【完結】レイハート公爵夫人の時戻し

風見ゆうみ

文字の大きさ
24 / 62

23  国王からの提案 ②

しおりを挟む
 メイドに案内されたのは、国王陛下の自室だった。
 この部屋は防御魔法がかけられているらしく、どんな攻撃を受けてもダメージを負うことはないらしい。

 魔法使い狩りが行われる前にかけられた魔法だそうだが、いまだに効果は続いているそうだ。

 国王陛下の部屋に入ることなど、めったにあることではない。
 好奇心を抑えられず、失礼にならない程度に部屋の中を観察した。

 赤いカーペットが敷かれた室内は、三十人程が寝泊まりできそうな広さだ。
 右奥に暖炉があり、近くにはコの字型にソファが置かれている。

 一人掛けのソファに座った陛下は、私たちには自分の右手側にある二人掛けのソファに座るように指示をした。

 言われるがままに腰掛けると、メイドが手際よくお茶を淹れ、部屋から出ていく。

 静かになったところで、羽音が聞こえた気がして後ろを振り返った。
 背後には白い壁に沿って本棚が置かれており、その上に白と黒の大きな鳥が止まっていた。

「あれは……」
「使い魔のワシだ」

 紹介されたワシは、挨拶してくれているかのように片方の翼を広げた。

「種類はオオワシで、名前はワシなんだよ」
「間違えて呼んだ時にごまかせるだろう」

 イライアス殿下が苦笑して言うと、陛下は殿下を軽く睨んだあと、私に目を向ける。

「リットがすまなかった。あれは、シャルに似て魔法使いが嫌いなだけでなく、女性蔑視の傾向が強い」
「……王妃陛下も女性蔑視なのですか?」
「表向きにはそんな様子を見せないようにしているが、女性である自分を卑下している」

 王妃陛下とは挨拶を交わすくらいで、雑談をしたことはなかった。
 美しい容姿の持ち主で、いつも微笑んでいるイメージしかない。

「女性であるからと卑下する必要はないと、何年もかけて伝えてきたが、聞く耳を持たない」

 貴族の女性蔑視の傾向は酷いが、自分の娘を可愛がる父親は多い。
 たまに、娘を産んだ妻を責める男性もいるらしいので、王妃陛下の実父はそのタイプだったとか? 

「シャルは女性の権利を訴えるイライアスとラックスとは話が合わないと遠ざけ、女性を馬鹿にするリットばかり行動を共にしている」
「昔からそのようなことをおっしゃっていたわけではないのですか?」
「違う。イライアスを生んで二年後くらいからだ。なぜそんなことを言うようになったのか、問いただしても答えない」

 イライアス殿下を産んでからということは、父親という線はないということか。

「魔法使いを嫌っている件はどうなのでしょうか」
「女性の友人がいないシャルは、魔法使いについての話を、何度もお前の父としていたようだ」
「……どんな話をしていたのでしょうか」
「魔法使いをこの世から完全に消し去ること」
「私の父は魔法使いを憎んでいたのですね」
「そうだ」

 今のところ、使い魔のおかげで魔法使いが生まれても、気づかれないようになっている。そして、魔法使いだと気づかれた場合、お母様の手紙にあったように、魔法が使えなくなってしまう。
 だが、子孫は生きているから、新たに魔法使いが生まれる可能性がある。
 それが気に食わないといったところか。
  
 そこまで魔法使いを嫌う理由はなんなのか。

「ベェェー!」

 ベェの鳴き声と共に何かの気配を感じて上を向くと、ワシが私の頭上に飛んでいた。
 ワシは通常のオオワシよりは小さいが、ベェたちの二倍以上はある。
 ベェはワシを私に近づけたくないのか、短い足をバタバタさせて、ワシに攻撃しようとしていた。

 悲しいことに、ふわふわの毛のせいで足はほとんど見えないばかりか、ワシの体にも大して当たっていない。

 ワシはそんなベェを憐れむような目で見ているように見えた。

 こんなことを思うのも失礼かもしれないが、どうしてそんな人を王妃にしたのかしら。

「先代のレイハート公爵が亡くなった時に、爵位をソラリアに継がせるという話を出したが、高位貴族だけでなくシャルも反対した。シャルはソラリアが公爵代理になることも反対したくらいだ」
「そうだったのですか」

 そんなことになっていたなんて知らなかった。
 
「最近はマシになってきたけれど、父上の世代の人間は女性を蔑視したり、魔法使いを嫌ったりする傾向が特に酷い。女性が爵位を継げるように法案を出しても、会議に取り上げられる前に却下される」
「国王陛下が決めても同じなのでしょうか」

 イライアス殿下から陛下に目を動かすと、足を組んで答える。

「国王だからといって、何でも意見が通るわけではない。ソラリアの婚姻が無効になったのは、個人的な話だからだ」
「……そうでしたか。本当にありがとうございました」

 直接お礼を伝えられていなかったことに気づき、深々と頭を下げた。

「ソラリアには新しい結婚相手の目途はつきそうか」
「公爵の爵位を目当てに寄ってくるような人はいるかもしれませんが、しばらくしてから探してみようかと思っています」
「推薦したい人物がいる」
「……どのような方でしょう」

 国王陛下に言われたなら断れることは難しい。
 
 変な人ではありませんように!

 祈りながら陛下を見つめると、視線を私からイライアス殿下へと移した。

「イライアスはどうだ? イライアスならお前の味方をしてくれるだろう。他の公爵家に反対されてもわしが何とかする」
「「はい?」」

 イライアス殿下も初耳だったのか、私と同時に驚きの声を上げた。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄されたので北の港を発展させたら

ふわふわ
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。 公爵令嬢アリアベルは、王太子カルディオンから突然の婚約破棄を告げられる。 「真実の愛を見つけた」 そう言って王太子が選んだのは、涙を流す義妹ヴィオレッタだった。 王都から追い出され、すべてを失った―― はずだった。 アリアベルが向かったのは、王国の北にある小さな港町。 しかし彼女の手腕によって港は急速に発展し、やがて王国最大の交易港へと変わっていく。 一方その頃、王太子と義妹は王都で好き勝手に振る舞っていたが―― やがてすべてが崩れ始める。 王太子は国外追放。 義妹は社交界から追放され修道院送り。 そして気づいた頃には、北の港こそが王国の中心になっていた。 「私はもう誰のものでもありません」 これは、婚約破棄された令嬢が自分の人生を取り戻し、 王国の未来を変えていく物語。 そして―― 彼女の隣には、いつしか新しい王太子の姿があった。 婚約破棄から始まる、逆転ざまぁロマンス。✨

婚約破棄されたので頑張るのをやめました 〜昼寝と紅茶だけの公爵令嬢なのに、なぜか全部うまくいきます〜あ

鍛高譚
恋愛
王太子から婚約破棄された衝撃で階段から落ちた公爵令嬢シャル・ド・ネ・アルベール。 目覚めた彼女は、なんと前世の記憶——ブラック企業で働き詰めだったOL・佐伯ゆかりとしての人生を思い出してしまう。 無理して働いた末に過労死した前世の反省から、シャルは決意する。 「もう頑張らない。今度の人生は“好き”と“昼寝”だけで満たしますわ!」 貴族としての特権をフル活用し、ワイン造りやスイーツ作りなど“趣味”の延長でゆるゆる領地改革。 気づけば国王にも称賛され、周囲の評価はうなぎのぼり!? 一方、彼女を見下していた王太子と“真実の愛()”の令嬢は社交界で大炎上。 誰もざまぁされろなんて言ってないのに……勝手に転がり落ちていく元関係者たち。 本人はただ紅茶とスコーンを楽しんでいるだけなのに―― そんな“努力しない系”令嬢が、理想の白い結婚相手と出会い、 甘くてふわふわ、そしてちょっぴり痛快な自由ライフを満喫する ざまぁ(他力本願)×スローライフ×ちょっと恋愛な物語です♪

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

婚約破棄は了承済みですので、慰謝料だけ置いていってください

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢アナスタシア・オルステッドは、第三王子アレンの婚約者だった。 しかし、アレンは没落貴族の令嬢カリーナと密かに関係を持っていたことが発覚し、彼女を愛していると宣言。アナスタシアとの婚約破棄を告げるが── 「わかりました。でも、それには及びません。すでに婚約は破棄されております」 なんとアナスタシアは、事前に国王へ婚約破棄を申し出ており、すでに了承されていたのだ。 さらに、慰謝料もしっかりと請求済み。 「どうぞご自由に、カリーナ様とご婚約なさってください。でも、慰謝料のお支払いはお忘れなく」 驚愕するアレンを後にし、悠々と去るアナスタシア。 ところが数カ月後、生活に困窮したアレンが、再び彼女のもとへ婚約のやり直しを申し出る。 「呆れたお方ですね。そんな都合のいい話、お受けするわけがないでしょう?」 かつての婚約者の末路に興味もなく、アナスタシアは公爵家の跡取りとして堂々と日々を過ごす。 しかし、王国には彼女を取り巻く新たな陰謀の影が忍び寄っていた。 暗躍する謎の勢力、消える手紙、そして不審な襲撃──。 そんな中、王国軍の若きエリート将校ガブリエルと出会い、アナスタシアは自らの運命に立ち向かう決意を固める。 「私はもう、誰かに振り回されるつもりはありません。この王国の未来も、私自身の未来も、私の手で切り拓きます」 婚約破棄を経て、さらに強く、賢くなった公爵令嬢の痛快ざまぁストーリー! 自らの誇りを貫き、王国を揺るがす陰謀を暴く彼女の華麗なる活躍をお楽しみください。

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの

鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」 そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。 ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。 誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。 周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」 ――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。 そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、 家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。 だが、彼女の予言は本物だった―― 数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。 国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、 あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。 「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」 皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、 滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。 信じてもらえなかった過去。 それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。 そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。 ――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。

両親に溺愛されて育った妹の顛末

葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。 オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。 「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」 「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」 「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」 妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。

【完結済】王女に夢中な婚約者様、さようなら 〜自分を取り戻したあとの学園生活は幸せです! 〜

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
王立学園への入学をきっかけに、領地の屋敷から王都のタウンハウスへと引っ越した、ハートリー伯爵家の令嬢ロザリンド。婚約者ルパートとともに始まるはずの学園生活を楽しみにしていた。 けれど現実は、王女殿下のご機嫌を取るための、ルパートからの理不尽な命令の連続。 「かつらと黒縁眼鏡の着用必須」「王女殿下より目立つな」「見目の良い男性、高位貴族の子息らと会話をするな」……。 ルパートから渡された「禁止事項一覧表」に縛られ、ロザリンドは期待とは真逆の、暗黒の学園生活を送ることに。 そんな日々の中での唯一の救いとなったのは、友人となってくれた冷静で聡明な公爵令嬢、ノエリスの存在だった。 学期末、ロザリンドはついにルパートの怒りを買い、婚約破棄を言い渡される。 けれど、深く傷つきながら長期休暇を迎えたロザリンドのもとに届いたのは、兄の友人であり王国騎士団に属する公爵令息クライヴからの婚約の申し出だった。 暗黒の一学期が嘘のように、幸せな長期休暇を過ごしたロザリンド。けれど新学期を迎えると、エメライン王女が接触してきて……。 ※10万文字超えそうなので長編に変更します。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...