笑い方を忘れたわたしが笑えるようになるまで

風見ゆうみ

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17  助けを求める令嬢 ②  ベルベッタ視点

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 初めてやって来たクリエル王国の王城はエゲナ王国の王城と比べて一回り以上小さかった。

 貧乏だから、豪華な城を建てることができないんだわ。わたくしはここで、どんなひもじい生活を送ることになるのかしら。一瞬、憂鬱な気持ちになったけれど、命の危険がない分、まだマシよね。贅沢は言えないわ。

 約束をしていなかったから、応接室でかなり待たされることになった。

 その間、手持ち無沙汰なので、部屋の中を観察してみる。
 質素ではあるけれど、調度品は質の良いものに思える。ソファの座り心地も良いし、快適だと言っても良い。

 茶器なども安っぽいものかと思ったら、高価にもかかわらず、貴族に大人気で中々手に入らないという職人の焼印がしてある。
 この城は外装よりも内面にこだわっているということがわかった。淹れてくれた紅茶も良い茶葉なのか、良い香りがするし味も上品で合格だわ。

 エゲナ王国を発つ前に、リーンとラファエル様が結婚したと聞いた。リーンで満足するような男だもの。きっと、実物のわたくしを見たら、リーンを捨ててわたくしと結婚したいと思うはずだわ。精霊がいるだなんて頭のおかしいことを言う男性と結婚なんて嫌だと思っていたけれど、しょうがないから結婚してあげましょう。

 これからの未来に希望が出てきたので、明るい気持ちであれこれと考えていると、リーンとラファエル様が部屋の中に入ってきた。

 リーンは相変わらず無愛想な顔をしている。でも、見違えるほどに綺麗になっているし、着ているドレスも高価そうだ。黒色のドレスにピンクや黄色の小花があしらわれたドレスは、わたくし好みなので、このドレスを作ったデザイナーにわたくしのドレスも仕立ててもらおうと決めた。

 ラファエル様はテッジ様よりも劣りはするものの、整った顔立ちだ。数年前に会った時よりも凛々しさがあり、外見は合格点ね。口を開かないでいてくれれば、わたくしの隣に立つことが許される容姿だわ。

 形式的な挨拶を交わしたあと、わたくしからラファエル様に話しかける。

「ラファエル様、突然のご訪問をお許しくださいませ」
「そう思うんなら、来ないでほしかったな」

 向かい側に座ったラファエル様が苦笑して言った。

 わたくしとの婚約が無しになったことを怒っているのね。でも、それはわたくしのせいではないわ。

「今回の件は誠に申し訳ございませんでした。わたくしは本当は婚約を解消するつもりなどなかったのです」
「ベルベッタ様はテッジ殿下が好きなので、ラファとの婚約を解消したかったのではないのですか」

 顔を両手で覆って、泣いているふりをすると、リーンが尋ねてきた。

 わたくしがラファエル様のことを悪く言っていたことを口に出さなかったことは褒めてあげるわ。だけど、本当に賢い人間なら、何も言わずに黙っているべきなのよ。

 でも、余計なことを言ってくれたおかげでテッジ殿下からの伝言を口にすることに躊躇していた気持ちが、一切なくなった。

 わたくしは、顔を上げてリーンに話しかける。

「リーン様、テッジ殿下はあなたに国に帰って来るようにとのことです」
「わたしはラファの妻です。絶対に帰りませんとお伝えください」

 厳しい表情でリーンは答えると、立ち上がって扉を手で示す。

「お話は以上ですわよね? お帰りください」
「ち、違います! あなたが帰らなければ、ミランとかいう女性の墓をあばくと言っておられましたわ!」

 無表情だったリーンが明らかに不快そうに眉根を寄せた。

「……そんなことをしたら罰が当たりますよ」
「わたくしが言ったわけではありませんわ。それが嫌なら、わたくしがリーン様の代わりにラファエル様の妻になりますので、あなたはエゲナ王国に帰るのです!」
「……君が僕の妻? 本気で言ってるの?」

 わたくしを見つめるラファエル様の表情からは嫌悪感しか感じ取れなかった。


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