婚約解消は諦めましたが、平穏な生活を諦めるつもりはありません!

風見ゆうみ

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多々ある中の1つのお話 4

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 ラルフ様にお願いして、最近ではなく、5年から2年前くらいの間に、ランドン辺境伯とフレイ様の接点を確認してもらうと、ラルフ様達のお姉さまである、ミラルル様の関係で何度か別邸にランドン辺境伯がいらっしゃっている事がわかりました。
 そして、ランドン辺境伯がフレイ様にした事もわかったのです。
 純情なフレイ様に女性の味を覚えさせるという最低な行為でした。
 最初のお相手はあのメイド達で、自分達からその役目を買って出たとの事ですが、ランドン辺境伯がお金を払ったんだそうです。
 
「リノアさん、リノアさん」

 庭園のベンチでラルフ様から聞いたお話を思い出していると、おーいと声をかけられたので、考え事を止めて、慌てて顔を上げると、そこには白の半袖シャツに茶色のパンツというラフな格好をしたフレイ様がいらっしゃいました。

「庭に出られるようになられたのですね」
「寝ていてもしょうがないし、俺はまだ若いからね。で、リノアさんは何をしてたの?」
「色々と考えておりました」
「ふぅん」

 フレイ様は気のない声を上げたあと、私の隣に断りもなく座ると続けます。

「俺、そろそろ記憶を戻してもらおうと思うんだ」
「…え?」
「記憶を消されてから、2週間もたってないけど、今の俺なら受け入れられるかなって」
「そんな簡単に受け止められるような過去だとは思えませんが」
「なんで、リノアさんが言うんだよ。俺の過去だぞ」
「何をされたか知っているから言うのです」

 軽く睨んでから言うと、フレイ様は困ったような顔をして言います。

「じゃあ、いつになったら思い出して、その責任とやらをとればいいんだ?」
「責任を取るおつもりなのですか?」
「俺が何をしたかわからないけど、悪いことをしたのは確かなんだろ? なら、罰を受けないといけないなら罰を受けるし、俺がやらないといけない事をするつもりだ」

 私の隣でそう話すフレイ様は、私の知っているフレイ様とは本当に違います。
 記憶が戻っても、私とこんな風に過ごした記憶は残るそうですが、フレイ様は私に同じ言葉を言ってくださるでしょうか。

「そんな風に言われるのを聞くと、フレイ様はラルフ様のご兄弟なんだなって思うのです。以前は全く思いませんでしたのに」
「なんだよ、そんなに俺はひどかったのか?」
「はい。記憶が戻られた時に、実感していただけたら良いと思います。そして、記憶が戻っても、今のフレイ様でいていただきたいです」
「絶対とは言えないけれど、そうなる様に努力はするよ。だから、リノアさんも信じておいてくれ」

 悲しそうに笑うフレイ様に、私は大きく頷いた。



 そして、それから数日後。

 アンジェ様が魔法を解除し、フレイ様の記憶は戻されました。

「フレイ」 

 部屋のベッドで眠らされていたフレイ様は、ラルフ様の声に反応して、ゆっくりと目を開けられました。

「ラルフ兄さん」

 フレイ様はゆっくりと身体を起こされます。

「フレイ、気分はどうだ?」
「最悪な気分ですよ」 

 吐き捨てる様に答えたあと、フレイ様は扉付近で固まっていた私を見るなり、表情を歪められました。

「お前はっ! ああ、なんで!」
「フレイ様、信じろと言ったのはあなたです!」
「あああっ」

 私の言葉を聞いたフレイ様は頭を抱え、絶叫しはじめたのです。
 
「リノア、君は部屋から出ていてくれ。ソラ、リノアを連れて行くんだ」
「承知しました」

 ソラに半ば引きずられる様に部屋を出る事になった私は、扉を閉められる前に叫びました。

「信じていますからね!」

 無理かもしれません。
 駄目かもしれません。

 けれど、信じると約束したのです。
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