
「最初はそうだったようです。でも、フィアン様への対抗意識が強くなってからは、特別な私だけは違いました」
ジェラ伯爵令嬢はララベルに向かって、勝ち誇った様な笑みを浮かべた。
ララベルは相手の挑発は気にせずに、自分の聞きたい事を聞く。
「ニール様はフィアン兄様との縁談を断った方に声をかけていたんですか?」
「はい。何人かはお断りされた様ですが、何人かとは、どこかへ出かけたりされた様です。体の関係については、ないと信じています」
ジェラ伯爵令嬢は、とにかく、ニールには自分しかいないと言いたい様だが、ララベルにはそんな事はどうでも良かった。
(どういう事なの? フィアン兄様は婚約者候補の人から断られてばかりで、今も婚約者はいない。ソフィーが言うには今の今まで、彼女もいないと言っていたわ…。ニール様がフィアン兄様をふった女性ばかりに声を掛けているというのは…、フィアン兄様への当てつけ? でも、伯爵令嬢にまで手を出すなんて…。しかも、複数回あるみたいだし)
「あなたのご両親はこの事を知っていらっしゃるんですの?」
「はい。知っています。実は…」
ジェラ伯爵令嬢がその後に話した内容を聞いたララベルは頭を抱えたのだった。
そして、次の日、ララベルは魔石を使って、メフェナム邸にやって来た。
ニールは今までとは違い、彼女を屋敷のポーチで出迎えた。
「ララベル。やっと俺の気持ちを理解してくれたのか?」
「理解はできていませんが、お話したいと思っておりますの。今まで、私達は話し合いが足りていなかったと思いますので」
メイドに応接室に案内されている途中で、ニールが話しかけてきたので、ララベルは苦笑して答えた。
今回は侍女を1人連れてきていて、騎士と侍女には部屋の前で待っていてもらい、何か大きな物音がしたら、すぐに入ってきてもらう様にお願いした。
メイドがお茶をいれて去っていった後、当たり前の様に隣に座っているニールに、ララベルは早速、本題を切り出す。
「ニール様。昨日ですが、私の元にジェラ伯爵令嬢がいらっしゃいました」
「……なんだって?」
先程までの笑顔が消え、ララベルに聞き返したニールは眉根を寄せて続ける。
「彼女に何か言われたのか?」
「あなたとの関係をお聞きしました。商売の女性としか関係を持たれていないと仰っていましたが、あれは嘘だったのですね?」
「そ、それは…、彼女とは割り切った関係で」
「彼女はそう思っておられませんわよ?」
ララベルは一度、目を伏せた後、ニールに顔を向けて続ける。
「あなたの考えていらっしゃる事がわかりません。あなたはどうして、浮気を続けているんです? 私がフィアン兄様を忘れられない事への抗議ですか?」
(その場合は、私に非があるわ。ここまで追い詰めてしまったのだから…)
「…違う」
「では、何なのですか? 私を悲しませたい? 怒らせたい? 何なのですか? お願いです、ニール様。あなたは、どうして浮気をされるんですか? その理由を教えていただけませんか?」
「話を聞いても、俺を嫌ったりしないなら…」
「承諾しませんと、教えていただけないのですわよね?」
「…ああ」
「わかりました。嫌わない、という事だけはお約束します」
ララベルが頷くと、ニールはホッとした様に口を開く。
「最初は…、君に嫉妬してほしかった」
「…最初は?」
ララベルが聞き返すと、ニールはぽつりぽつりと話し始めた。
「ああ。だけど、だんだん、フィアン様が憎らしくなっていく気持ちの方が強くなった。君が思いを寄せているだけじゃない。友人も多く、賢くて、滅多な事じゃ怒らない。俺が嫌味を浴びせても、素直に謝るだけで、自分が悪いと思った場合は、素直に非を認めるんだ」
(将来、公爵になるという事で、フィアン兄様は感情のコントロールを、ミーデンバーグ公爵に幼い頃から教えられているから、そのせいなのよね…。ソフィーが言っていたけれど、学園時代は、朝は鍛錬、夜は学園の授業の予習など、他人にわからないとことで努力をしていたというし…。でも、ニール様には、努力をしていないのに、何でも出来る様に見えてしまったのね)
「でも、非を認めて詫びるのは当たり前の事ではないのですか?」
「それはそうかもしれないけど、何か腹が立つじゃないか。少しは表情を変えろと思ったんだ!」
「…ニール様、結局、あなたが浮気していた理由は、フィアン兄様への嫉妬なのですか?」
「似てるけど、違う」
「…?」
ララベルが無言で答えを促すと、ニールはララベルに笑顔で言う。
「フィアン様は、誰とも付き合った事がないんだ。女を知らない。だから、俺が先に女を知った。フィアン様は女性と付き合った事もない。俺には君という婚約者はいるけれど、付き合った事はなかった。だから、フィアン様を断った女性と付き合う事にしたんだ。彼にはなびかなかった女性を俺のものにする。俺は、フィアン様に勝ったんだ!」
ニールの浮気の理由は、ただ、フィアンよりも自分が勝っているものを見つけたいだけだった。
「……ジェラ伯爵令嬢と関係を結ぶ必要はあったのですか」
「それは君の為だ。女性経験を積んでおいた方がいいだろう? 彼女は割り切った付き合いをしてくれると約束もしてくれた。君と結婚した後に、どんなデートをしようか、一緒に考えてくれた」
「…本当に、割り切った付き合いなのでしょうか」
ララベルは太ももの上で両手を握り合わせ、震える声で尋ねた。
「…シェルが何か言っていたのか?」
シェルというのはジェラ伯爵令嬢の名前のミシェルの愛称だった。
「ジェラ伯爵令嬢は、あなたと何回か関係を持ったそうですね。しかも、避妊もせずに」
「いや、彼女には避妊薬を飲ませてあるから大丈夫だ」
「飲んでおられません」
「…は?」
「彼女は、あなたが欲しくなったんです。だから、彼女はあなたと関係を持ち始めた時から、避妊薬を飲むふりをして、飲まなかったそうです」
ララベルの言葉に、ニールは顔を歪めた。
彼はまだ、ララベルを愛しているが、一番の関心はフィアンであり、今の彼の望みはフィアンの死だった。
比べられる人間がいなくなり、楽になるからだという。
何より、彼が死ねば、ララベルも彼を忘れるだろうと思った様だった。
(彼にフィアン兄様をそこまで憎ませたのは、私にも一因があるのね…。だけど…)
ララベルは小さく息を吐いた後、呟く。
「ニール様は嘘をついていたんですね…」
「何がですか?」
ジェラ伯爵令嬢に聞き返され、ララベルは、以前、ニールから聞いた話を彼女に伝える。
「私には、商売の女性としか関係を持っていないと…」
「最初はそうだったようです。でも、フィアン様への対抗意識が強くなってからは、特別な私だけは違いました」
ジェラ伯爵令嬢はララベルに向かって、勝ち誇った様な笑みを浮かべた。
ララベルは相手の挑発は気にせずに、自分の聞きたい事を聞く。
「ニール様はフィアン兄様との縁談を断った方に声をかけていたんですか?」
「はい。何人かはお断りされた様ですが、何人かとは、どこかへ出かけたりされた様です。体の関係については、ないと信じています」
ジェラ伯爵令嬢は、とにかく、ニールには自分しかいないと言いたい様だが、ララベルにはそんな事はどうでも良かった。
(どういう事なの? フィアン兄様は婚約者候補の人から断られてばかりで、今も婚約者はいない。ソフィーが言うには今の今まで、彼女もいないと言っていたわ…。ニール様がフィアン兄様をふった女性ばかりに声を掛けているというのは…、フィアン兄様への当てつけ? でも、伯爵令嬢にまで手を出すなんて…。しかも、複数回あるみたいだし)
「あなたのご両親はこの事を知っていらっしゃるんですの?」
「はい。知っています。実は…」
ジェラ伯爵令嬢がその後に話した内容を聞いたララベルは頭を抱えたのだった。
そして、次の日、ララベルは魔石を使って、メフェナム邸にやって来た。
ニールは今までとは違い、彼女を屋敷のポーチで出迎えた。
「ララベル。やっと俺の気持ちを理解してくれたのか?」
「理解はできていませんが、お話したいと思っておりますの。今まで、私達は話し合いが足りていなかったと思いますので」
メイドに応接室に案内されている途中で、ニールが話しかけてきたので、ララベルは苦笑して答えた。
今回は侍女を1人連れてきていて、騎士と侍女には部屋の前で待っていてもらい、何か大きな物音がしたら、すぐに入ってきてもらう様にお願いした。
メイドがお茶をいれて去っていった後、当たり前の様に隣に座っているニールに、ララベルは早速、本題を切り出す。
「ニール様。昨日ですが、私の元にジェラ伯爵令嬢がいらっしゃいました」
「……なんだって?」
先程までの笑顔が消え、ララベルに聞き返したニールは眉根を寄せて続ける。
「彼女に何か言われたのか?」
「あなたとの関係をお聞きしました。商売の女性としか関係を持たれていないと仰っていましたが、あれは嘘だったのですね?」
「そ、それは…、彼女とは割り切った関係で」
「彼女はそう思っておられませんわよ?」
ララベルは一度、目を伏せた後、ニールに顔を向けて続ける。
「あなたの考えていらっしゃる事がわかりません。あなたはどうして、浮気を続けているんです? 私がフィアン兄様を忘れられない事への抗議ですか?」
(その場合は、私に非があるわ。ここまで追い詰めてしまったのだから…)
「…違う」
「では、何なのですか? 私を悲しませたい? 怒らせたい? 何なのですか? お願いです、ニール様。あなたは、どうして浮気をされるんですか? その理由を教えていただけませんか?」
「話を聞いても、俺を嫌ったりしないなら…」
「承諾しませんと、教えていただけないのですわよね?」
「…ああ」
「わかりました。嫌わない、という事だけはお約束します」
ララベルが頷くと、ニールはホッとした様に口を開く。
「最初は…、君に嫉妬してほしかった」
「…最初は?」
ララベルが聞き返すと、ニールはぽつりぽつりと話し始めた。
「ああ。だけど、だんだん、フィアン様が憎らしくなっていく気持ちの方が強くなった。君が思いを寄せているだけじゃない。友人も多く、賢くて、滅多な事じゃ怒らない。俺が嫌味を浴びせても、素直に謝るだけで、自分が悪いと思った場合は、素直に非を認めるんだ」
(将来、公爵になるという事で、フィアン兄様は感情のコントロールを、ミーデンバーグ公爵に幼い頃から教えられているから、そのせいなのよね…。ソフィーが言っていたけれど、学園時代は、朝は鍛錬、夜は学園の授業の予習など、他人にわからないとことで努力をしていたというし…。でも、ニール様には、努力をしていないのに、何でも出来る様に見えてしまったのね)
「でも、非を認めて詫びるのは当たり前の事ではないのですか?」
「それはそうかもしれないけど、何か腹が立つじゃないか。少しは表情を変えろと思ったんだ!」
「…ニール様、結局、あなたが浮気していた理由は、フィアン兄様への嫉妬なのですか?」
「似てるけど、違う」
「…?」
ララベルが無言で答えを促すと、ニールはララベルに笑顔で言う。
「フィアン様は、誰とも付き合った事がないんだ。女を知らない。だから、俺が先に女を知った。フィアン様は女性と付き合った事もない。俺には君という婚約者はいるけれど、付き合った事はなかった。だから、フィアン様を断った女性と付き合う事にしたんだ。彼にはなびかなかった女性を俺のものにする。俺は、フィアン様に勝ったんだ!」
ニールの浮気の理由は、ただ、フィアンよりも自分が勝っているものを見つけたいだけだった。
「……ジェラ伯爵令嬢と関係を結ぶ必要はあったのですか」
「それは君の為だ。女性経験を積んでおいた方がいいだろう? 彼女は割り切った付き合いをしてくれると約束もしてくれた。君と結婚した後に、どんなデートをしようか、一緒に考えてくれた」
「…本当に、割り切った付き合いなのでしょうか」
ララベルは太ももの上で両手を握り合わせ、震える声で尋ねた。
「…シェルが何か言っていたのか?」
シェルというのはジェラ伯爵令嬢の名前のミシェルの愛称だった。
「ジェラ伯爵令嬢は、あなたと何回か関係を持ったそうですね。しかも、避妊もせずに」
「いや、彼女には避妊薬を飲ませてあるから大丈夫だ」
「飲んでおられません」
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