家を追い出された令嬢は、新天地でちょっと変わった魔道具たちと楽しく暮らしたい

風見ゆうみ

文字の大きさ
17 / 45

16 怖いものなんてないもの

しおりを挟む
 私たちの旅は十日間の日程で2泊したあとに場所を移動し、また2泊ということを繰り返すことになっている。ジェイクたちには伝えているが、お客さんには行き先を知らせていないため、私たちがどこにいるかはレレール様やシャゼットにわかるはずもなかった。
 そんなこともあり、森林浴をしたり、フルーツ狩りをしたり、非日常を楽しんでリフレッシュすることができた。
 レレール様のことは連日新聞に載っており、彼女の行動や予定は筒抜けで、ありがたいことに場所が被ることはなかった。

「レレール様は本当に魔道具に興味があるのかしら?」

 宿に併設されている食堂で朝食をとっている時、エミーが首を傾げた。

「自分よりも話題にあがっているものが気に入らないの。魔道具に興味があるというよりかは、魔道具師に興味があるんだと思う」
「魔道具師に会ってどうするつもり? 目立たないようにしろとでも言うのかしら」
「推測でしかないけれど、自分のために魔道具を作れと言いそうね。いつかは、自分も作れるようになったと言うつもりかも」
「……どういうこと?」
「人の手柄を横取りするってこと」

 エミーは私の話を聞いて、心底嫌そうな顔をする。

「そんな悪いことを考える人がいるの?」
「あんたが知らないだけで存在するのは確かだよ」
 
 エミーに女将さんが苦笑しながら答えた。

 女将さんも仕事上色々な人と関わるので、騙す人や騙される人など、嫌な人間関係を目の当たりにしたり、話を聞いたりしたことがあるそうだ。

「聖女様と言われてるくらいなんだから、中身も伴っておいてほしいと思うのは勝手かしら」
「癒しの力というと、性格の清らかなイメージがあるものね」

 がっかりした様子のエミーに同意すると、女将さんがため息を吐く。

「実際、リリーから聞かなければ、聖女様の実体を知らなかった。あたしたちは聖女様と関わることがないからね。だけど、正体を知っているはずのエイフィック様までひっかかるんだから、彼女には魅了のような力もあるのかもしれないね」
「……どういうことですか?」

 意味がわからなくて聞いてみると、女将さんは小声で話す。

「純粋な心……というか、疑うことを知らない人間の心を操る力みたいなもんだよ。そんな嘘をつくはずがないと思い込むから、嘘にきづけない」
「エイフィック様やココナ様はその可能性がありますね」

 女将さんの言う通りなら、昔のエイフィック様のことを思い出せば納得できるものもある。ココナ様も大人しそうだし説明がつきそうだわ。
 元婚約者は……、きっと心が綺麗すぎてお馬鹿さんになっちゃったのね。

「魅了といっても強いものではないということですよね」
「そうだね。もしかするとコントロールしているのかもしれない」

 女将さんに言われて、レレール様の行動を思い出す。婚約を破棄されたあの時に魅了の力を発揮していたから、あれだけ多くの馬……ではなく、男性が求婚したのかもしれない。
 レレール様はちやほやされただけでなく、婚約を破棄されて悲しむ令嬢たちを見て、内心は優越感に浸っていたのかも。

「そうなると、ジェイク様は大丈夫なのかしら。あの方だって心は綺麗でしょう?」
「綺麗だけど、ジェイクは魅了をかけられる前にレレール様の本性を知ったから惑わされていないのかもしれない」
「今はコントロールしている状態なのよね? もし、魅了の力を強くしたらどうなるのかしら。多くの人が彼女に魅了されてしまうの?」

 心配そうな表情のエミーに、私は力強く答える。

「その可能性は高いけど、そんなことはさせないわ。私は色々な魔道具が作れるんだもの。レレール様の魔法に負けない魔道具を作ってみせるわ」

 魅了魔法は人の心を操ってしまうため、ミゼシュ王国では禁止されている。いくら、聖女であっても許されるはずかないから、使っているとするならば重罪に当たる。
 といっても、魔法は目に見えるものではない。証拠を出せと言われても状況証拠しかないから、現段階では彼女を捕まえられない。
 
「魅了魔法を使わせないようにしたらいいのよね」

 良い案が浮かんだ私は、家に帰ったら魔道具作りをすることに決めた。


******

 それから数日経ち、私たちは帰途についた。

 三日前、シャゼットが反省せず、張り紙が顔に張り付いたままになっていたせいで、彼女は新聞に載ることになった。
 それと同時に『ケッタイ』の名が全国に知らされて、かなりの有名店になってしまったらしい。
 休み明けはかなり忙しくなりそうだ。

 ちなみにシャゼットのほうは、端の部分だけぴったりと紙が顔にくっついているので、口の部分はまだしも、目の部分にハサミを使って穴を開けることは難しいはずだ。

 シャゼットは私の帰りを待つでしょうから、そのままの状態で話をしましょうか。
 もし、目の部分がくり抜かれて見れるようになっていてもそれはそれでかまわない。
 シャゼットが私をリリーノ認定したら、私はフェルスコット家を容赦なく潰すだけだ。

 居場所ができた私に、フェルスコット家に対して怖いものなんてないもの。

しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

(完結)夫と姉(継母の連れ子)に罪を着せられた侯爵令嬢の二度目の人生ー『復讐』よりも『長生き』したい!

青空一夏
恋愛
 私はカッシング侯爵家のアナスターシア。カッシング侯爵家の跡継ぎ娘であり、お母様の実家マッキンタイヤー公爵家の跡継ぎでもある立場なの。なんでって? 亡きお母様のお兄様(マッキンタイヤー公爵)が将軍職をまっとうするため、独身を貫いてきたからよ。ちなみにマッキンタイヤー公爵の初代はユーフェミア王女で聖女様でもあったのよ。私はその血も引いているわ。 お母様は私が5歳の頃に病で亡くなったわ。でも、まもなくお父様はサリナお母様と再婚したの。最初は嫌な気持ちがしたけれど、サリナお母様はとても優しかったからすぐに仲良くなれた。サリナお母様には娘がいて、私より年上だった。ローズリンお姉様のことよ。ローズリンお姉様も良い方で、私はとても幸せだった。 チェルシー王妃主催のお茶会で知り合ったハーランド第二王子殿下も優しくて、私を甘やかしてくれる味方なの。でも、お母様のお兄様であるマッキンタイヤー公爵は厳しくて、会うたびにお説教を言ってくるから嫌い。なるべく、伯父様(マッキンタイヤー公爵)に関わらないようにしていたいわ。そうすれば、私は幸せに気楽に生きることができる。ところが・・・・・・ この物語は夫となったハーランド第二王子の裏切りとローズリンの嘘で罪を着せられたアナスターシアが、毒杯を飲ませられるところで奇跡を起こし、二度目の人生をやり直すお話しです。アナスターシアが積極的に復讐していくお話ではなく、ハーランド第二王子やローズリンが自業自得で自滅していくお話しです。アナスターシアの恋もちりばめた恋愛小説になっています。 ※この物語は現実ではない異世界のお話しですから、歴史的や時代背景的におかしな部分が多々あると思いますので、ご了承ください。誤字・脱字多いかもしれませんが、脳内で変換していただけるか、教えていただけると嬉しいです💦 聖女や聖獣などのファンタジー要素あり。 ※完結保証。すでに執筆が終わっておりますので、途中で連載がとまることはありません。安心してお読みくださいませ。

妹が私の全てを奪いました。婚約者も家族も。でも、隣国の国王陛下が私を選んでくれました

放浪人
恋愛
侯爵令嬢イリスは美しく社交的な妹セレーナに全てを奪われて育った。 両親の愛情、社交界の評判、そして幼馴染であり婚約者だった公爵令息フレデリックまで。 妹の画策により婚約を破棄され絶望するイリスだが傷ついた心を抱えながらも自分を慕ってくれる使用人たちのために強く生きることを決意する。 そんな彼女の元に隣国の若き国王が訪れる。 彼はイリスの飾らない人柄と虐げられても折れない心に惹かれていく。 一方イリスを捨て妹を選んだフレデリックと全てを手に入れたと思った妹は国王に選ばれたイリスを見て初めて自らの過ちを後悔するがもう遅い。 これは妹と元婚約者への「ざまぁ」と新たな場所で真実の愛を見つける物語。

【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~

猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」 王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。 王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。 しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。 迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。 かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。 故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり── “冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。 皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。 冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」 一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。 追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、 ようやく正当に愛され、報われる物語。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

(完)お姉様、婚約者を取り替えて?ーあんなガリガリの幽霊みたいな男は嫌です(全10話)

青空一夏
恋愛
妹は人のものが常に羨ましく盗りたいタイプ。今回は婚約者で理由は、 「私の婚約者は幽霊みたいに青ざめた顔のガリガリのゾンビみたい! あんな人は嫌よ! いくら領地経営の手腕があって大金持ちでも絶対にいや!」 だそうだ。 一方、私の婚約者は大金持ちではないが、なかなかの美男子だった。 「あのガリガリゾンビよりお姉様の婚約者のほうが私にぴったりよ! 美男美女は大昔から皆に祝福されるのよ?」と言う妹。 両親は妹に甘く私に、 「お姉ちゃんなのだから、交換してあげなさい」と言った。 私の婚約者は「可愛い妹のほうが嬉しい」と言った。妹は私より綺麗で可愛い。 私は言われるまま妹の婚約者に嫁いだ。彼には秘密があって…… 魔法ありの世界で魔女様が最初だけ出演します。 ⸜🌻⸝‍姉の夫を羨ましがり、悪巧みをしかけようとする妹の自業自得を描いた物語。とことん、性格の悪い妹に胸くそ注意です。ざまぁ要素ありですが、残酷ではありません。 タグはあとから追加するかもしれません。

妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。 昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。 しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。 両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。 「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」 父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。 だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。

[完結]だってあなたが望んだことでしょう?

青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。 アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。 やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー

心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました

er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

処理中です...