謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?

風見ゆうみ

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 とにかく、詳しい話はあとでゆっくりしようという事になり、先に食事を終える事にした。
 そして、デザートを待っていた時に、先程の御婦人方が近寄ってきて、私に謝罪してくれた。

「ごめんなさいね。彼女は学園時代からの古い友人なのだけど、昔から魔法使いが嫌いだったの。その事は知っていたんだけど、あそこまで酷いとは思っていなかったわ」
「あの人とは縁を切った方が良さそうね。どうして今まで仲良くしていたのかしら」

 御婦人方は私にもう一度謝ってくれた後、また自分達の席に戻っていった。
 その後すぐにデザートが運ばれてきたけれど、いつもはエドの分はデザートは用意しないらしいのだけれど、私がいるからと二人分のデザートを持ってきてくれたので、甘いものは別腹という事で、ありがたくいただいた。

 レストランを出て、宿まですぐそこなので、側近の人が少し離れた後ろに、護衛騎士が何人かは周りにいるけれど、二人で並んで歩きながら、私が口を開く。

「今日は本当に疲れました」
「だろうな」
「本当にそう思ってくれてます?」
「敬語はいらない」

 この人、私の話を聞く気はあるのかしら?

「……私達って、そんなに仲が良かったんでしたっけ」

 見上げて尋ねると、エドは悲しそうな顔をして私を見ただけだった。
 考えられるとしたら、エドと私の間で何か忘れたい事があったという事。
 私の身体に魔力が眠っているのは確かなので、無意識の内に、自分で忘却魔法をかけているのかもしれない。
 もしかすると、家族が結婚を反対した理由も聞いていたのに、私がショックで記憶から消してしまっただけかもしれない。
 結婚の話になるまでは、私も私の両親も相手の事を調べなかったのかもしれないけど、さすがに結婚前は相手の素性は少しは調べるだろうし、イザメル様の事に気付かなかった訳がないだろうから。

 もしかして、真実を知った私は、忘れる事にして、自分から、あの家に飛び込んだ?
 ああ、もうわからない。
 そんな事したって、意味がないじゃない。

 これは両親に聞いてみるしかなさそう。

「君はどう思っていたかわからないが、少なくとも、僕は仲が良いと思っていた」
「思い出せなくて、というか、忘れてごめんなさい」
「かまわない。たぶん、君は自分でも気付かない内に忘却魔法を自分にかけているんだろう。器用な事に嫌な部分だけ」
「嫌な部分? 閣下…じゃなくて、エドとの思い出は私にとって嫌な思い出だったという事ですか?」
「僕に聞くな」
「それはそうでした。失礼いたしました」

 私が頭を下げると、エドが言う。

「かまわない。なんにしても、僕は約束が守れるから」
「私と何の約束をしたんですか?」
「結婚するという約束だ」
「……そんな約束をしてましたか」
「子供の頃だけどな」

 そんな小さい頃の約束を律儀に守ろうとしなくてもいいのに。

「あの、エドワード様、そろそろ、そちらのご令嬢を私に紹介していただけませんか」

 赤髪の中肉中背で執事服を着た男性が、後ろから声をかけてくる。
 エドは表情を変えずに振り返り、彼に私を紹介する。

「彼女は僕の妻だ」
「いやいや、妻って、どういう事ですか!? あなた、初恋の彼女っ」

 側近の人が何か言おうとしたけれど、エドが彼の額をつかんで止めた。

「うるさい。最後まで話を聞け。彼女はエアリス・ノラベルだ」
「……え、嘘ですよね?」
「あの、はじめまして、エアリス・ノラベルと申します。本日めでたく離婚いたしまして」
「めでたく離婚…って。いや、エドワード様にとってはめでたいか…」

 呟いてから、男性は人懐っこい笑みを浮かべて、私に自己紹介する。

「エアリス様にお会いできて光栄です。アズカルド・レイズンと申します。エドワード様の側近としてお仕えさせていただいております。アズとお呼び下さい」

 深々と頭を下げてくれたので、私も頭を下げる。

「よろしくお願いいたします」
「アズガルド」
「承知いたしました。奥様のお部屋を準備するように伝えておきます。では先に失礼いたします」

 そう言ってアズ様はなぜか、嬉しそうにして先に宿の様に向かって帰っていく。
 
「彼は僕の執事だ。色々とこき使ってはいるが」
「そうなんですね」

 頷くと、何か言いたそうにエドが見てくるので言い直す。

「そうなのね」
「何がだ?」
「あなたが敬語を気に食わなさそうにしたから言い直したの!」

 ムキになって言うと、なぜか、エドはふわりと優しい笑みを浮かべた。
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