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「嬉しそうだな」
「ええ!」
笑顔で頷くと、エドは少し不思議そうな顔をした。
彼にもメアリーから聞いた話を伝えたい気はするけれど、少し言いにくい話だし、今は言わない事にする。
メアリーが教えてくれたのは、私とロンバートが体の関係になっていないという話だった。
そう言われてみれば、彼とどうこうした感覚や覚えもなく、いつも目が覚めると朝で、下着以外に服を着ていない状態だったから、気持ちよくて忘れてしまったのだと思いこんでいた。
何より、その行為については、話を聞いたりしただけで、詳しくは知らないというのもあった。
初めては痛いとか聞くけれど、大丈夫な人もいるみたいだし、私もそのタイプかと思っていたのだ。
そうなると、私がロンバートと唇を重ねたのは、お祖父様とお祖母様の形見を持っていなかった結婚式だけ。
でも、ファーストキスじゃないから良かった。
ん?
ファーストキスじゃない?
どうして、そう思ったのかしら。
「ねぇ、エド」
「何?」
「私とあなたって、昔、キスをした事はある?」
「な、何だよ、いきなり!」
焦った表情のエドに、慌てて首を横に振る。
「や、やっぱりいいわ! 忘れて!」
「どうしてそんな事を聞いたのか気になる」
繋いでいた手を強く握り直されて聞かれたけれど、一度、恥ずかしさを感じてしまうと、口にしにくかったので、話題を変える。
「それよりもメアリーの言っていた事が気になるわ。これから、私はあまり外に出ないほうが良さそうね」
「そうだな。なるべく早くにかたをつけるようにするよ。アズに調べてもらったけれど、君の祖父母を悪く言った事だけでは、僕の権力は行使できない。僕や僕の家族に対してなら、不敬罪で訴える事が出来たんだが」
「私相手では無理なのね」
「公爵夫人予定では駄目みたいだ」
「その公爵夫人になるかどうかもわからないけど」
「僕が君を逃がすと思ってる?」
繋いだ手を軽く上にあげて、見せつけるようにしてくるエドに答える。
「オルザベー卜とあなた、どちらが面倒かしら」
「彼女と一緒にしないでくれ。少なくとも、僕は自ら君が悲しむ様な事はしない」
「…そうよね。やっぱり、そうなのよね」
「忘却魔法の事か?」
「ええ。どうして、あなたを忘れようとしたのか、それがわからなくて」
「あの頃は僕も君とは違う学園に通っていたし、仕事を覚えるのに必死だったから、あまり連絡できなかった。だから、君を不安にさせてしまったのかもしれない」
「それくらいで忘れようとするほど、メンタルは弱くないわよ」
いくら、若かったとしても、エドの立場くらいは理解していたはず。
なのに…。
「ああ! 考えていてもどうせ思い浮かばないわ! しばらく実家には帰れそうにないから、手紙を書いて聞く事にする! といっても、その頃の私は寮にいて、長期の休みしか実家に帰ってなかったから意味がないかしら? ああ、もう前向き前向きよ!」
私がエドを忘れてしまった事は、きっと、オルザベートとは関係ないわよね?
だって、オルザベートはエドと私が仲が良かった事を知らないんだから。
「よくわからないけど、前向きなのはいい事だな」
エドが微笑んで言うと、後ろを歩いていたキャサリンが叫ぶ。
「お二人共、邪魔をしてしまい申し訳ございませんが、買い物はまだまだありますよ! エアリス様の事を考えましたら、買い物を早急に済ませ、早く屋敷に戻りましょう!」
「私もそう思います。せっかくの機会ですが、デートはお預けにしていただいた方がいいでしょう」
アズから深刻そうな表情で言われ、私とエドも同時に頷く。
「まさか強引に奪いに来たりはしないだろうが、用心するに越したことはないだろうからな」
「それにしても、一体、オルザベートは何を考えているのかしら」
この時の私は、せっかくのメアリーの警告を甘く見ていた。
オルザベートの私への依存が、私の想像以上だという事を理解していなかったのだ。
そして、狙われているのが私だけではないという事も。
「ええ!」
笑顔で頷くと、エドは少し不思議そうな顔をした。
彼にもメアリーから聞いた話を伝えたい気はするけれど、少し言いにくい話だし、今は言わない事にする。
メアリーが教えてくれたのは、私とロンバートが体の関係になっていないという話だった。
そう言われてみれば、彼とどうこうした感覚や覚えもなく、いつも目が覚めると朝で、下着以外に服を着ていない状態だったから、気持ちよくて忘れてしまったのだと思いこんでいた。
何より、その行為については、話を聞いたりしただけで、詳しくは知らないというのもあった。
初めては痛いとか聞くけれど、大丈夫な人もいるみたいだし、私もそのタイプかと思っていたのだ。
そうなると、私がロンバートと唇を重ねたのは、お祖父様とお祖母様の形見を持っていなかった結婚式だけ。
でも、ファーストキスじゃないから良かった。
ん?
ファーストキスじゃない?
どうして、そう思ったのかしら。
「ねぇ、エド」
「何?」
「私とあなたって、昔、キスをした事はある?」
「な、何だよ、いきなり!」
焦った表情のエドに、慌てて首を横に振る。
「や、やっぱりいいわ! 忘れて!」
「どうしてそんな事を聞いたのか気になる」
繋いでいた手を強く握り直されて聞かれたけれど、一度、恥ずかしさを感じてしまうと、口にしにくかったので、話題を変える。
「それよりもメアリーの言っていた事が気になるわ。これから、私はあまり外に出ないほうが良さそうね」
「そうだな。なるべく早くにかたをつけるようにするよ。アズに調べてもらったけれど、君の祖父母を悪く言った事だけでは、僕の権力は行使できない。僕や僕の家族に対してなら、不敬罪で訴える事が出来たんだが」
「私相手では無理なのね」
「公爵夫人予定では駄目みたいだ」
「その公爵夫人になるかどうかもわからないけど」
「僕が君を逃がすと思ってる?」
繋いだ手を軽く上にあげて、見せつけるようにしてくるエドに答える。
「オルザベー卜とあなた、どちらが面倒かしら」
「彼女と一緒にしないでくれ。少なくとも、僕は自ら君が悲しむ様な事はしない」
「…そうよね。やっぱり、そうなのよね」
「忘却魔法の事か?」
「ええ。どうして、あなたを忘れようとしたのか、それがわからなくて」
「あの頃は僕も君とは違う学園に通っていたし、仕事を覚えるのに必死だったから、あまり連絡できなかった。だから、君を不安にさせてしまったのかもしれない」
「それくらいで忘れようとするほど、メンタルは弱くないわよ」
いくら、若かったとしても、エドの立場くらいは理解していたはず。
なのに…。
「ああ! 考えていてもどうせ思い浮かばないわ! しばらく実家には帰れそうにないから、手紙を書いて聞く事にする! といっても、その頃の私は寮にいて、長期の休みしか実家に帰ってなかったから意味がないかしら? ああ、もう前向き前向きよ!」
私がエドを忘れてしまった事は、きっと、オルザベートとは関係ないわよね?
だって、オルザベートはエドと私が仲が良かった事を知らないんだから。
「よくわからないけど、前向きなのはいい事だな」
エドが微笑んで言うと、後ろを歩いていたキャサリンが叫ぶ。
「お二人共、邪魔をしてしまい申し訳ございませんが、買い物はまだまだありますよ! エアリス様の事を考えましたら、買い物を早急に済ませ、早く屋敷に戻りましょう!」
「私もそう思います。せっかくの機会ですが、デートはお預けにしていただいた方がいいでしょう」
アズから深刻そうな表情で言われ、私とエドも同時に頷く。
「まさか強引に奪いに来たりはしないだろうが、用心するに越したことはないだろうからな」
「それにしても、一体、オルザベートは何を考えているのかしら」
この時の私は、せっかくのメアリーの警告を甘く見ていた。
オルザベートの私への依存が、私の想像以上だという事を理解していなかったのだ。
そして、狙われているのが私だけではないという事も。
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