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16 会いたくありません
「まさか、そんな事がある訳がないだろう」
私の立てた仮説を聞いた当主様は、最初は納得して下さらなかった。
それは当たり前の事だと思う。
だから、根気よく話を続けてみると、最終的には確認はしてみると言って下さった。
確認というのは、どんな風にするのかわからないけれど、当主様の事だから、上手くやって下さるだろう。
フランソワの行方に関しては、当主様にお任せする事にして、問題は私の聖女復帰についてだった。
個人的な理由で聖女に戻りたくないというのは良くない事だとわかっている。
聖女になった時に、力が失くなるまでは国民の為に働くと誓った様なものだから。
だけど、理不尽な理由で、私を王都から追放し、聖女の称号を奪ったのは国王陛下で、私を聖女に戻したいが為に、王太子殿下を使おうとしたりするのは違うと思う。
アンナと会えなくなったから、私を聖女に戻したいだけだろうから。
国王陛下が私を聖女に戻すために、フランソワを隠したのだとしたら?
だって、実際は北の辺境伯の結界を張ったのはフランソワだった。
素直に彼女が申し出ていれば、国王陛下はアンナの事で頭を悩ませる必要はなかったはず。
国王陛下の事だもの。
自分が悪かったのは棚に上げて、全てフランソワのせいにしようとしたのかもしれない。
だけど、国王陛下だけでは、フランソワを拉致するなんてできないはず。
という事は、やはり、フランソワが自分から身を隠した?
リュークが学校から帰ってきたと聞いたので、彼の部屋に行き、その話をすると、リュークは私の隣に座り、少しだけ考えてから口を開く。
「ミーファが言いたいのは、王太子殿下の件が駄目だった場合に、ミーファを聖女に戻す手段として、聖女様の欠員を出す為にフランソワ様を隠したかもしれない、と言いたいんだよな?」
「そう思ったんだけど、やっぱり違うかな?」
「でも、王太子殿下の話は昨日の話で、フランソワ様がいなくなったのは、それよりも少し前なんだろ?」
「そうだけど、関係があるかなって思ったの」
やっぱり違うのかな。
そこまで国王陛下だって馬鹿じゃないって事かしら。
陛下だって幼い頃から、王になる為の教育を受けられてきただろうし、自分の事ばかり考えていたら、廃位させられる恐れがある事だって知っているはず。
この国には、国王や王位継承権について、辺境伯以上の貴族の8割以上が同じ意見であれば介入が出来るようになっている。
だから、8割以上の貴族が同意すれば、国王陛下を廃位させ、新しい国王を即位させる事が出来る。
そして、王位継承権についても、第一王子である王太子よりも、第二王子以降の王子が優れているとみなされた場合、同じ様に8割以上の貴族の同意があれば、第一王子と第二王子以降の王子に王位継承順位を入れ替える事が出来る。
廃位させられた国王陛下は、今までの様な権利はなくなるし、退位した場合でも、発言権は弱くなり、前国王の場合だと亡くなるまで、城の敷地内から出ずに、隠居生活を送っていたらしい。
「絶対に関係がないとも言えないし、難しいところだな。父上も調べて下さるって?」
「ええ。信じてはもらえてなさそうだったけど」
「ただ、フランソワ様が国王陛下の命令で拉致、もしくは自ら姿を隠したとしても、今、フランソワ様はどうしているんだろうか?」
「それもそうよね。まさか、彼女の命の危険が迫ってるなんて事はないわよね」
「他の聖女様達も何も知らないんだろうか」
「一度、侍女達に探りをいれてもらうわ。だけど、彼女達も聖女達がおかしいと思っていたら、私に教えてくれるだろうし…」
そう言うと、リュークが少し考えてから聞いてくる。
「聖女様の侍女達の手紙も検閲がかかるんだろうか」
そう言われて思い出した。
城内からの手紙に関しては、守秘義務の関係もあるから手紙を送るだけでなく、外出も聖女抜きでは難しい。
欲しいものがあれば、それを買ってきてくれる人がいるから、欲しいものを紙に書いてお願いする様になっていて、自分で買い物にも行けない。
侍女達も私達と同じ様に家を出て王城に住んでいるから、手紙を出すのも同じで、家族宛の手紙でも大事な事を家族に漏らしていないか確認するため、手紙の内容を確認されてから封が閉じられる。
「そう言われてみればそうだわ。検閲がかかるから、直接的な事は書けないのかも」
「侍女達が王城から出る事は?」
「難しいわ。何ヶ月か前から申請がいるの」
「となると、こっちから出向かないといけない訳か…」
リュークがうーんと考え込む。
「どうかしたの?」
「直接会えたら、手紙では書けない話を聞けるかもしれないだろ? 今の状況だとフランソワ様が見つからない限り、ミーファは聖女に戻されてしまう訳だし」
結婚していようが妊娠中だろうが、病気だろうが、使える者は使えというのが陛下の考え方らしく、王妃様が亡くなるまでは、王妃様が陛下に意見して、聖女に休みを下さっていたらしい。
けれど、王妃様が亡くなってしまった今では、陛下を止められる人がいない。
陛下はアンナに会いたいが為に、どうにかして私を聖女に戻そうとするだろうから、その前にフランソワを見つけ出さないと。
まさか、誰かに殺されちゃってるなんて事はないわよね?
うん。
そんな物騒な事は考えない様にしよう。
「北の辺境伯が主催するパーティーがあるって言っていたよな?」
「あ、うん」
「それはもう終わったのかな?」
「わからない。時期は聞いてなかったわ。でも、だいぶ前だから、終わってるか、まだなら近々だと思うけど、どうして?」
「聖女様をたたえるパーティーというなら、聖女様達は来るよな? という事は侍女だって、少なくとも一人は付き添いで来るだろう?」
リュークの言いたい事がわかり、手を打ってから頷く。
「そうね。聖女の世話があるから絶対に誰かは来ると思う」
「そのパーティーがまだなら、俺が行くから、ミーファは侍女と連絡はとれるかな? 話をしたい、とか書くと検閲で怪しまれる可能性はあるし、普通に結婚の報告を俺からさせるという感じで…」
「それなら私も行くわ」
「君は待ってくれていればいい。君にしたら、何も楽しくないパーティーだろうし、君が来るなら、アンナを連れて来いと、国王陛下に言われる可能性がある」
リュークが困った顔をして言った。
そうだった。元々、あのパーティーにはアンナが誘われていたんだった。
パーティーに陛下からアンナが誘われていると言う話は、リュークにしたから、当たり前かもしれないけど、覚えてくれていたみたいだった。
「じゃあ、リューク、侍女にはそう伝えておくけれど、侍女と一緒に抜け出す事は出来ないかしら? どうせ、聖女達は北の辺境伯の家に泊まるだろうし、夜遅くまで遊ぶはずよ。その間の少しの時間だけ、外へ出てきてくれないかしら」
「ミーファ、一応、俺は新婚なんだよ。いくら、聖女様の侍女とはいえ連れ出すなんて出来ないだろ」
「世間の目があるって事ね? という事は、女性じゃないと駄目って事よね…。とにかく、パーティーがいつかわかるか、アンナに聞いてみるわ」
もう終わってしまっている話なら、こうやって頭を悩ませても意味がない。
だから、立ち上がって、早速、アンナの部屋に行ってみる事にした。
アンナに国王陛下から書かれていたパーティーの日付がいつだったか覚えているか聞いてみると、覚えていてくれていて、まだパーティーは終わっていない事がわかった。
だから、侍女への手紙に、近々、聖女の付き添いでパーティーに行く事はあるかと尋ねたら、北の辺境伯のパーティーに行く予定だと返ってきた。
普通なら、こんなスケジュールも教えてはいけないんだろうけど、辺境伯令息の妻であり、元聖女である私だから、検閲も通ったのかもしれない。
アンナは女性が必要だという話を聞いて、自分が行くと言い出したけれど、リュークが手を打ってくれていて、奥様がリュークのパートナーとして一緒に行ってくれる事になった。
元々、南の辺境伯であるスコッチ辺境伯夫妻にも北の辺境伯から招待状が届いていたらしいのだけど、仕事が忙しいからとお断りしていたらしい。
けれど、急遽、息子と行くと連絡して下さり、侍女にも「息子の嫁がどんな人か知りたい」という口実で連れ出して下さるとの事になった。
「ミーファは屋敷で大人しくしておいてちょうだい。何かあったら連絡するから」
「ですけど…」
「パーティーには国王陛下だけでなく、王太子殿下も出席される予定なのよ? あなたは王太子殿下に会いたい?」
「会いたくありません」
「なら、お留守番を頼んだわね」
結局、奥様に上手く言いくるめられ、私は大人しく、スコッチ邸で待つ事で話がついてしまった。
そして、五日後の現在、奥様とリュークは魔道具を使って、北の辺境伯主催のパーティーに出席している。
聖女時代に何回かパーティーに出た事があったけど、思い出してみたら、一緒に出席してくれたリュークが令嬢達からよく話しかけられていたのを思い出す。
今日は奥様がパートナーだから大丈夫よね?
既婚者であり、母親連れの男性に声を掛けたりしないわよね?
お留守番の私は、自分の部屋のベットに寝転んで、色々と考えてしまう。
こんな事、昔は考えなかったのに…。
私も恋しちゃってるって事なのかなあ?
いや、恋しちゃってるどころか結婚してるのか!
リュークは私と結婚した事、後悔していないといいな。
「ミーファ様、夕食のご準備が出来ました」
カーラが呼びに来てくれたので、やっぱり、食事は幸せな気持ちでしたいし、気持ちを切り替える事にした。
そして、夕食をいつもよりも少なめにして、アンナと当主様と一緒にダイニングルームで談笑していた時に、リュークが帰ってきたという知らせを聞いた。
リュークは正装したまま、ダイニングルームにやって来たのだけど、黒のタキシード姿で、いつもおろしている前髪を横に分けていて、雰囲気が全然違った。
大人っぽくなったリュークを見て、私の心臓がはねた。
「リューク!」
ドキドキする心臓をおさえながら、立ち上がって迎えると、リュークが言う。
「ミーファ、食事中に悪いけど、一緒に来てもらいたい」
「え? どういう事?」
そう言われてみれば、一緒に行かれたはずの奥様の姿が見えない。
心配になって聞いてみると、リュークが答える。
「フランソワ様が見つかった。ミーファと話をしたいって言ってるんだ」
「フランソワが?」
北の辺境伯のパーティーに行って、フランソワを見つけたという事は、フランソワが自分から逃げたの?
それとも、北の辺境伯が彼女を連れて行ったの!?
私の立てた仮説を聞いた当主様は、最初は納得して下さらなかった。
それは当たり前の事だと思う。
だから、根気よく話を続けてみると、最終的には確認はしてみると言って下さった。
確認というのは、どんな風にするのかわからないけれど、当主様の事だから、上手くやって下さるだろう。
フランソワの行方に関しては、当主様にお任せする事にして、問題は私の聖女復帰についてだった。
個人的な理由で聖女に戻りたくないというのは良くない事だとわかっている。
聖女になった時に、力が失くなるまでは国民の為に働くと誓った様なものだから。
だけど、理不尽な理由で、私を王都から追放し、聖女の称号を奪ったのは国王陛下で、私を聖女に戻したいが為に、王太子殿下を使おうとしたりするのは違うと思う。
アンナと会えなくなったから、私を聖女に戻したいだけだろうから。
国王陛下が私を聖女に戻すために、フランソワを隠したのだとしたら?
だって、実際は北の辺境伯の結界を張ったのはフランソワだった。
素直に彼女が申し出ていれば、国王陛下はアンナの事で頭を悩ませる必要はなかったはず。
国王陛下の事だもの。
自分が悪かったのは棚に上げて、全てフランソワのせいにしようとしたのかもしれない。
だけど、国王陛下だけでは、フランソワを拉致するなんてできないはず。
という事は、やはり、フランソワが自分から身を隠した?
リュークが学校から帰ってきたと聞いたので、彼の部屋に行き、その話をすると、リュークは私の隣に座り、少しだけ考えてから口を開く。
「ミーファが言いたいのは、王太子殿下の件が駄目だった場合に、ミーファを聖女に戻す手段として、聖女様の欠員を出す為にフランソワ様を隠したかもしれない、と言いたいんだよな?」
「そう思ったんだけど、やっぱり違うかな?」
「でも、王太子殿下の話は昨日の話で、フランソワ様がいなくなったのは、それよりも少し前なんだろ?」
「そうだけど、関係があるかなって思ったの」
やっぱり違うのかな。
そこまで国王陛下だって馬鹿じゃないって事かしら。
陛下だって幼い頃から、王になる為の教育を受けられてきただろうし、自分の事ばかり考えていたら、廃位させられる恐れがある事だって知っているはず。
この国には、国王や王位継承権について、辺境伯以上の貴族の8割以上が同じ意見であれば介入が出来るようになっている。
だから、8割以上の貴族が同意すれば、国王陛下を廃位させ、新しい国王を即位させる事が出来る。
そして、王位継承権についても、第一王子である王太子よりも、第二王子以降の王子が優れているとみなされた場合、同じ様に8割以上の貴族の同意があれば、第一王子と第二王子以降の王子に王位継承順位を入れ替える事が出来る。
廃位させられた国王陛下は、今までの様な権利はなくなるし、退位した場合でも、発言権は弱くなり、前国王の場合だと亡くなるまで、城の敷地内から出ずに、隠居生活を送っていたらしい。
「絶対に関係がないとも言えないし、難しいところだな。父上も調べて下さるって?」
「ええ。信じてはもらえてなさそうだったけど」
「ただ、フランソワ様が国王陛下の命令で拉致、もしくは自ら姿を隠したとしても、今、フランソワ様はどうしているんだろうか?」
「それもそうよね。まさか、彼女の命の危険が迫ってるなんて事はないわよね」
「他の聖女様達も何も知らないんだろうか」
「一度、侍女達に探りをいれてもらうわ。だけど、彼女達も聖女達がおかしいと思っていたら、私に教えてくれるだろうし…」
そう言うと、リュークが少し考えてから聞いてくる。
「聖女様の侍女達の手紙も検閲がかかるんだろうか」
そう言われて思い出した。
城内からの手紙に関しては、守秘義務の関係もあるから手紙を送るだけでなく、外出も聖女抜きでは難しい。
欲しいものがあれば、それを買ってきてくれる人がいるから、欲しいものを紙に書いてお願いする様になっていて、自分で買い物にも行けない。
侍女達も私達と同じ様に家を出て王城に住んでいるから、手紙を出すのも同じで、家族宛の手紙でも大事な事を家族に漏らしていないか確認するため、手紙の内容を確認されてから封が閉じられる。
「そう言われてみればそうだわ。検閲がかかるから、直接的な事は書けないのかも」
「侍女達が王城から出る事は?」
「難しいわ。何ヶ月か前から申請がいるの」
「となると、こっちから出向かないといけない訳か…」
リュークがうーんと考え込む。
「どうかしたの?」
「直接会えたら、手紙では書けない話を聞けるかもしれないだろ? 今の状況だとフランソワ様が見つからない限り、ミーファは聖女に戻されてしまう訳だし」
結婚していようが妊娠中だろうが、病気だろうが、使える者は使えというのが陛下の考え方らしく、王妃様が亡くなるまでは、王妃様が陛下に意見して、聖女に休みを下さっていたらしい。
けれど、王妃様が亡くなってしまった今では、陛下を止められる人がいない。
陛下はアンナに会いたいが為に、どうにかして私を聖女に戻そうとするだろうから、その前にフランソワを見つけ出さないと。
まさか、誰かに殺されちゃってるなんて事はないわよね?
うん。
そんな物騒な事は考えない様にしよう。
「北の辺境伯が主催するパーティーがあるって言っていたよな?」
「あ、うん」
「それはもう終わったのかな?」
「わからない。時期は聞いてなかったわ。でも、だいぶ前だから、終わってるか、まだなら近々だと思うけど、どうして?」
「聖女様をたたえるパーティーというなら、聖女様達は来るよな? という事は侍女だって、少なくとも一人は付き添いで来るだろう?」
リュークの言いたい事がわかり、手を打ってから頷く。
「そうね。聖女の世話があるから絶対に誰かは来ると思う」
「そのパーティーがまだなら、俺が行くから、ミーファは侍女と連絡はとれるかな? 話をしたい、とか書くと検閲で怪しまれる可能性はあるし、普通に結婚の報告を俺からさせるという感じで…」
「それなら私も行くわ」
「君は待ってくれていればいい。君にしたら、何も楽しくないパーティーだろうし、君が来るなら、アンナを連れて来いと、国王陛下に言われる可能性がある」
リュークが困った顔をして言った。
そうだった。元々、あのパーティーにはアンナが誘われていたんだった。
パーティーに陛下からアンナが誘われていると言う話は、リュークにしたから、当たり前かもしれないけど、覚えてくれていたみたいだった。
「じゃあ、リューク、侍女にはそう伝えておくけれど、侍女と一緒に抜け出す事は出来ないかしら? どうせ、聖女達は北の辺境伯の家に泊まるだろうし、夜遅くまで遊ぶはずよ。その間の少しの時間だけ、外へ出てきてくれないかしら」
「ミーファ、一応、俺は新婚なんだよ。いくら、聖女様の侍女とはいえ連れ出すなんて出来ないだろ」
「世間の目があるって事ね? という事は、女性じゃないと駄目って事よね…。とにかく、パーティーがいつかわかるか、アンナに聞いてみるわ」
もう終わってしまっている話なら、こうやって頭を悩ませても意味がない。
だから、立ち上がって、早速、アンナの部屋に行ってみる事にした。
アンナに国王陛下から書かれていたパーティーの日付がいつだったか覚えているか聞いてみると、覚えていてくれていて、まだパーティーは終わっていない事がわかった。
だから、侍女への手紙に、近々、聖女の付き添いでパーティーに行く事はあるかと尋ねたら、北の辺境伯のパーティーに行く予定だと返ってきた。
普通なら、こんなスケジュールも教えてはいけないんだろうけど、辺境伯令息の妻であり、元聖女である私だから、検閲も通ったのかもしれない。
アンナは女性が必要だという話を聞いて、自分が行くと言い出したけれど、リュークが手を打ってくれていて、奥様がリュークのパートナーとして一緒に行ってくれる事になった。
元々、南の辺境伯であるスコッチ辺境伯夫妻にも北の辺境伯から招待状が届いていたらしいのだけど、仕事が忙しいからとお断りしていたらしい。
けれど、急遽、息子と行くと連絡して下さり、侍女にも「息子の嫁がどんな人か知りたい」という口実で連れ出して下さるとの事になった。
「ミーファは屋敷で大人しくしておいてちょうだい。何かあったら連絡するから」
「ですけど…」
「パーティーには国王陛下だけでなく、王太子殿下も出席される予定なのよ? あなたは王太子殿下に会いたい?」
「会いたくありません」
「なら、お留守番を頼んだわね」
結局、奥様に上手く言いくるめられ、私は大人しく、スコッチ邸で待つ事で話がついてしまった。
そして、五日後の現在、奥様とリュークは魔道具を使って、北の辺境伯主催のパーティーに出席している。
聖女時代に何回かパーティーに出た事があったけど、思い出してみたら、一緒に出席してくれたリュークが令嬢達からよく話しかけられていたのを思い出す。
今日は奥様がパートナーだから大丈夫よね?
既婚者であり、母親連れの男性に声を掛けたりしないわよね?
お留守番の私は、自分の部屋のベットに寝転んで、色々と考えてしまう。
こんな事、昔は考えなかったのに…。
私も恋しちゃってるって事なのかなあ?
いや、恋しちゃってるどころか結婚してるのか!
リュークは私と結婚した事、後悔していないといいな。
「ミーファ様、夕食のご準備が出来ました」
カーラが呼びに来てくれたので、やっぱり、食事は幸せな気持ちでしたいし、気持ちを切り替える事にした。
そして、夕食をいつもよりも少なめにして、アンナと当主様と一緒にダイニングルームで談笑していた時に、リュークが帰ってきたという知らせを聞いた。
リュークは正装したまま、ダイニングルームにやって来たのだけど、黒のタキシード姿で、いつもおろしている前髪を横に分けていて、雰囲気が全然違った。
大人っぽくなったリュークを見て、私の心臓がはねた。
「リューク!」
ドキドキする心臓をおさえながら、立ち上がって迎えると、リュークが言う。
「ミーファ、食事中に悪いけど、一緒に来てもらいたい」
「え? どういう事?」
そう言われてみれば、一緒に行かれたはずの奥様の姿が見えない。
心配になって聞いてみると、リュークが答える。
「フランソワ様が見つかった。ミーファと話をしたいって言ってるんだ」
「フランソワが?」
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それとも、北の辺境伯が彼女を連れて行ったの!?
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