笑い方を忘れたわたしが笑えるようになるまで

風見ゆうみ

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18  助けを求める令嬢 ③

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 お姉さまの墓をあばくだなんて、何を馬鹿なことを考えているのよ。そんなことを言われたら、余計にエゲナ王国に帰りたくなくなるわ。

「あ、あの、ラファエル様、婚約を解消することになってしまったことについては本当に申し訳なく思っております。ですが、わたくしが決めたことではないのです」

 ラファの対応が予想外だったのか、ベルベッタ様は焦った顔で弁明を始めた。でも、ラファがそんなことでほだされるはずがない。

「そうか。だけど、君も納得したことなんだろう? なら、今更、リーンをエゲナ王国に戻して君をここに置くなんて、僕がそんな馬鹿なことをすると思う?」
「そ、それは、ラファエル様はとてもお優しい方ですから、わたくしを助けてくださるかと!」
「優しいって……、君は僕のことを知らないだろう? それに、別に君に優しいと思われなくてもいいよ。だから、君を妻にするなんてお断りする。長旅で疲れているだろうし、少しゆっくりするのはかまわないけど、できるだけ早くこの国から出てくれないかな」
「そ、そんな……! それは困りますわ!」
「そんなの知らないよ。冷たい言い方をするけど、テッジ殿下にどうにかしてもらったらいいんじゃないかな」
 
 ラファは立ち上がると、ベルベッタ様を促す。

「用事がそれだけなら帰ってくれるかな」
「で、ですが、このままでは、墓が危険です! リーン様が本当の姉のように慕っていた方のお墓があばかれてしまうかもしれないのですよ!」

 どうだと言わんばかりの顔をして、ベルベッタ様が叫んだ。ラファの様子を窺うと、わたしを見つめ返して微笑する。

「そんなことはさせないって言ってるよ」
「ありがとうございます。みんなもありがとう」

 相変わらず、わたしの目には精霊が見えない。でも、側にいてくれるということだけは、ラファの言葉がなくても感じられる。
 でも、ベルベッタ様にはそれがわからないから、訝しげな表情で尋ねる。

「一体、何を言っているんですか?」
「君に理解してもらう必要はないよ。とにかく、ここから出てくれるかな。泊まる所には案内させるよ」
「ま、待ってください! 本当に良いんですか!?」
「……何をそんなに食い下がるんだ? 君はぼくのことが好きじゃないんだろう? 精霊なんていないと思っていて、話ができるという僕をおかしいと思っていることは知ってるよ」

 ラファが普段は見せない冷たい表情で、ベルベッタ様を見つめた。ベルベッタ様はわたしがラファに告げ口したと思っているのか、わたしを睨みつけてる。

 別にベルベッタ様に睨まれても怖くないし、どちらかというと苛立つだけだ。
 
 これ見よがしにため息を吐いて口を開く。

「言っておきますけど、わたしはラファに何も言っていません。それよりも、ラファの言葉を否定はしないんですね」
「そ、それは……! そういうわけではありませんわ! あの、ラファエル様、誤解しないでください!」

 ベルベッタ様はソファから立ち上がり、ラファの腕を掴もうとした。でも、突然、どこからか丸いシルバートレイが飛んできて、ベルベッタ様の手の甲に当たった。

「きゃっ!」

 ベルベッタ様は悲鳴を上げて、伸ばそうとした手を引っ込めた。ラファは床に落ちたシルバートレイを拾い上げて、ため息を吐く。

「最近、これがお気に入りの遊び道具みたいなんだよ」

 そう言われてみれば、庭でシルバートレイがフリスビーのように飛んでいるのを見たことがある。精霊が何柱かで持ち上げて投げているのね。

「怪我はない?」

 ラファがベルベッタ様に尋ねると、彼女は涙目で訴える。

「痛いです! このまま帰るなんてできません!」
「ベルベッタ様、後ほど、あなたが滞在する宿屋に水をお届けしますので、それまで我慢してくださいませ」

 ラファとベルベッタ様の間に入り、そう言ったあと、見張りをしていた兵士に、ベルベッタ様を追い出すように指示をする。

「彼女を高級宿に連れて行って上げて」
「お、お願いです! 助けてください! わたくしには帰る場所はないんです! せめて、ここに置いてください! あなたの妻になりたいんです!」

 ベルベッタ様は泣きながらラファに訴えて抵抗した。でも、兵士の力に勝てるはずもなく、部屋から連れ出されたのだった。

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