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30 王妃の考え ③
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「イライアス殿下、迎えに来てくださり、本当にありがとうございました」
謁見の間に速足で向かいながらお礼を言うと、イライアス殿下は小声で答える。
「母上が妙な動きをしてるって、ルピが教えてくれたんだ」
「そうだったのですね」
イライアス殿下の頭の上にいるルピに目を向ける。
私の視線に気がついたルピは嬉しそうに尻尾を振ってくれた。
その後は謁見の間で、国王陛下とイライアス殿下に「私で良ければ」と伝えた。
口約束というわけにはいかないため、まずは婚約と結婚についての書類にサインをすることになった。
国王陛下とは一度別れ、イライアス殿下の自室に案内された。
ベェが興味津々でルピと一緒に部屋の中を動き回るので、私がソファに座って書類を読んでいる間、イライアス殿下がベェにお部屋の案内をしてくれていた。
部屋の中は、調度品は少ないが、本が好きなのか、壁際にはたくさんの本棚がある。部屋の奥には木製の仕切りがあり、その向こうにはベッドがあるそうだ。
本で思い出したが、レイハート邸には魔法使いに関する本は一冊もない。王城の書庫になら、何冊かは存在するでしょうし、持ち出しはできずとも、本を読んでもいいか聞いてみよう。
書類を読み終え、サインをした後にメイドが淹れてくれていたお茶に口をつけていると、イライアス殿下が話しかけてきた。
「今更だけど、本当にいいの?」
「もちろんです。こちらこそ、私で良いのでしょうか」
心配そうな顔をするイライアス殿下に苦笑して尋ねると、彼は照れくさそうに微笑んで答える。
「使い魔同士の仲が良い場合、主人たちも性格の相性がいいらしいよ」
「そうなのですね」
迷惑でないのならそれでいい。
安堵した時、大事なことを思い出した。
そうだわ。
ソレイユの言っていたことが気になる。たしか、イライアス殿下と結婚すると言っていたわよね。
「あの、話は変わるのですが、ソレイユが気になることを言っていたのです」
「気になること?」
ソファに移動するように促されたので、すぐ近くにあった二人掛けのソファに座る。
イライアス殿下が向かい側に座ると、私は早速、ソレイユの話を始めた。
「僕と結婚するって?」
「はい。確信があるような言い方でした」
「そうか……」
イライアス殿下は眉根を寄せてうなずき、話を続ける。
「実は、本人はバレていないと思っているようだけど、リット兄さんがソレイユ嬢を支援しているのは知っていた。お金の出所は三十日ごとに出されている公務への給金で、個人のお金扱いだから、今は様子見していたんだ」
「……そうだったのですね」
絶縁してからは、とにかく近づけないようにしていただけで、ソレイユがどうしているかは気にしていなかった。
リット殿下の中では、ソレイユはまだ使える人間なのかしら。
「そういえば、どうして王妃陛下は先ほど、私と話をしようとされたのでしょうか。結婚を反対しておられるのですか?」
「ああ。会議では僕が爵位を継いだほうがいいといって、多くの人が賛成した。だけど、母上は断固として反対すると訴えていたんだ」
反対する理由は、私が他の男性と結婚していたことらしいが、ソレイユの発言を聞いて、実際は自分とソレイユを結婚させたいのではないかと、イライアス殿下は言った。
「それはどうしてなのでしょうか」
「母上は先代のレイハート公爵と交流があったことは知っているよね?」
「……父は、王妃陛下の前でソレイユだけを褒めていたんですね。だから、私よりもソレイユのほうがイライアス殿下にふさわしいと思っているということですか?」
「たぶんね」
イライアス殿下は苦笑してうなずいた。
はっきりとしたことが言えないのは、使い魔が複雑な話を覚えられないからだった。
ルピやワシが監視をしていても、聞いた話を主人に正確に伝えられない。
使い魔は賢くても五歳児くらいの知能しかなく、賢さは個々によって差があるらしい。
「リット殿下はなぜ、ソレイユを助けているのでしょう。王妃陛下と考えが違うということでしょうか」
「兄さんの場合は、彼女を駒に使いたいだけだろう。そのことをソレイユ嬢が知っているかはわからないけど」
「使い捨てにされる可能性が高いですね」
リット殿下は、ソレイユを使って何をしようとしているのかしら。
調べなければならないことがいっぱいだわ。
それに、私とイライアス殿下が結婚しても、私の問題が片付くだけで、ミティ様が危険なことに変わりはない。
ただ、身内になれば首を突っ込みやすくなる。
本当の戦いはこれからだわ。
「イライアス殿下、妻として尽力いたしますので、これからよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくね」
立ち上がって頭を下げると、イライアス殿下は微笑んでお辞儀をしてくれたのだった。
謁見の間に速足で向かいながらお礼を言うと、イライアス殿下は小声で答える。
「母上が妙な動きをしてるって、ルピが教えてくれたんだ」
「そうだったのですね」
イライアス殿下の頭の上にいるルピに目を向ける。
私の視線に気がついたルピは嬉しそうに尻尾を振ってくれた。
その後は謁見の間で、国王陛下とイライアス殿下に「私で良ければ」と伝えた。
口約束というわけにはいかないため、まずは婚約と結婚についての書類にサインをすることになった。
国王陛下とは一度別れ、イライアス殿下の自室に案内された。
ベェが興味津々でルピと一緒に部屋の中を動き回るので、私がソファに座って書類を読んでいる間、イライアス殿下がベェにお部屋の案内をしてくれていた。
部屋の中は、調度品は少ないが、本が好きなのか、壁際にはたくさんの本棚がある。部屋の奥には木製の仕切りがあり、その向こうにはベッドがあるそうだ。
本で思い出したが、レイハート邸には魔法使いに関する本は一冊もない。王城の書庫になら、何冊かは存在するでしょうし、持ち出しはできずとも、本を読んでもいいか聞いてみよう。
書類を読み終え、サインをした後にメイドが淹れてくれていたお茶に口をつけていると、イライアス殿下が話しかけてきた。
「今更だけど、本当にいいの?」
「もちろんです。こちらこそ、私で良いのでしょうか」
心配そうな顔をするイライアス殿下に苦笑して尋ねると、彼は照れくさそうに微笑んで答える。
「使い魔同士の仲が良い場合、主人たちも性格の相性がいいらしいよ」
「そうなのですね」
迷惑でないのならそれでいい。
安堵した時、大事なことを思い出した。
そうだわ。
ソレイユの言っていたことが気になる。たしか、イライアス殿下と結婚すると言っていたわよね。
「あの、話は変わるのですが、ソレイユが気になることを言っていたのです」
「気になること?」
ソファに移動するように促されたので、すぐ近くにあった二人掛けのソファに座る。
イライアス殿下が向かい側に座ると、私は早速、ソレイユの話を始めた。
「僕と結婚するって?」
「はい。確信があるような言い方でした」
「そうか……」
イライアス殿下は眉根を寄せてうなずき、話を続ける。
「実は、本人はバレていないと思っているようだけど、リット兄さんがソレイユ嬢を支援しているのは知っていた。お金の出所は三十日ごとに出されている公務への給金で、個人のお金扱いだから、今は様子見していたんだ」
「……そうだったのですね」
絶縁してからは、とにかく近づけないようにしていただけで、ソレイユがどうしているかは気にしていなかった。
リット殿下の中では、ソレイユはまだ使える人間なのかしら。
「そういえば、どうして王妃陛下は先ほど、私と話をしようとされたのでしょうか。結婚を反対しておられるのですか?」
「ああ。会議では僕が爵位を継いだほうがいいといって、多くの人が賛成した。だけど、母上は断固として反対すると訴えていたんだ」
反対する理由は、私が他の男性と結婚していたことらしいが、ソレイユの発言を聞いて、実際は自分とソレイユを結婚させたいのではないかと、イライアス殿下は言った。
「それはどうしてなのでしょうか」
「母上は先代のレイハート公爵と交流があったことは知っているよね?」
「……父は、王妃陛下の前でソレイユだけを褒めていたんですね。だから、私よりもソレイユのほうがイライアス殿下にふさわしいと思っているということですか?」
「たぶんね」
イライアス殿下は苦笑してうなずいた。
はっきりとしたことが言えないのは、使い魔が複雑な話を覚えられないからだった。
ルピやワシが監視をしていても、聞いた話を主人に正確に伝えられない。
使い魔は賢くても五歳児くらいの知能しかなく、賢さは個々によって差があるらしい。
「リット殿下はなぜ、ソレイユを助けているのでしょう。王妃陛下と考えが違うということでしょうか」
「兄さんの場合は、彼女を駒に使いたいだけだろう。そのことをソレイユ嬢が知っているかはわからないけど」
「使い捨てにされる可能性が高いですね」
リット殿下は、ソレイユを使って何をしようとしているのかしら。
調べなければならないことがいっぱいだわ。
それに、私とイライアス殿下が結婚しても、私の問題が片付くだけで、ミティ様が危険なことに変わりはない。
ただ、身内になれば首を突っ込みやすくなる。
本当の戦いはこれからだわ。
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立ち上がって頭を下げると、イライアス殿下は微笑んでお辞儀をしてくれたのだった。
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