婚約解消は諦めましたが、平穏な生活を諦めるつもりはありません!

風見ゆうみ

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17 口を割ったようなものですね

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 ラルフ様は部屋に戻って自分の仕事をされる事になり、1時間ほどで区切りがついたのか、私の部屋に誘いに来て下さいました。

「そろそろ行こうか。部屋の中で暴れ出しかねないようだからな」
「お部屋のものを壊されては困りますものね」

 2人で応接間に向かい、呼び出されたのは私ですから、私が先に入る事にします。

「遅い!」

 扉を開けてすぐに、ランドン辺境伯の怒声が飛んできました。
 ソファーに座っておられましたが、立ち上がって私に近付いてこようとされます。
 ですが、私の後から入ってきたラルフ様を見て、すぐに足を止められました。

「悪いな。俺がリノアを引き止めていた」
「そ、それならそうと一報を入れるべきだろう! 本当に常識がない!」
「俺が連絡を入れなくて良いと言ったんだ。常識がなくて悪かったな。ただ、何の連絡もなしに人の家を訪ねてくるのもどうかと思うがな」
「そ、それはブルーミング伯爵令嬢が悪いだろう!」

 ランドン辺境伯はラルフ様にはたじたじですが、私にはとても強気です。
 憤った様子で私を指差して続けます。

「君がパメルにした事を聞いたぞ!」
「私が何をしたんです?」

 ソファーには座らず、立ったまま聞くと、ランドン辺境伯は言います。

「お茶を自らかぶっておいて、パメルがかけたというように見せかけたらしいな」
「はい?」
「とぼけるな! 君はパメルをいじめていたんだろう!」
「トーディ男爵令嬢がそう言っておられたんですか?」
「そ、それは、違うが」

 視線を彷徨わせるランドン辺境伯に、ラルフ様が言います。

「なんの根拠もなしか。それにパメルじゃないなら誰から聞いた」
「そ、それは…。見た人がいるんだ」
「誰か言ってみろ。俺から確認する」
「それは…」

 なんとなく誰だかわかるような気がしました。

「ラルフ様」

 ラルフ様の袖を軽く引っ張って、こちらに顔を向けてもらうと、彼もわかっていたようで苦笑してから頷いてくれました。

「わかっている。パメルでもトーディ男爵でもないなら、母だな」
「ち、違う! よくも自分の母親を疑えるものだな! 家族なんだろう!?」
「家族だとは思っていた。今まで俺が知らない所で何かやっていると知るまではな」
「自分の家族の悪事に目をつぶるように、今回も婚約者だからといって悪事に目をつぶるのか!?」
「目をつぶっていたつもりはない。言い訳にしかすぎないが、周りは俺に家族の情報をわざと伝えなかったし、家族も俺の前では過保護なくらいで大して何もなかった。まあ、俺が無関心だったというのもあるがな」

 ラルフ様は後悔されているのか、顔を下に向けられた後、すぐに上げられて、ランドン辺境伯を見据えて言います。

「過去には戻れない。だから、俺は今からできる事をやるつもりだ」
「なら、お前の婚約者の悪事に対して罰を与える事だな」
「まず聞こう。リノアがパメルをいじめていると言ったが、具体的にどんな事をしていたか教えてくれ」
「わかるだろう! 自分でお茶をかぶっておいてパメルのせいにしたり」

 ランドン辺境伯の言い分について、さすがに黙っていられず、口を挟む。

「そんな事はしておりません。私が彼女の気に障る発言をしてしまった事は確かです。ですが、お茶を自らかぶるような事はしておりません。証人にはならないと言われそうですが、私の執事は、パメル様が私にお茶をかける場面を目撃しております」
「身内の証言なんて当てにならない!」
「そういうと思われました。話題を戻しますけれど、ランドン辺境伯様は、私がトーディ男爵令嬢をいじめているという話をどなたからお聞きになったんです? ぜひ、私はその方にお会いして、私がどんな事をしたのかを直接、お聞きしたいものなのですが」
「そんな事はどうでもいい! パメルに謝れ!」

 ランドン辺境伯は分が悪いと感じたのか、私の問いかけには答えずに、そう叫ばれました。
 この感じですと、パメル様がカーミラ様に泣きつき、カーミラ様がランドン辺境伯を焚き付けたといった感じでしょうか。
 カーミラ様は私と直接対決が出来ないからか、裏で色々とやってこられるので面倒といえば面倒です。

「ランドン」
「なんだ」
「最近、母が誰かと手紙のやり取りをしているようでな。魔法で送っているから、後を追う事は出来ないが、疑わしき人物の家に届いたかどうかの確認くらいは、その人物の家を見張っていればわかる」

 ラルフ様の言葉を聞いて、ランドン辺境伯はびくりと身体を震わせました。
 やましい事があると、自ら言っているようなものです。

「お前も誰かとやり取りをしているな。誰としている」
「パ、パメルだ! パメルと文通を!」

 ランドン辺境伯は震えた声で言われましたが、そんなもの、パメル様に確認してみれば、すぐにわかる事です。
 パメル様はあんなにもランドン辺境伯を嫌っている様子ですし、文通なんてするわけがないでしょう。
 ですから「ランドン辺境伯と文通をしておられるのですね」なんてパメル様に言おうものなら、簡単に怒って否定してくださるでしょう。

「では、トーディ男爵令嬢に確認する事にいたします。手紙では時間がかかりますから、転移の魔道具を使ってどなたか騎士様にトーディ男爵令嬢のお屋敷に行ってもらう事は出来ますか?」
「わかった」
 
 私のお願いにラルフ様が頷くと、ランドン辺境伯は黙り込み、挙動不審になってしまわれました。
 これはもう口を割ったようなものですね。
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