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29 元夫が見たくないもの
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レイロは恐ろしい発言をしたというのに、笑みは絶やさない。脱走したことは、まだ上官にはバレていないみたいね。私を殺せば脱走を誤魔化せるとでも思ってるのかしら。
誰か見ていたらわかることなのに、魔物との戦闘で曖昧になると思っているんだろうか。
……それだけじゃないか。
口封じをするというよりも、エルが私を諦めざるを得ないように、私を殺そうとしてるのね。レイロにとっては自分が捕まっても私を殺すことのほうが大事なのか。
「馬鹿じゃないの」
吐き捨てるように言うと、躊躇うことなく無詠唱で、レイロの両足の甲を氷の矢で突き刺した。
「ぐあぁっ!」
「レイロ!」
お姉様が悲鳴を上げるレイロを抱きしめて叫ぶ。
「アイミー! なんてことをするのよ! ああ、可哀想なレイロ!」
「可哀想なのはお姉様の思考だわ。そんな人のどこが良いんです?」
「あなただって好きだったくせに!」
「仮面を被ったレイロが好きだったんです。本性を知った今は愛情なんてありません」
「あなたは悪魔だわ!」
「あなたに悪魔だと言われても、どうってことないです」
お姉様には回復魔法をかける魔力ももう残っていない。だから、悪魔だと言ったんでしょうね。
……と、これだけ騒いでいたら人も集まるわよね。気配を消してくれているから、レイロやお姉様はまだ気づいていない。
「ねえ、レイロ、まだ私を殺せると思ってる?」
わざと大きな声で尋ねると、レイロは座り込んだまま叫ぶ。
「正々堂々と勝負しろ! 魔法は使うな!」
「何をワガママなことを言ってるのよ。まあ、いいわ。剣で勝負しましょう」
氷の魔法を解除し、レイロの足に遠隔で回復魔法をかけると、レイロは勢いよく立ち上がり腰の剣を抜いた。
「剣も持っていないのに勝負だなんて、本当にお前は馬鹿だな」
「気遣ってくれてありがとう」
「大人しく言うことを聞いていれば死なずに済んだのに!」
「悪いけど死なないわ」
答えた瞬間、レイロが私に斬りかかってきた。シルバートレイでレイロの剣を受け止め、押しやって距離を取る。
ポーチから剣を取り出し、再度、斬りかかってきたレイロを躱し、柄で横腹を突いた。
横腹を押さえ、体を折り曲げた彼の後ろにまわり、尻に前蹴りを入れた。
急所が一番良かったんでしょうけど、残念ながら足を閉じていたので尻にした。
「くっ!」
横腹を押さえたまま、たたらを踏んだレイロは私を睨みつけたが、すぐに情けない表情になった。それと同時に私はシルバートレイと剣をマジックポーチに戻した。
「……どうして」
動きを止めた理由は、彼の背後からエルが仲間たちと一緒にやって来ていたからだ。
「あんたは人として終わってるよ」
私たち人間の血とは違い、魔物の血は青い。
魔物の返り血を浴びて、全身が真っ青になっているエルの目は、見つめるだけで相手を射殺せてしまいそうなほど鋭かった。
「エルファス! 助けてくれ! 俺はエイミーに拉致されたんだ! しかも、アイミーには殺されそうになったんだよ!」
レイロは往生際が悪かった。
エルたちが近づいてきていることに気が付いた私は、レイロが襲いかかってくるように挑発した。怒っているレイロの動きはわかりやすく、先が読めた。
力では敵わないけれど、それ以外なら勝てる自信があったからやったことであり、私にとってはそこまで無謀な行為ではない。
「エイミーに拉致されたっていうのは、目の前で見たから嘘ではないことはわかる」
エルは鼻で笑うと、私に近づいて話しかけてきた。
「大丈夫か?」
「私は大丈夫だけど、あなたたちは? みんな大丈夫だった?」
「怪我をしてる奴らがいる」
「なら、回復魔法をかけにいくわ。ここを任せても良い?」
「ああ」
レイロのことだから、またウダウダ言うのだろうと思ってお願いすると、エルは頷いてくれた。
任せる前に大丈夫だと言っていたけど、念の為にエルの体に回復魔法をかける。
すると、エルが驚いた顔をして私を見つめた。
やっぱり怪我をしていたのね。痛みがなくなったから驚いたんだわ。自分でも回復魔法を少しはかけられるはずなのに、それよりも攻撃魔法に魔力を使ったみたい。
青く染まっている彼の顔をハンカチで拭いて頬をつねる。
「どうして嘘をつくのよ。嘘つきはレイロとお姉様だけで十分だわ」
「……ごめん」
「おい、何をイチャイチャしてるんだよ!」
レイロが顔を歪めて叫んだ。
別にイチャイチャしてるつもりはない。昔からこんな感じだった。レイロはこんな光景を見るのが嫌で、大して好きでもない私と結婚したのね。
近寄ってこようとしたレイロを、エルと一緒に来ていた仲間たちが取り押さえる。
「あんたは俺たちが相手になるよ」
「エルファス隊長、アイミー様を怪我人の所へ連れて行ってください!」
そう言う彼らも青い血まみれだし、ところどころ赤い血も見える。
そうだわ。光の魔法が広範囲に放てたのなら、回復魔法もできるんじゃないかしら。
まずは、近くにいる仲間たちに回復魔法をかけた。十数人単位なら、今までもできていたから、魔力の心配はない。
次に広範囲を試してみる。
「エル、怪我人が集められているのはどのあたり?」
「たぶん、あのテントを中心にその周辺かな」
「わかった」
意識を集中させて、エルから教えてもらったテントとその周辺に遠隔で回復魔法をかける。
すると、宿営地のほうから驚きの声が上がり始め、それはいつしか歓喜の声に変わった。
「……上手くいったみたいね」
お姉様の魔力を奪ったとはいえ限界がある。ゼロに近くなっているのか、立っているのも辛くなってきた。
「アイミー、大丈夫か!?」
「大丈夫よ、ありがとう」
気が抜けたせいもあり、エルがふらついた私の体を支えた瞬間、仲間に引きずられるようにして歩き出したレイロが叫ぶ。
「エルファス! アイミーは俺を殺そうとしたんだぞ! そんな女を助けるなよ!」
「どうせあんたがアイミーを脅すような真似をしたんだろ」
「ち、違う! 正当防衛だ!」
「はいはい、うるさい」
エルが答える前に仲間がレイロの頭を殴って黙らせた。エルはレイロを仲間に任せ、彼の体にもたれている私に話しかけてくる。
「どうして無理するんだよ」
「あと1分早ければ助かったなんてことにしたくないのよ」
「気持ちはわかるけど」
「エルファス! エルファス!」
「うるせぇな。場所を移動するぞ」
名を呼ぶレイロが鬱陶しかったのか、エルが私を横抱きした。
「ひえっ!」
「なんて声出してんだ」
「だ……、だって!」
お姫様抱っこなんて、子供の頃にお父様にしてもらったぐらいなんだもの!
「やめろ! エルファス! そんなことをするな、エルファス!」
レイロは仲間たちに引きずられていく間、ずっとエルの名前を呼び続けていた。
誰か見ていたらわかることなのに、魔物との戦闘で曖昧になると思っているんだろうか。
……それだけじゃないか。
口封じをするというよりも、エルが私を諦めざるを得ないように、私を殺そうとしてるのね。レイロにとっては自分が捕まっても私を殺すことのほうが大事なのか。
「馬鹿じゃないの」
吐き捨てるように言うと、躊躇うことなく無詠唱で、レイロの両足の甲を氷の矢で突き刺した。
「ぐあぁっ!」
「レイロ!」
お姉様が悲鳴を上げるレイロを抱きしめて叫ぶ。
「アイミー! なんてことをするのよ! ああ、可哀想なレイロ!」
「可哀想なのはお姉様の思考だわ。そんな人のどこが良いんです?」
「あなただって好きだったくせに!」
「仮面を被ったレイロが好きだったんです。本性を知った今は愛情なんてありません」
「あなたは悪魔だわ!」
「あなたに悪魔だと言われても、どうってことないです」
お姉様には回復魔法をかける魔力ももう残っていない。だから、悪魔だと言ったんでしょうね。
……と、これだけ騒いでいたら人も集まるわよね。気配を消してくれているから、レイロやお姉様はまだ気づいていない。
「ねえ、レイロ、まだ私を殺せると思ってる?」
わざと大きな声で尋ねると、レイロは座り込んだまま叫ぶ。
「正々堂々と勝負しろ! 魔法は使うな!」
「何をワガママなことを言ってるのよ。まあ、いいわ。剣で勝負しましょう」
氷の魔法を解除し、レイロの足に遠隔で回復魔法をかけると、レイロは勢いよく立ち上がり腰の剣を抜いた。
「剣も持っていないのに勝負だなんて、本当にお前は馬鹿だな」
「気遣ってくれてありがとう」
「大人しく言うことを聞いていれば死なずに済んだのに!」
「悪いけど死なないわ」
答えた瞬間、レイロが私に斬りかかってきた。シルバートレイでレイロの剣を受け止め、押しやって距離を取る。
ポーチから剣を取り出し、再度、斬りかかってきたレイロを躱し、柄で横腹を突いた。
横腹を押さえ、体を折り曲げた彼の後ろにまわり、尻に前蹴りを入れた。
急所が一番良かったんでしょうけど、残念ながら足を閉じていたので尻にした。
「くっ!」
横腹を押さえたまま、たたらを踏んだレイロは私を睨みつけたが、すぐに情けない表情になった。それと同時に私はシルバートレイと剣をマジックポーチに戻した。
「……どうして」
動きを止めた理由は、彼の背後からエルが仲間たちと一緒にやって来ていたからだ。
「あんたは人として終わってるよ」
私たち人間の血とは違い、魔物の血は青い。
魔物の返り血を浴びて、全身が真っ青になっているエルの目は、見つめるだけで相手を射殺せてしまいそうなほど鋭かった。
「エルファス! 助けてくれ! 俺はエイミーに拉致されたんだ! しかも、アイミーには殺されそうになったんだよ!」
レイロは往生際が悪かった。
エルたちが近づいてきていることに気が付いた私は、レイロが襲いかかってくるように挑発した。怒っているレイロの動きはわかりやすく、先が読めた。
力では敵わないけれど、それ以外なら勝てる自信があったからやったことであり、私にとってはそこまで無謀な行為ではない。
「エイミーに拉致されたっていうのは、目の前で見たから嘘ではないことはわかる」
エルは鼻で笑うと、私に近づいて話しかけてきた。
「大丈夫か?」
「私は大丈夫だけど、あなたたちは? みんな大丈夫だった?」
「怪我をしてる奴らがいる」
「なら、回復魔法をかけにいくわ。ここを任せても良い?」
「ああ」
レイロのことだから、またウダウダ言うのだろうと思ってお願いすると、エルは頷いてくれた。
任せる前に大丈夫だと言っていたけど、念の為にエルの体に回復魔法をかける。
すると、エルが驚いた顔をして私を見つめた。
やっぱり怪我をしていたのね。痛みがなくなったから驚いたんだわ。自分でも回復魔法を少しはかけられるはずなのに、それよりも攻撃魔法に魔力を使ったみたい。
青く染まっている彼の顔をハンカチで拭いて頬をつねる。
「どうして嘘をつくのよ。嘘つきはレイロとお姉様だけで十分だわ」
「……ごめん」
「おい、何をイチャイチャしてるんだよ!」
レイロが顔を歪めて叫んだ。
別にイチャイチャしてるつもりはない。昔からこんな感じだった。レイロはこんな光景を見るのが嫌で、大して好きでもない私と結婚したのね。
近寄ってこようとしたレイロを、エルと一緒に来ていた仲間たちが取り押さえる。
「あんたは俺たちが相手になるよ」
「エルファス隊長、アイミー様を怪我人の所へ連れて行ってください!」
そう言う彼らも青い血まみれだし、ところどころ赤い血も見える。
そうだわ。光の魔法が広範囲に放てたのなら、回復魔法もできるんじゃないかしら。
まずは、近くにいる仲間たちに回復魔法をかけた。十数人単位なら、今までもできていたから、魔力の心配はない。
次に広範囲を試してみる。
「エル、怪我人が集められているのはどのあたり?」
「たぶん、あのテントを中心にその周辺かな」
「わかった」
意識を集中させて、エルから教えてもらったテントとその周辺に遠隔で回復魔法をかける。
すると、宿営地のほうから驚きの声が上がり始め、それはいつしか歓喜の声に変わった。
「……上手くいったみたいね」
お姉様の魔力を奪ったとはいえ限界がある。ゼロに近くなっているのか、立っているのも辛くなってきた。
「アイミー、大丈夫か!?」
「大丈夫よ、ありがとう」
気が抜けたせいもあり、エルがふらついた私の体を支えた瞬間、仲間に引きずられるようにして歩き出したレイロが叫ぶ。
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「どうせあんたがアイミーを脅すような真似をしたんだろ」
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「はいはい、うるさい」
エルが答える前に仲間がレイロの頭を殴って黙らせた。エルはレイロを仲間に任せ、彼の体にもたれている私に話しかけてくる。
「どうして無理するんだよ」
「あと1分早ければ助かったなんてことにしたくないのよ」
「気持ちはわかるけど」
「エルファス! エルファス!」
「うるせぇな。場所を移動するぞ」
名を呼ぶレイロが鬱陶しかったのか、エルが私を横抱きした。
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「なんて声出してんだ」
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