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17 欲張りすぎましたわね
休み明けの昼休み。来るだろうと思っていたら案の定、私の所にラブがやって来た。
「べリアーナ様、先日は本当に申し訳ございませんでした。そのことを根に持ってかパーティーに来ていただけなかったのは残念です」
根に持ってるのはあなたもでしょうよ。ツッコミを入れたくなったが我慢する。
「お祝いのプレゼントを贈らせていただいたんですけれど、ご迷惑だったかしら」
「え? プレゼント?」
ラブは驚いた顔をして目を瞬かせた。出席はしなかったが、祝いの品を贈るべきだろうと思って手配してもらっている。届いていないはずがない。メイドにプレゼントを開けさせて、誰からもらったのかは確認していないのかもね。
ラブは少しの沈黙のあと、微笑んで答える。
「ごめんなさい。ラブは人気があるので、プレゼントをたくさんもらったからどれだかわからなくなってしまいました!」
「そうだったの。別に認識してもらっていなくてもかまわないわ」
社交辞令で贈ったものだし、別に大事に扱ってもらいたいとは思わない。没落した時に質屋に持っていってもらっても良いわね。
「お金に困るようになったら、そのプレゼントを売ってくださいね」
「は? それってどういうこと?」
「わからないのであれば、気にしなくてかまいませんよ。どうせいつかわかることですから」
「気になるじゃないですか!」
ラブが私の机を右手で激しく叩いた時、ディーク様が近づいてきた。
「何を騒がしくしてるのかな」
「ディーク様! 先日はありがとうございました!」
「感謝されるようなことはしていないよ」
「何を言ってらっしゃるんですか。パーティーに来てくださっただけでなく、ラブと婚約したいって思ってくださったんでしょう?」
ラブはぶりっこポーズをしてディーク様を見つめる。
「違うよ。君のお父上が君の婚約者になりたいなら金を出せって言ってきたんだ」
「か、金を出せだなんて……! そんな言い方するわけがないじゃないですか!」
ラブは周りに聞かれていないか確認するかのように首を左右に動かす。周囲の人間は聞いていないふりをしているが、確実に耳をそばだてていることがわかった。その証拠に今まで雑談を交わしていた人たちも口を閉ざしていた。
「ディーク様、ラブはディーク様と結婚したいんです!」
ラブがディーク様に近づいて囁いた時、教室の扉が勢いよく開いた。目を向けると、そこにいたのは他クラスの男子生徒たちだった。
一人がラブを指さして叫ぶ。
「どういうことなんですか! あなたは僕のことが好きだったんじゃないんですか!?」
「何を言っているんだ! ラブ嬢と婚約するのは僕だ! 彼女と婚約するためにいくら払ったと思っているんだよ!」
「金を払ったのは僕も同じだ! 男爵に何度も現金を手渡している!」
二人の男子生徒が掴み合って喧嘩をしている様子を見て、ラブはうっとりするような表情を見せる。
「私を奪い合う男子を見るの夢だったんですよね。ああ、モテるって本当に辛いわ!」
「クブスさん、ちょっと聞いてもいいかしら」
「……なんでしょうか」
夢見る少女になっているラブを、現実に戻してやることにする。
「あなたのお父様、あちらの男性二人からお金を巻き上げているようだけれど、そんなことがバレて大丈夫なの?」
「えっ」
ラブの笑みは一瞬にして消え失せ、慌てて男子生徒たちに向かって叫ぶ。
「ちょっと、やめて! こんなところで喧嘩しないでください!」
「ラブ嬢! あなたが好きなのは僕ですよね!」
「いや、僕だろう?」
「俺に決まっている」
参戦したのはエイク辺境伯令息だった。
「ラブ、君が好きなのは俺だよな?」
「あ……えっと」
頷くべきなのだろうけど、ディーク様の前では言いにくいのか、ラブは今にも泣き出しそうな顔になった。
「クブスさん、欲張りすぎましたわね」
微笑んで話しかけると、ラブは前側の扉の前で立っている男たちを置いて、後ろ側の扉から教室を出ていった。
「べリアーナ様、先日は本当に申し訳ございませんでした。そのことを根に持ってかパーティーに来ていただけなかったのは残念です」
根に持ってるのはあなたもでしょうよ。ツッコミを入れたくなったが我慢する。
「お祝いのプレゼントを贈らせていただいたんですけれど、ご迷惑だったかしら」
「え? プレゼント?」
ラブは驚いた顔をして目を瞬かせた。出席はしなかったが、祝いの品を贈るべきだろうと思って手配してもらっている。届いていないはずがない。メイドにプレゼントを開けさせて、誰からもらったのかは確認していないのかもね。
ラブは少しの沈黙のあと、微笑んで答える。
「ごめんなさい。ラブは人気があるので、プレゼントをたくさんもらったからどれだかわからなくなってしまいました!」
「そうだったの。別に認識してもらっていなくてもかまわないわ」
社交辞令で贈ったものだし、別に大事に扱ってもらいたいとは思わない。没落した時に質屋に持っていってもらっても良いわね。
「お金に困るようになったら、そのプレゼントを売ってくださいね」
「は? それってどういうこと?」
「わからないのであれば、気にしなくてかまいませんよ。どうせいつかわかることですから」
「気になるじゃないですか!」
ラブが私の机を右手で激しく叩いた時、ディーク様が近づいてきた。
「何を騒がしくしてるのかな」
「ディーク様! 先日はありがとうございました!」
「感謝されるようなことはしていないよ」
「何を言ってらっしゃるんですか。パーティーに来てくださっただけでなく、ラブと婚約したいって思ってくださったんでしょう?」
ラブはぶりっこポーズをしてディーク様を見つめる。
「違うよ。君のお父上が君の婚約者になりたいなら金を出せって言ってきたんだ」
「か、金を出せだなんて……! そんな言い方するわけがないじゃないですか!」
ラブは周りに聞かれていないか確認するかのように首を左右に動かす。周囲の人間は聞いていないふりをしているが、確実に耳をそばだてていることがわかった。その証拠に今まで雑談を交わしていた人たちも口を閉ざしていた。
「ディーク様、ラブはディーク様と結婚したいんです!」
ラブがディーク様に近づいて囁いた時、教室の扉が勢いよく開いた。目を向けると、そこにいたのは他クラスの男子生徒たちだった。
一人がラブを指さして叫ぶ。
「どういうことなんですか! あなたは僕のことが好きだったんじゃないんですか!?」
「何を言っているんだ! ラブ嬢と婚約するのは僕だ! 彼女と婚約するためにいくら払ったと思っているんだよ!」
「金を払ったのは僕も同じだ! 男爵に何度も現金を手渡している!」
二人の男子生徒が掴み合って喧嘩をしている様子を見て、ラブはうっとりするような表情を見せる。
「私を奪い合う男子を見るの夢だったんですよね。ああ、モテるって本当に辛いわ!」
「クブスさん、ちょっと聞いてもいいかしら」
「……なんでしょうか」
夢見る少女になっているラブを、現実に戻してやることにする。
「あなたのお父様、あちらの男性二人からお金を巻き上げているようだけれど、そんなことがバレて大丈夫なの?」
「えっ」
ラブの笑みは一瞬にして消え失せ、慌てて男子生徒たちに向かって叫ぶ。
「ちょっと、やめて! こんなところで喧嘩しないでください!」
「ラブ嬢! あなたが好きなのは僕ですよね!」
「いや、僕だろう?」
「俺に決まっている」
参戦したのはエイク辺境伯令息だった。
「ラブ、君が好きなのは俺だよな?」
「あ……えっと」
頷くべきなのだろうけど、ディーク様の前では言いにくいのか、ラブは今にも泣き出しそうな顔になった。
「クブスさん、欲張りすぎましたわね」
微笑んで話しかけると、ラブは前側の扉の前で立っている男たちを置いて、後ろ側の扉から教室を出ていった。
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