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22 国王からの提案 ①
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国王陛下には何度もお会いしたことはあるが、いつも謁見の間で、こちらが見上げている状況だった。
普段より近いだけでなく、真正面から見てみると、ラックス殿下とイライアス殿下が陛下譲りの顔立ちであることが、よくわかった。
「父上! どうしてここに?」
尋ねたものの、リット殿下は理由がわかったのか舌打ちして呟く。
「兄上か」
ラックス殿下が陛下に連絡してくださったのね。
呟きには何も反応せず、陛下は冷たい口調で告げる。
「リット、婚約者の件でお前が好き勝手する権利などないぞ」
「……っ」
リット殿下は眉根を寄せて口を開いたが、何も言わずに閉じた。
何を言っても意見が覆らないことはわかっているのでしょう。
「それから、お前とソレイユの婚約など絶対にありえないことだ。お前は王族としての自覚はないのか? 彼女は実の姉の夫を寝取ろうとしたんだ。そんな人間をわしも含め、他の貴族が王子妃として認めるわけがない」
国王陛下の一人称は『わし』だ。意味があってのことらしいと聞いたことがあるが、それを知る者はいない。
「ソラリアの結婚を無効にするのなら問題ないでしょう!」
「無効にしたとしても、どうせ離婚したと噂するのだろう? それに、ソレイユが姉の婚約者と浮気したことに変わりはない」
言い返す言葉が見つからなかったのか、リット殿下はただ、悔しそうに国王陛下を見つめただけだった。
国王陛下がおっしゃるように、多くの貴族は私の前では結婚していたことについて何も言うことはないと思う。
だが、陰では私とロガンは離婚したと話すでしょうし、私が再婚することは難しいでしょう。
このままでは、レイハート公爵家は、父の代で終わってしまう。
養子をもらって継いでもらうという手はあるが、今までそんな事例がなかったため、許可してもらえるかはわからない。
今、考えるべきではないことを考えていると、まるで、私の頭の中を読んだかのように、リット殿下が叫ぶ。
「爵位を女は継ぐことができないんです! ということは、レイハート公爵家は終わりだ!」
「まだ、終わったと決まったわけではない。ソラリアが誰かと結婚し、子供が生まれれば別だ。それに、親戚から養子をもらうという手もある」
「ソラリアが誰かと結婚? 彼女を娶る男なんていないでしょう!? いくら公爵になれるからといって、ソラリアの息子になる人間などいませんよ!」
リット殿下は鼻で笑いながら、私を見つめた。
「ベェェー!」
リット殿下の所へ行こうとしているのか、ベェは必死に四本の足を動かしている。
……そういえば、国王陛下の使い魔はどこにいるのかしら。きっと動物の形をしているのよね。
「ソラリアの結婚相手について、どうかと考えている人物がいる」
国王陛下の発言で、そんなことを考える余裕など吹き飛んだ。
「なんですって!?」
私が反応するよりも先に、リット殿下が驚きの声を上げた。そんな彼は無視して、国王陛下は私に話しかける。
「ソラリア、お前に話したいことがある。こんな所で話せる内容ではないので、メイドに案内させるから、場所を移動しろ」
「承知いたしました!」
緊張と困惑で声が裏返ってしまったが、陛下は無表情でうなずいただけだった。
貴族の多くは、リット殿下と同じような考え方をしている。
だから、私と結婚してくれる人がいるなんて信じられない。国王陛下は誰を私の結婚相手にしようとしているのかしら。
「イライアス、お前もソラリアに話があるのだろう。一緒に来るんだ」
「承知いたしました」
イライアス殿下の返事を聞いた国王陛下は、もと来た道を戻っていく。
イライアス殿下と私が立ち上がると、メイドが近寄ってきて「ご案内いたします」と、言って先導し始めた。
リット殿下とすれ違う際、彼は私とイライアス殿下を睨んでいたが、言葉を発することはなかった。
普段より近いだけでなく、真正面から見てみると、ラックス殿下とイライアス殿下が陛下譲りの顔立ちであることが、よくわかった。
「父上! どうしてここに?」
尋ねたものの、リット殿下は理由がわかったのか舌打ちして呟く。
「兄上か」
ラックス殿下が陛下に連絡してくださったのね。
呟きには何も反応せず、陛下は冷たい口調で告げる。
「リット、婚約者の件でお前が好き勝手する権利などないぞ」
「……っ」
リット殿下は眉根を寄せて口を開いたが、何も言わずに閉じた。
何を言っても意見が覆らないことはわかっているのでしょう。
「それから、お前とソレイユの婚約など絶対にありえないことだ。お前は王族としての自覚はないのか? 彼女は実の姉の夫を寝取ろうとしたんだ。そんな人間をわしも含め、他の貴族が王子妃として認めるわけがない」
国王陛下の一人称は『わし』だ。意味があってのことらしいと聞いたことがあるが、それを知る者はいない。
「ソラリアの結婚を無効にするのなら問題ないでしょう!」
「無効にしたとしても、どうせ離婚したと噂するのだろう? それに、ソレイユが姉の婚約者と浮気したことに変わりはない」
言い返す言葉が見つからなかったのか、リット殿下はただ、悔しそうに国王陛下を見つめただけだった。
国王陛下がおっしゃるように、多くの貴族は私の前では結婚していたことについて何も言うことはないと思う。
だが、陰では私とロガンは離婚したと話すでしょうし、私が再婚することは難しいでしょう。
このままでは、レイハート公爵家は、父の代で終わってしまう。
養子をもらって継いでもらうという手はあるが、今までそんな事例がなかったため、許可してもらえるかはわからない。
今、考えるべきではないことを考えていると、まるで、私の頭の中を読んだかのように、リット殿下が叫ぶ。
「爵位を女は継ぐことができないんです! ということは、レイハート公爵家は終わりだ!」
「まだ、終わったと決まったわけではない。ソラリアが誰かと結婚し、子供が生まれれば別だ。それに、親戚から養子をもらうという手もある」
「ソラリアが誰かと結婚? 彼女を娶る男なんていないでしょう!? いくら公爵になれるからといって、ソラリアの息子になる人間などいませんよ!」
リット殿下は鼻で笑いながら、私を見つめた。
「ベェェー!」
リット殿下の所へ行こうとしているのか、ベェは必死に四本の足を動かしている。
……そういえば、国王陛下の使い魔はどこにいるのかしら。きっと動物の形をしているのよね。
「ソラリアの結婚相手について、どうかと考えている人物がいる」
国王陛下の発言で、そんなことを考える余裕など吹き飛んだ。
「なんですって!?」
私が反応するよりも先に、リット殿下が驚きの声を上げた。そんな彼は無視して、国王陛下は私に話しかける。
「ソラリア、お前に話したいことがある。こんな所で話せる内容ではないので、メイドに案内させるから、場所を移動しろ」
「承知いたしました!」
緊張と困惑で声が裏返ってしまったが、陛下は無表情でうなずいただけだった。
貴族の多くは、リット殿下と同じような考え方をしている。
だから、私と結婚してくれる人がいるなんて信じられない。国王陛下は誰を私の結婚相手にしようとしているのかしら。
「イライアス、お前もソラリアに話があるのだろう。一緒に来るんだ」
「承知いたしました」
イライアス殿下の返事を聞いた国王陛下は、もと来た道を戻っていく。
イライアス殿下と私が立ち上がると、メイドが近寄ってきて「ご案内いたします」と、言って先導し始めた。
リット殿下とすれ違う際、彼は私とイライアス殿下を睨んでいたが、言葉を発することはなかった。
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