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26 元婚約者の妹の願いは叶わない ①
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ガンチャは目を覚ますと、アルフから無抵抗のまま暴力をふるわれたと騎士に訴えた。短剣を所持していたことや、守衛の証言もあり、信じてもらえなかっただけでなく、私を脅迫しようとした罪で捕まった。
辺境伯が逮捕されることなんて、あってはならないことだ。すぐにその噂は広まり、社交界でのガンチャの評判は地に落ちた。
アルフが彼のお父様に話をしてくれたおかげで、公爵家が動いたということは、爵位の剥奪もありえると噂され、彼と懇意にしていた人たちも少しずつ離れていった。
ガンチャはこんなことになったのは、アルフのせいだと逆恨みし、レイネ様の接近禁止命令が出たのも、いつしか、アルフのせいだと思うようになった。
そして、私のことをアルフに騙された可哀想な女だと考え、まだ取り戻せると思い込んだ。だが、騎士隊から私への接近禁止命令が出たせいで、彼は私に近づけない。そのため彼の代わりに先代のウロイカ辺境伯夫人とロビンが私を訪ねてくるようになった。
私はもちろん会う気はないから、門前払いさせていただいた。ロビンたちはさすがにガンチャのように無理やり私に会おうとしようとはせず「仲直りしたい」「困っていることはないか」など私を心配している素振りを見せていたそうだ。
そんな日が続いていたある日のこと。いつもならば二人で来ていたのに、その日はロビン一人だった。
先代の辺境伯のことで話があるとロビンが言っていると伝えられた私は、どんな話か伝言してほしいとお願いしたが、やはり、直接会って話したいと言われてしまった。
何か狙いがあるのだろうと思う気持ちと、何を話そうとしているのか気になるという気持ちがせめぎ合った。先代のウロイカ辺境伯の情報を手に入れることができないまま、裁判の日が近づいてきていたため、私は焦っていた。
お父様に相談したところ、お父様とアルフも同席が可能なら、話を聞いてみても良いと言われ、ロビンもその条件を受け入れた。
応接室に通され、私たちが来るのを待っていたロビンは、別人かと思うくらいに肌艶は悪く、華やかさが一切なくなり、疲れ切った様子だった。髪もボサボサで、ドレスも何日も同じものを着ているのか、オレンジ色のドレスの裾が土で汚れている。
私が口を開く前に、ロビンは私たちにカーテシーをすると、目の前に置かれているお茶とお茶菓子を指さす。
「いただいてもいいでしょうか」
「もちろんよ」
許可を出した途端、ロビンは大皿に盛られていたクッキーを手に取ると、すごい勢いで食べ始めた。
私たちが呆気にとられていると、彼女は口に入れたクッキーを飲み込んで口を開く。
「お父様の件について正直に話します。そのかわり、私を助けてほしいのです」
「助ける?」
「はい。ずっと誰かに話したかったんです。でも、お母様とお兄様が怖くて……」
ロビンは目に涙を浮かべて私を見つめる。
ガンチャのせいでウロイカ辺境伯家の生活は一気に厳しくなっている。危機感を感じた彼女は兄と母親を売り、自分だけでも助かろうと考えたみたいね。
「どう助けてほしいの?」
「何の罪にも問われず、貴族に嫁がせてほしいんです。約束してくださるならば、あなたが欲しがっている情報を伝えるわ」
「とにかく話を聞かせてちょうだい」
私がロビンの向かい側に座ると、お父様とアルフは私の左右に腰掛けた。
それを合図に、ロビンはクッキーを食べながら話し始めたのだった。
辺境伯が逮捕されることなんて、あってはならないことだ。すぐにその噂は広まり、社交界でのガンチャの評判は地に落ちた。
アルフが彼のお父様に話をしてくれたおかげで、公爵家が動いたということは、爵位の剥奪もありえると噂され、彼と懇意にしていた人たちも少しずつ離れていった。
ガンチャはこんなことになったのは、アルフのせいだと逆恨みし、レイネ様の接近禁止命令が出たのも、いつしか、アルフのせいだと思うようになった。
そして、私のことをアルフに騙された可哀想な女だと考え、まだ取り戻せると思い込んだ。だが、騎士隊から私への接近禁止命令が出たせいで、彼は私に近づけない。そのため彼の代わりに先代のウロイカ辺境伯夫人とロビンが私を訪ねてくるようになった。
私はもちろん会う気はないから、門前払いさせていただいた。ロビンたちはさすがにガンチャのように無理やり私に会おうとしようとはせず「仲直りしたい」「困っていることはないか」など私を心配している素振りを見せていたそうだ。
そんな日が続いていたある日のこと。いつもならば二人で来ていたのに、その日はロビン一人だった。
先代の辺境伯のことで話があるとロビンが言っていると伝えられた私は、どんな話か伝言してほしいとお願いしたが、やはり、直接会って話したいと言われてしまった。
何か狙いがあるのだろうと思う気持ちと、何を話そうとしているのか気になるという気持ちがせめぎ合った。先代のウロイカ辺境伯の情報を手に入れることができないまま、裁判の日が近づいてきていたため、私は焦っていた。
お父様に相談したところ、お父様とアルフも同席が可能なら、話を聞いてみても良いと言われ、ロビンもその条件を受け入れた。
応接室に通され、私たちが来るのを待っていたロビンは、別人かと思うくらいに肌艶は悪く、華やかさが一切なくなり、疲れ切った様子だった。髪もボサボサで、ドレスも何日も同じものを着ているのか、オレンジ色のドレスの裾が土で汚れている。
私が口を開く前に、ロビンは私たちにカーテシーをすると、目の前に置かれているお茶とお茶菓子を指さす。
「いただいてもいいでしょうか」
「もちろんよ」
許可を出した途端、ロビンは大皿に盛られていたクッキーを手に取ると、すごい勢いで食べ始めた。
私たちが呆気にとられていると、彼女は口に入れたクッキーを飲み込んで口を開く。
「お父様の件について正直に話します。そのかわり、私を助けてほしいのです」
「助ける?」
「はい。ずっと誰かに話したかったんです。でも、お母様とお兄様が怖くて……」
ロビンは目に涙を浮かべて私を見つめる。
ガンチャのせいでウロイカ辺境伯家の生活は一気に厳しくなっている。危機感を感じた彼女は兄と母親を売り、自分だけでも助かろうと考えたみたいね。
「どう助けてほしいの?」
「何の罪にも問われず、貴族に嫁がせてほしいんです。約束してくださるならば、あなたが欲しがっている情報を伝えるわ」
「とにかく話を聞かせてちょうだい」
私がロビンの向かい側に座ると、お父様とアルフは私の左右に腰掛けた。
それを合図に、ロビンはクッキーを食べながら話し始めたのだった。
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