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19 人を変えてくれないでしょうか?
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「ラ、ラムダちゃんが恋とはどういう事でしょう!?」
ここ最近、ラムダちゃんが恋をした時はどうなってしまうのかと思っていたりもしましたが、まさか本当にそんな事になるなんて…!
もちろん、恋をする事は悪くありません。
ですが、あのラムダちゃんを落とした女性とは一体、どんな人なのでしょう!?
好奇心が勝ってしまいそうになります。
というか、それよりも。
「という事は、ラムダちゃんも恋人が出来れば魔法を解いてくださるでしょうか? もしくは、ラムダちゃんが恋に落ちた方がラムダちゃんを諭してくだされば、旦那様の魔法も解いてもらえるという事でしょうか?」
キックス様に問いかけると、苦笑して首を傾げます。
「そこまではどうかわかりませんが、気持ちがわかる様になれば解いてくれるかもしれませんね」
「そうなると旦那様の犬の姿はもう見られなくなるのですね…」
残念な気持ちでいると、ジャスミンに注意されます。
「犬化は奥様にとっては可愛くて良いかもしれませんが、旦那様にとっては大変な事だと思います。家の中でなら良いですが、何かの拍子に…、というか、外出する際には魔法を解かれるんでしたね」
「そうなのですよ。だから、魔法を解いたあとに解いていないと思い込んでいてくれると、それはそれで良いんですけれど」
「僕が言える立場ではないかもしれませんが、その前に魔法をかけている状態がおかしいのですから、ラムダはどうにかしないといけないのでは?」
キックス様の言いたい事はわかります。
排除してしまえば良いのでしょうけれど、死刑執行というわけではないですが、人の人生を左右する何らかの引き金を引くのが自分だとしたら、それが出来るのかと考えるのと同じで、ラムダちゃんから旦那様を奪う事は彼の生きがいをなくしてしまう様な気がして、気の毒に思ってしまう様になってしまいました。
自分に大した実害がなかったので呑気に考えておりましたが、それではいけませんよね。
「私的には本人が改心する事を願っているのですが無理でしょうか」
「よほどのことでない限り無理でしょう」
「恋は人を変えてくれないでしょうか?」
私の問いかけにキックス様とジャスミンは顔を見合わせた後、私の方を向いて苦笑しただけでした。
とりあえず次の日から、私はラムダちゃんを監視する事にしたのです。
ラムダちゃんには不愉快な思いをさせられていますし、少しくらい弱みを握りたいと思ってしまうのは駄目でしょうか?
もちろん、本当に恋であるならば、人の恋路を邪魔する気はありません。
ただ、人の痛みをわかってもらって、魔法を解いてもらう様にしてもらわなければ…、それだけの気持ちです。
「何をしてるんだ、エレノア」
執務室に入って、こっそりラムダちゃんの様子を見るつもりでしたが、旦那様に見つかってしまいました。
ラムダちゃんはいつも旦那様の執務室にいますし、監視するとなると旦那様に見つからないわけはないのですけどね。
「昨日、お話した事を確認したかったんです」
昨日の晩の間に、旦那様には軽くお話をしておいたので事情はわかってくれています。
「だが、そんなあからさまにしていたら、ラムダも気付くだろう」
と、旦那様は言われましたが、ラムダちゃんは勤務時間前ですし、私の事なんて全く見えていないようで執務室の窓から外を眺めておられます。
ラムダちゃんは旦那様を守る為だといって屋敷の周りに魔法をかけていて、誰かが敷地内に入ったら両手のひらサイズの水晶玉に映るようになっています。
そして、その水晶玉はいつも旦那様が持っておられるので、私は執務室のソファーに座り水晶玉に何かが映らないかと眺めていると、透明だった水晶玉に1人の少女が浮かび上がりました。
顔見知りの少女で花屋さんの看板娘の方です。
赤茶色のセミロングのストレートの髪をおろした可愛らしい少女で、いつも笑顔で挨拶してくれる良い子です。
庭師とも仲が良く、旦那様の許可を取り、休みの日は庭の花壇を整えてくれているので、お給金を出そうとしたら「好きでやっていますので! 逆にこちらがお礼をしなければいけないくらいです」と遠慮してくるような子です。
すると、ラムダちゃんが突然、執務室から出て行ったのです。
勤務時間までにはまだ時間があります。
もしや、彼女の所へいったのでしょうか!?
というか、2人は知り合いだったりするのでしょうか!?
追いかけていこうかと思いましたが、水晶玉は花屋さんの少女をずっと追いかけてくれているので、この場にいてもラムダちゃんが話しかけるか話しかけないかがわかるので見ていると、気が付くと旦那様までもが横に座って水晶玉を見ていました。
が、いつまでたってもラムダちゃんが現れる様子はありません…。
そして、花屋さんの少女はメイドに今日の分の花を手渡してから去っていってしまいました。
「おかしいです。ラムダちゃんは彼女に会いに行ったのではないのでしょうか?」
「もしかすると、話しかけられないんじゃないか?」
「遠くから見ているだけというやつですか」
そうやって話をしている内に、ラムダちゃんがなぜかシロンさんを胸に抱きしめながら執務室に戻ってきたのでした。
ここ最近、ラムダちゃんが恋をした時はどうなってしまうのかと思っていたりもしましたが、まさか本当にそんな事になるなんて…!
もちろん、恋をする事は悪くありません。
ですが、あのラムダちゃんを落とした女性とは一体、どんな人なのでしょう!?
好奇心が勝ってしまいそうになります。
というか、それよりも。
「という事は、ラムダちゃんも恋人が出来れば魔法を解いてくださるでしょうか? もしくは、ラムダちゃんが恋に落ちた方がラムダちゃんを諭してくだされば、旦那様の魔法も解いてもらえるという事でしょうか?」
キックス様に問いかけると、苦笑して首を傾げます。
「そこまではどうかわかりませんが、気持ちがわかる様になれば解いてくれるかもしれませんね」
「そうなると旦那様の犬の姿はもう見られなくなるのですね…」
残念な気持ちでいると、ジャスミンに注意されます。
「犬化は奥様にとっては可愛くて良いかもしれませんが、旦那様にとっては大変な事だと思います。家の中でなら良いですが、何かの拍子に…、というか、外出する際には魔法を解かれるんでしたね」
「そうなのですよ。だから、魔法を解いたあとに解いていないと思い込んでいてくれると、それはそれで良いんですけれど」
「僕が言える立場ではないかもしれませんが、その前に魔法をかけている状態がおかしいのですから、ラムダはどうにかしないといけないのでは?」
キックス様の言いたい事はわかります。
排除してしまえば良いのでしょうけれど、死刑執行というわけではないですが、人の人生を左右する何らかの引き金を引くのが自分だとしたら、それが出来るのかと考えるのと同じで、ラムダちゃんから旦那様を奪う事は彼の生きがいをなくしてしまう様な気がして、気の毒に思ってしまう様になってしまいました。
自分に大した実害がなかったので呑気に考えておりましたが、それではいけませんよね。
「私的には本人が改心する事を願っているのですが無理でしょうか」
「よほどのことでない限り無理でしょう」
「恋は人を変えてくれないでしょうか?」
私の問いかけにキックス様とジャスミンは顔を見合わせた後、私の方を向いて苦笑しただけでした。
とりあえず次の日から、私はラムダちゃんを監視する事にしたのです。
ラムダちゃんには不愉快な思いをさせられていますし、少しくらい弱みを握りたいと思ってしまうのは駄目でしょうか?
もちろん、本当に恋であるならば、人の恋路を邪魔する気はありません。
ただ、人の痛みをわかってもらって、魔法を解いてもらう様にしてもらわなければ…、それだけの気持ちです。
「何をしてるんだ、エレノア」
執務室に入って、こっそりラムダちゃんの様子を見るつもりでしたが、旦那様に見つかってしまいました。
ラムダちゃんはいつも旦那様の執務室にいますし、監視するとなると旦那様に見つからないわけはないのですけどね。
「昨日、お話した事を確認したかったんです」
昨日の晩の間に、旦那様には軽くお話をしておいたので事情はわかってくれています。
「だが、そんなあからさまにしていたら、ラムダも気付くだろう」
と、旦那様は言われましたが、ラムダちゃんは勤務時間前ですし、私の事なんて全く見えていないようで執務室の窓から外を眺めておられます。
ラムダちゃんは旦那様を守る為だといって屋敷の周りに魔法をかけていて、誰かが敷地内に入ったら両手のひらサイズの水晶玉に映るようになっています。
そして、その水晶玉はいつも旦那様が持っておられるので、私は執務室のソファーに座り水晶玉に何かが映らないかと眺めていると、透明だった水晶玉に1人の少女が浮かび上がりました。
顔見知りの少女で花屋さんの看板娘の方です。
赤茶色のセミロングのストレートの髪をおろした可愛らしい少女で、いつも笑顔で挨拶してくれる良い子です。
庭師とも仲が良く、旦那様の許可を取り、休みの日は庭の花壇を整えてくれているので、お給金を出そうとしたら「好きでやっていますので! 逆にこちらがお礼をしなければいけないくらいです」と遠慮してくるような子です。
すると、ラムダちゃんが突然、執務室から出て行ったのです。
勤務時間までにはまだ時間があります。
もしや、彼女の所へいったのでしょうか!?
というか、2人は知り合いだったりするのでしょうか!?
追いかけていこうかと思いましたが、水晶玉は花屋さんの少女をずっと追いかけてくれているので、この場にいてもラムダちゃんが話しかけるか話しかけないかがわかるので見ていると、気が付くと旦那様までもが横に座って水晶玉を見ていました。
が、いつまでたってもラムダちゃんが現れる様子はありません…。
そして、花屋さんの少女はメイドに今日の分の花を手渡してから去っていってしまいました。
「おかしいです。ラムダちゃんは彼女に会いに行ったのではないのでしょうか?」
「もしかすると、話しかけられないんじゃないか?」
「遠くから見ているだけというやつですか」
そうやって話をしている内に、ラムダちゃんがなぜかシロンさんを胸に抱きしめながら執務室に戻ってきたのでした。
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