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20 教えてくださらないのですよ
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「うっ!」
うめき声のようなものが聞こえて目を覚ますと、私の顔のすぐ近くに、人型の旦那様のお顔がありました。
大変です。
近くで私の顔を見たせいで、気分が悪くなられたのかもしれません。
「申し訳ございません。旦那様、お気分が優れませんか? すぐにお医者様を呼びますね」
「だ、大丈夫だ…。それより、かなり眠っていたのか…?」
「そうですね。旦那様が人間の姿に戻っておられますし、窓の外も暗くなってきています」
カーテンを開けっ放しにしていたので、外の様子がすぐにわかり、部屋の中も薄暗いので、部屋の明かりをつけました。
「いっぱいお昼寝しましたから、今日は夜は中々眠れなさそうです」
寝間着のまま、ぐーんと腕を伸ばすと、ベッドに座っていた旦那様がなぜか、視線をそらされました。
「どうかされましたか?」
「いや」
なぜか旦那様が視線をそらしたままで、私と目を合わそうとしてくれません。
「やっぱり体調が悪いのですね…。それとも、何かしてしまいましたでしょうか?」
「ち、違う! 君のその、寝間着の胸元が」
「ああ! 申し訳ございません!」
私のネグリジェの胸元は大きく開いているので、それが気になられた様です。
一応、胸がない訳ではないので、気にしないといけない事を忘れておりました。
「申し訳ございません、旦那様。私ったら、恥じらいを忘れておりました」
「いや。一応、俺達は夫婦だからな。別に、俺と二人なら、その格好でいてもおかしくはないんだが…」
「えーっと、どうしましょう。でも、旦那様は、見たくないわけですよね? 何か羽織るものを…。と、その前にジャスミンを」
「呼ばなくてもいい! 見たくないわけでもないし…」
「ですが、旦那様はこちらを見られない様ですし、会話するには、この格好をどうにかしなければいけないかと」
「そのままでいいから。…おいで」
ベッドの上に座っていた旦那様が、先程まで私が寝ていたスペースに手を置いて言いました。
「なんだか、恥ずかしいですね」
「意識してくれているのか?」
「それはそうでしょう。2人きりなだけでもドキドキしますのに、ベッドの上に一緒に座るとなりますと…」
「何もしない。というより、出来ないんだが…」
なぜか旦那様が肩を落として言いました。
「触ったら、また犬になってしまいますものね」
そう答えてから、ふと考えます。
女性に触っても、犬にならなくなったら、旦那様は私に触れる気なのでしょうか?
そういう事に興味はなさそうな気がするのですが…。
跡継ぎ問題もどうにかすると言われていましたし、旦那様が私に対して、そういう事はされないという事でしょうから、誰かを養子にするつもりなのですよね?
という事は、先程の発言の私に何も出来ない、というのは、どういう事なのでしょうか?
「どうした、エレノア」
「あ、いえ。何でもないです」
ベッドの上に寝転び、旦那様に胸元が見えない様にシーツで隠すと、旦那様は起こしていた身体をまた横にして、私と視線を合わせました。
人間の姿をしている旦那様とこんな近くで視線を合わせるのは初めてなので、少しドキドキします。
緊張してしまい、何も言えずにいると、旦那様が話しかけてこられます。
「君の事を聞かせてほしいんだが」
「何を知りたいのですか?」
「その、好きな食べ物だとか、基本的なものだ」
旦那様は私から視線をそらさずに言うので、その視線を受止めて答えます。
「そうですね。甘いものが好きです。辛いものや苦いものは苦手です。旦那様はどうなのですか?」
「特に好き嫌いはない」
「それは良い事ですね」
それからは、旦那様と他愛もない話を寝転んだまましておりましたが、ジャスミンが遠慮しながら、夕食の準備が出来た事を知らせてくれたので、起き上がって夕食をとる事にしたのでした。
そして、次の日からは、旦那様は私にその日の予定を聞いてくださる様になり、三度の食事も一緒にとってくださる様になりました。
一緒にいる事が多くなったのは、決して悪い事ではないのですが、旦那様がなぜか、すぐに犬化してしまう様になりました。
私と二人だけの時に犬化されているので良いのですが、ここまで頻繁ですと、他の人に怪しまれそうな気がします。
ですので、旦那様がお部屋に戻られてから、ジャスミンに相談する事にしてみました。
「ジャスミン、どうして旦那様は犬化される事が増えてしまったのでしょうか…」
「旦那様に直接、お聞きしてみては? 旦那様の方は理由はわかっていらっしゃると思いますよ」
「そうなのですが、なぜか教えてくださらないのですよ」
「では、ヒントを差し上げますね」
ジャスミンは小さく息を吐くと続けます。
「旦那様は自分から女性に触れたら犬になってしまわれるのですよね?」
「そうみたいです」
「という事は、旦那様は奥様と二人きりの時に、奥様に触れられたから、犬になってしまわれたわけです」
「それは理解できますが…」
「それが理解できるのでしたら、もう答えは出ているかと思うのですが…」
ジャスミンがなぜか呆れたような目で私を見てきます。
自分でも、人の感情に対して察する力が鈍いと実感しています。
ですが、こういう事って、中々直せるものではないのです!
ただ、今回に限っては感情というよりかは、理由を考えた方が良さそうです。
となると…?
考えてから、ふと気付く事がありました。
もしかして…。
「旦那様は私に触れてしまったから犬になってしまっているんですか?」
「どのようなシチュエーションかはわかりませんが、そうではないかと思われます」
「そ…、それは…」
思い返してみますと、旦那様が面白い話をしてくださって、私が笑った後に、旦那様は私の方に手を伸ばされている様な気がします。
まさか、私の笑顔が旦那様の犬化を加速させています?
笑わないほうが良いんでしょうか?
それとも、いや、そんな訳ないですよね…。
でも、犬の時は触れてくださっている気がします。
「ジャスミン、もしかして旦那様は、私とスキンシップを取ろうとしてくださっているのでしょうか…」
「間違ってはいないと思いますが、前にも申しました通り、旦那様とお話してくださいませ」
「そうですよね。わかりました! ちゃんと話をしてみます!」
あと2日ほどでまた、屋敷に戻らなければいけません。
いつまでも、新婚旅行をしていられませんしね。
なら、この2日の内に、旦那様と、この問題について、しっかり話し合わねばなりません!
うめき声のようなものが聞こえて目を覚ますと、私の顔のすぐ近くに、人型の旦那様のお顔がありました。
大変です。
近くで私の顔を見たせいで、気分が悪くなられたのかもしれません。
「申し訳ございません。旦那様、お気分が優れませんか? すぐにお医者様を呼びますね」
「だ、大丈夫だ…。それより、かなり眠っていたのか…?」
「そうですね。旦那様が人間の姿に戻っておられますし、窓の外も暗くなってきています」
カーテンを開けっ放しにしていたので、外の様子がすぐにわかり、部屋の中も薄暗いので、部屋の明かりをつけました。
「いっぱいお昼寝しましたから、今日は夜は中々眠れなさそうです」
寝間着のまま、ぐーんと腕を伸ばすと、ベッドに座っていた旦那様がなぜか、視線をそらされました。
「どうかされましたか?」
「いや」
なぜか旦那様が視線をそらしたままで、私と目を合わそうとしてくれません。
「やっぱり体調が悪いのですね…。それとも、何かしてしまいましたでしょうか?」
「ち、違う! 君のその、寝間着の胸元が」
「ああ! 申し訳ございません!」
私のネグリジェの胸元は大きく開いているので、それが気になられた様です。
一応、胸がない訳ではないので、気にしないといけない事を忘れておりました。
「申し訳ございません、旦那様。私ったら、恥じらいを忘れておりました」
「いや。一応、俺達は夫婦だからな。別に、俺と二人なら、その格好でいてもおかしくはないんだが…」
「えーっと、どうしましょう。でも、旦那様は、見たくないわけですよね? 何か羽織るものを…。と、その前にジャスミンを」
「呼ばなくてもいい! 見たくないわけでもないし…」
「ですが、旦那様はこちらを見られない様ですし、会話するには、この格好をどうにかしなければいけないかと」
「そのままでいいから。…おいで」
ベッドの上に座っていた旦那様が、先程まで私が寝ていたスペースに手を置いて言いました。
「なんだか、恥ずかしいですね」
「意識してくれているのか?」
「それはそうでしょう。2人きりなだけでもドキドキしますのに、ベッドの上に一緒に座るとなりますと…」
「何もしない。というより、出来ないんだが…」
なぜか旦那様が肩を落として言いました。
「触ったら、また犬になってしまいますものね」
そう答えてから、ふと考えます。
女性に触っても、犬にならなくなったら、旦那様は私に触れる気なのでしょうか?
そういう事に興味はなさそうな気がするのですが…。
跡継ぎ問題もどうにかすると言われていましたし、旦那様が私に対して、そういう事はされないという事でしょうから、誰かを養子にするつもりなのですよね?
という事は、先程の発言の私に何も出来ない、というのは、どういう事なのでしょうか?
「どうした、エレノア」
「あ、いえ。何でもないです」
ベッドの上に寝転び、旦那様に胸元が見えない様にシーツで隠すと、旦那様は起こしていた身体をまた横にして、私と視線を合わせました。
人間の姿をしている旦那様とこんな近くで視線を合わせるのは初めてなので、少しドキドキします。
緊張してしまい、何も言えずにいると、旦那様が話しかけてこられます。
「君の事を聞かせてほしいんだが」
「何を知りたいのですか?」
「その、好きな食べ物だとか、基本的なものだ」
旦那様は私から視線をそらさずに言うので、その視線を受止めて答えます。
「そうですね。甘いものが好きです。辛いものや苦いものは苦手です。旦那様はどうなのですか?」
「特に好き嫌いはない」
「それは良い事ですね」
それからは、旦那様と他愛もない話を寝転んだまましておりましたが、ジャスミンが遠慮しながら、夕食の準備が出来た事を知らせてくれたので、起き上がって夕食をとる事にしたのでした。
そして、次の日からは、旦那様は私にその日の予定を聞いてくださる様になり、三度の食事も一緒にとってくださる様になりました。
一緒にいる事が多くなったのは、決して悪い事ではないのですが、旦那様がなぜか、すぐに犬化してしまう様になりました。
私と二人だけの時に犬化されているので良いのですが、ここまで頻繁ですと、他の人に怪しまれそうな気がします。
ですので、旦那様がお部屋に戻られてから、ジャスミンに相談する事にしてみました。
「ジャスミン、どうして旦那様は犬化される事が増えてしまったのでしょうか…」
「旦那様に直接、お聞きしてみては? 旦那様の方は理由はわかっていらっしゃると思いますよ」
「そうなのですが、なぜか教えてくださらないのですよ」
「では、ヒントを差し上げますね」
ジャスミンは小さく息を吐くと続けます。
「旦那様は自分から女性に触れたら犬になってしまわれるのですよね?」
「そうみたいです」
「という事は、旦那様は奥様と二人きりの時に、奥様に触れられたから、犬になってしまわれたわけです」
「それは理解できますが…」
「それが理解できるのでしたら、もう答えは出ているかと思うのですが…」
ジャスミンがなぜか呆れたような目で私を見てきます。
自分でも、人の感情に対して察する力が鈍いと実感しています。
ですが、こういう事って、中々直せるものではないのです!
ただ、今回に限っては感情というよりかは、理由を考えた方が良さそうです。
となると…?
考えてから、ふと気付く事がありました。
もしかして…。
「旦那様は私に触れてしまったから犬になってしまっているんですか?」
「どのようなシチュエーションかはわかりませんが、そうではないかと思われます」
「そ…、それは…」
思い返してみますと、旦那様が面白い話をしてくださって、私が笑った後に、旦那様は私の方に手を伸ばされている様な気がします。
まさか、私の笑顔が旦那様の犬化を加速させています?
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それとも、いや、そんな訳ないですよね…。
でも、犬の時は触れてくださっている気がします。
「ジャスミン、もしかして旦那様は、私とスキンシップを取ろうとしてくださっているのでしょうか…」
「間違ってはいないと思いますが、前にも申しました通り、旦那様とお話してくださいませ」
「そうですよね。わかりました! ちゃんと話をしてみます!」
あと2日ほどでまた、屋敷に戻らなければいけません。
いつまでも、新婚旅行をしていられませんしね。
なら、この2日の内に、旦那様と、この問題について、しっかり話し合わねばなりません!
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