後悔したくないので言わせてもらいますね

風見ゆうみ

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8  初めてのお友達です!

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「サンディさん、今の言葉はどういう意味でしょうか?」

 私もサンディさんが何を言おうとされているのかわかりませんでしたので、彼に尋ねた時でした。

「サンディ! やめなさい!」

 エルディさんが慌てて、私からサンディさんを引き離そうとされます。

「どうしてだよ、父さん!」
「あの、エルディさん。私はかまいませんよ。サンディさん、どうかされましたか?」
「いいんです、エレノア様、気になさらないで下さい。それよりも昨日から、無礼な真似をしてしまい、申し訳ございませんでした」
「そんな! とんでもありません! 助けていただいて、本当に感謝しております。あ! 電報を打っていただいた代金もお返ししないといけませんね」

 サンディさんは、私とエルディさんが話をしている間も、何か訴える様な目で見てこられます。

 気にはなりますが、もしかすると、イジン男爵に聞かれたくない事なので、エルディさんは止めておられるのかもしれません。

「旦那様。サンディさんとエルディさんを、後日、屋敷にご招待してもよろしいですか?」
「ああ。かまわない。ところで、エレノア」
「何でしょうか?」
「その男性と一緒に眠ったとかいう事はないよな?」

 旦那様は笑顔で聞いてこられているつもりかもしれませんが、顔がとても怖いです。

「当たり前です。私は旦那様の妻ですよ?」

 失礼な事を聞いてこられるので、少しムッとして言い返しますと、旦那様は満足そうに微笑まれます。

「なら良い」

 一緒に眠ったなんて言ったら、私は殺されてしまうのでしょうか? 

 今は考えない事にして、サンディさんに話しかけます。

「サンディさん、今日は無理なのですが、後日改めて、お世話になったお礼に、お父様と一緒に私の家に遊びに来て下さい」

 サンディさんの前でしゃがんで、そこまで言ってから旦那様の方を見ると、意味を察して下さったのか、イジン男爵に話しかけて、イジン男爵の注意を自分に引いて下さいました。

「その時に、ゆっくりお話を聞かせてくださいますか?」
「……ありがとう!」
「サンディさんは好きなお菓子や食べ物はありますか? 教えてくれれば用意いたしますよ」
「本当に!? でも、俺、今はおもちゃが欲しいかなぁ!」
「どんなおもちゃが欲しいのですか?」

 明るい笑顔を見せてくれたサンディさんが可愛らしくて、ついつい笑顔で聞いてしまうと、エルディさんが言います。

「申し訳ございません。エレノア様。子供の言う事ですので、どうかお許しを!」
「エルディさん。私は悪人顔かもしれませんが、悪人ではありませんよ。ちょっと言いたい事を言ってしまう悪いクセはありますが…。という事はやはり悪人? ですが、誘拐したりとか、そんな悪い事はしません!」
「あの…、そういう意味ではなくてですね」

 エルディさんが困った顔をされます。
 
 また見当違いの事を言ってしまったのでしょうか。

「とにかく、エルディさんもぜひ、屋敷にいらして下さい。送迎もさせていただきますので」
「ですが…」

 エルディさんが遠慮していると、イジン男爵が旦那様との話を終えたのか、私に近寄ってきて言います。

「よ、よろしければ、私もお招きいただいても?」
「……? どうしてですか? お友達でもありませんのに」
「こんな風にお会いする事が出来ましたのは何かの縁だと思います。ぜひ、私を友人に!」
「友人が一人もいませんので、友人を欲しているのは確かですが、申し訳ございませんが、あなたには何度か私の存在を否定されておりますので、友達になるにはちょっと難しいかと…。あなたはこの世に存在しない人物と、どうやってお友達になるおつもりで?」
「こ、心で!」

 イジン男爵が食い下がってこられますので、少しだけ考えます。

「心で、お友達に…。では…」

 イジン男爵をじーっと見てみます。

 心の友なら、何も話さなくても大丈夫なのでは?

 そう思ったのですが、イジン男爵は困惑されておられ、しかも私が旦那様に止められてしまいます。

「エレノア、君は男性の友達は必要ない。男性の友達が欲しいならキックスがいる」
「キックス様は義理の弟ではないですか」
「それはそうだが…」
「エレノア! 俺と友達になろう!」

 サンディさんがニッと明るい笑顔を見せて言ってくださいましたので、大きく頷きます。

「嬉しいです! 初めてのお友達です!」
「え…。エレノア、本当に今まで友達いなかったの…?」

 喜んで言うと、サンディさんが気の毒そうな目で私を見てこられたのでした。

 べ、別に良いですよね?
 私にはジャスミンも家族もいましたから!

「イジン男爵、君には改めて連絡させてもらう。エレノア、ジャスミン達が心配しているだろうから、今日はもう帰ろう。エルディ氏、サンディくん、エレノアを助けてくれてありがとう」

 旦那様がエルディさん達に頭を下げてから、先程の会話を覚えていらしたのか、電報の代金だと言ってエルディさんに紙幣を何枚か差し出されました。
 すると、思ったよりもお金が多かったのでしょうか。
 エルディさんが悲鳴の様な声を上げたのでした。
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