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55 元婚約者の末路 ⑤
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「うわああっ!」
ベェの攻撃はかなり痛かったらしく、ロガンは情けない声を上げながら、イライアス様につかまれていない左手で眉間を押さえた。
「痛いっ! なんでだ?」
「ベェ! ベェ! ベェ!」
ベェは一発では気がすまないのか、指の隙間を狙い、ロガンの眉間めがけてシルバートレイを叩きつける。
一生懸命頑張ってくれている姿が可愛くて愛おしいけれど、さすがに怪しまれてしまう。
私の心の声が聞こえたかのように、ベェは叩くのをやめて私の所に戻ってきた。怒りがまだおさまらないのか、ふーふーと大きな息を吐いていた。
「僕の妻に何をしようとしていた?」
眉間を押さえて痛がっているロガンの手を離し、イライアス様は涙目になっているロガンに尋ねた。
「は、話をしようとしていただけです! それよりもどうして、イライアス様がここにいるんですか?」
「僕がここにいちゃいけない理由はないだろ?」
「そ、それはそうかもしれませんが……っ、おい、ソラリア! どういうことなんだよ!?」
なぜか私を責めてくるロガンを呆れた目で見つめる。
「あなたはオウガ侯爵代理に私はイライアス様に洗脳されていると言ったのよね? そう思っていたのなら、こうなることに驚きはないはずよ」
私が本当にイライアス様の言うことしか聞かないのなら、たとえ第二王子殿下の命令だったとしても、イライアス様に確認しないはずがない。
「や、やっぱり、君はイライアス様に何か言われたんだな? 脅されたのか?」
彼には例え話が通じないらしい。いや、今の言い方では私の考えたことが伝わりにくかったんだろうか。
明るい表情で私を見つめるロガンを見て、イライアス様は苦笑する。
「僕はソラリアを洗脳なんてしていない。大体、君は自分がどれだけ失礼なことを言っているのか理解できているのかな」
「理解はしています。ですが、どんなに偉い人であっても人を騙して言うことをきかせるような行為はするべきではありません! 僕は言わなければいけないことは言ったまでです」
ロガンは自信満々の表情で答えた。そんな彼にイライアス様は聞き返す。
「騙すってどういうこと? 僕が君の悪口を言って、彼女を君の所に戻らせないようにしているとでも言いたいのかな」
「そうです。その通りです!」
「だから、失礼なことを言ってもいいって言いたいんだね?」
「そうです」
ロガンは何度も首を縦に振った。
「それが事実じゃなかったらどうするの? 僕に謝れば済むという問題じゃないよ」
「そうよ。それにあなた、自分の立場をわかっていないでしょう?」
イライアス様と私に質問され、ロガンは焦った顔になって首を左右に動かした。
どちらの質問に先に答えるべきか迷っているようだ。
少しして、ロガンはイライアス様の質問に答えた。
「今、オウガ侯爵家の事実上のトップは兄上です。兄上から謝ってもらいます。弟の不始末は兄が見るべきです」
信じられないわ。いくら、親に甘やかされて育ったといっても、兄に迷惑をかけることを何とも思っていないなんて――。
ロガンの答えに私とイライアス様が呆れ返って顔を見合わせた時だった。
「もうお前はオウガ侯爵家の人間ではない。自分の責任は自分でとるんだな」
店内とテラス席を繋ぐ扉を開けてやってきたのは、ロガンの兄である、オウガ侯爵代理だった。
ベェの攻撃はかなり痛かったらしく、ロガンは情けない声を上げながら、イライアス様につかまれていない左手で眉間を押さえた。
「痛いっ! なんでだ?」
「ベェ! ベェ! ベェ!」
ベェは一発では気がすまないのか、指の隙間を狙い、ロガンの眉間めがけてシルバートレイを叩きつける。
一生懸命頑張ってくれている姿が可愛くて愛おしいけれど、さすがに怪しまれてしまう。
私の心の声が聞こえたかのように、ベェは叩くのをやめて私の所に戻ってきた。怒りがまだおさまらないのか、ふーふーと大きな息を吐いていた。
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眉間を押さえて痛がっているロガンの手を離し、イライアス様は涙目になっているロガンに尋ねた。
「は、話をしようとしていただけです! それよりもどうして、イライアス様がここにいるんですか?」
「僕がここにいちゃいけない理由はないだろ?」
「そ、それはそうかもしれませんが……っ、おい、ソラリア! どういうことなんだよ!?」
なぜか私を責めてくるロガンを呆れた目で見つめる。
「あなたはオウガ侯爵代理に私はイライアス様に洗脳されていると言ったのよね? そう思っていたのなら、こうなることに驚きはないはずよ」
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「や、やっぱり、君はイライアス様に何か言われたんだな? 脅されたのか?」
彼には例え話が通じないらしい。いや、今の言い方では私の考えたことが伝わりにくかったんだろうか。
明るい表情で私を見つめるロガンを見て、イライアス様は苦笑する。
「僕はソラリアを洗脳なんてしていない。大体、君は自分がどれだけ失礼なことを言っているのか理解できているのかな」
「理解はしています。ですが、どんなに偉い人であっても人を騙して言うことをきかせるような行為はするべきではありません! 僕は言わなければいけないことは言ったまでです」
ロガンは自信満々の表情で答えた。そんな彼にイライアス様は聞き返す。
「騙すってどういうこと? 僕が君の悪口を言って、彼女を君の所に戻らせないようにしているとでも言いたいのかな」
「そうです。その通りです!」
「だから、失礼なことを言ってもいいって言いたいんだね?」
「そうです」
ロガンは何度も首を縦に振った。
「それが事実じゃなかったらどうするの? 僕に謝れば済むという問題じゃないよ」
「そうよ。それにあなた、自分の立場をわかっていないでしょう?」
イライアス様と私に質問され、ロガンは焦った顔になって首を左右に動かした。
どちらの質問に先に答えるべきか迷っているようだ。
少しして、ロガンはイライアス様の質問に答えた。
「今、オウガ侯爵家の事実上のトップは兄上です。兄上から謝ってもらいます。弟の不始末は兄が見るべきです」
信じられないわ。いくら、親に甘やかされて育ったといっても、兄に迷惑をかけることを何とも思っていないなんて――。
ロガンの答えに私とイライアス様が呆れ返って顔を見合わせた時だった。
「もうお前はオウガ侯爵家の人間ではない。自分の責任は自分でとるんだな」
店内とテラス席を繋ぐ扉を開けてやってきたのは、ロガンの兄である、オウガ侯爵代理だった。
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