【完結】レイハート公爵夫人の時戻し

風見ゆうみ

文字の大きさ
32 / 62

31  元婚約者の暴走 ①

しおりを挟む
 私とイライアス様の結婚の話はトントン拍子に進み、十日後には結婚することが決まった。
 領民には新聞などを通じて理解を求めたところ、王命であるからか、特に批判はなく、おめでたいムード一色となった。

 レイハート公爵領内で随一の繁華街に視察に行ってみると、お祝いのイベントを計画していると、商店の店主たちから声を掛けられた。

 相手がイライアス様だったから、すんなりと受け入れてくれたのだろう。

 同時期にロガンとソレイユの浮気のことも公表されたため、一気にオウガ侯爵家の信用は落ちた。
 ロガンの兄は、オウガ侯爵家を存続させるため、陛下に当主の変更を求めた。

 通常では現当主が亡くなってから跡を継ぐものだが、今回は不適任者として隠居させる形になる。
 陛下は家族間での話し合いと、領民の許しを得られた場合のみと条件を付けて承諾した。

 社交界に流れる噂では、いくら次男とはいえ、侯爵が甘やかしすぎたのは良くないという考えの領民が多いらしく、当主の変更は正式に認められるだろうとのことだ。

 結婚を決めた日から、私はイライアス殿下のことをイライアス様、イライアス様は私のことをソラリアと呼ぶことに決まった。

 ロガンは私とイライアス様の結婚の話に衝撃を受け、大量の手紙を送りつけてきた。
 私は読んではいないが、代わりに読んでくれたパンナやメイド長が言うには、私が自分以外の誰かと結婚なんてしたら生きていけないなど、死を思わせるワードが並んでいるそうだ。
 ロガンとの付き合いは長い。彼にそんな勇気がないことは知っている。

 自分が痛い思いをすることを嫌がる人だ。だからこそ、他の人を傷つけようとするのではないかと心配になった。

 いくら時戻しの魔法を使えるにしても、自分のせいで誰かが傷つくミスは、もう犯したくない。

 ロガンが馬鹿なことをしないように、見張りをつけることにした。

 ソレイユは、レイハート邸の前で暴れただけでなく、イライアス様に結婚をやめるように直談判しようと、王城に乗り込もうとした罪で、騎士隊に逮捕された。

 現在は留置所にいるようだが、リット殿下の手配で近いうちに保釈されると聞いている。

「リット殿下はどうしてソレイユを助けるのかしら。彼は女性が嫌いなのよね? それなら、ソレイユを見捨てるのが普通だと思うんだけど……」
「ベェェー」

 今日の出来事を日記帳に書き終えてから、私は頭の上にいるベェに話しかけた。

 夜も遅い時間で、ベェは目をとろんとさせていながらも、問いかけには答えてくれようとする。
 だが、残念ながら「ベェェー」と鳴いているようにしか聞こえない。

「ごめんね。ベェが何を言っているのか、まだわからないわ」

 頭を撫でながら謝ると、べェは私の顔の前まで飛んでくると、背中のシルバートレイを、自分の胸の前に持ってきた。

「どうしたの?」
「ベェェー!」

 ベェが鳴いた瞬間、シルバートレイの平たい部分に黒い文字が浮かび上がった。

「ど、どういうこと?」
「ベェ!」

 困惑していると、浮かび上がっていた文字が切り替わる。

 さっきは『リットはわるいやつ!』だったが、今は『ソラリアとおはなししたい』と書かれている。

「ありがとう! 私もベェとお話できるなんて嬉しいわ!」
「ベェェー!」

 ベェは嬉しそうに鳴いて、私にすり寄ってきた。

「どうして今になって、シルバートレイに文字が浮かぶようになったの?」

 こんな機能があるのなら、もっと早くに使ってほしかったとワガママなことを思った。

「ベェ!」

 ベェは私から少し離れてシルバートレイを掲げた。
 すると、黒い文字が浮かび上がる。

『ソラリアがこころをとざしてたから』

 少しずつ、私の心が解きほぐされて、今に至るという感じかしら。

「そうだったのね。色々とごめんなさい」
「ベェ!」

『いいよ~!』

 ベェの明るい返しに、私の心は本当に救われた。

 これからは、ベェにも恩を返していかなくちゃ。

 それにしても、ベェが持っているものに限定されるのでしょうけど、シルバートレイってこんなに役に立つものなのね。
 変な納得をしつつ、その日は夜遅くまでベェとのお話を楽しんだ。

 それから二日後、私のもとにロガンがソレイユを襲おうとしたという連絡が入ったのだった。

しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので頑張るのをやめました 〜昼寝と紅茶だけの公爵令嬢なのに、なぜか全部うまくいきます〜あ

鍛高譚
恋愛
王太子から婚約破棄された衝撃で階段から落ちた公爵令嬢シャル・ド・ネ・アルベール。 目覚めた彼女は、なんと前世の記憶——ブラック企業で働き詰めだったOL・佐伯ゆかりとしての人生を思い出してしまう。 無理して働いた末に過労死した前世の反省から、シャルは決意する。 「もう頑張らない。今度の人生は“好き”と“昼寝”だけで満たしますわ!」 貴族としての特権をフル活用し、ワイン造りやスイーツ作りなど“趣味”の延長でゆるゆる領地改革。 気づけば国王にも称賛され、周囲の評価はうなぎのぼり!? 一方、彼女を見下していた王太子と“真実の愛()”の令嬢は社交界で大炎上。 誰もざまぁされろなんて言ってないのに……勝手に転がり落ちていく元関係者たち。 本人はただ紅茶とスコーンを楽しんでいるだけなのに―― そんな“努力しない系”令嬢が、理想の白い結婚相手と出会い、 甘くてふわふわ、そしてちょっぴり痛快な自由ライフを満喫する ざまぁ(他力本願)×スローライフ×ちょっと恋愛な物語です♪

『婚約破棄されたので北の港を発展させたら

ふわふわ
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。 公爵令嬢アリアベルは、王太子カルディオンから突然の婚約破棄を告げられる。 「真実の愛を見つけた」 そう言って王太子が選んだのは、涙を流す義妹ヴィオレッタだった。 王都から追い出され、すべてを失った―― はずだった。 アリアベルが向かったのは、王国の北にある小さな港町。 しかし彼女の手腕によって港は急速に発展し、やがて王国最大の交易港へと変わっていく。 一方その頃、王太子と義妹は王都で好き勝手に振る舞っていたが―― やがてすべてが崩れ始める。 王太子は国外追放。 義妹は社交界から追放され修道院送り。 そして気づいた頃には、北の港こそが王国の中心になっていた。 「私はもう誰のものでもありません」 これは、婚約破棄された令嬢が自分の人生を取り戻し、 王国の未来を変えていく物語。 そして―― 彼女の隣には、いつしか新しい王太子の姿があった。 婚約破棄から始まる、逆転ざまぁロマンス。✨

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

『婚約破棄された公爵令嬢ですが、王国を救ったので新しい王太子に求婚されました

しおしお
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。 公爵令嬢ルシエラ・ノクティスは、婚約者である王太子エドガルドから突然の公開婚約破棄を宣言される。 理由は―― 「真実の愛を見つけたから」。 隣には涙を浮かべる令嬢ヴィオレッタ。 ルシエラは“冷酷な悪女”として断罪され、社交界から追い出されてしまう。 だが、その婚約破棄こそが―― 王国を揺るがす大事件の始まりだった。 王家の信用は崩れ、銀行は倒れ、商人は逃げ、王都は混乱に包まれていく。 そんな中、静かに動き始めたのは――追放されたはずのルシエラ。 冷静な知性と圧倒的な手腕で王国の危機を次々と解決していく彼女の姿に、 やがて王国中の人々が気づき始める。 「この国を救っているのは誰なのか」を。 一方、ルシエラを捨てた元王太子と“真実の愛”の令嬢は、 次々と暴かれる罪と崩壊していく地位に追い詰められていき――。 そして彼女の隣に立ったのは、冷静で鋭い眼差しを持つ辺境伯ローデリック。 「君がこの国を救うなら、俺は君の隣に立つ」 婚約破棄から始まる、 王国最大級のざまぁ逆転劇。 追放された公爵令嬢が王国を救い、 転落した王太子の代わりに―― 新しい王太子妃になるまでの物語。

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

【完結】本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました

音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。 ____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。 だから私は決めている。 この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。 彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。 ……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。

婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの

鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」 そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。 ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。 誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。 周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」 ――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。 そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、 家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。 だが、彼女の予言は本物だった―― 数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。 国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、 あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。 「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」 皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、 滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。 信じてもらえなかった過去。 それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。 そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。 ――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。

処理中です...