25 / 45
7−2
しおりを挟む『力を使うのなら、コントロールを覚えさせないと駄目ね』
『ノーコンなのはお前の血を引いたんじゃないか?』
『何を言ってるの。私達の娘の子で、私達の孫じゃないの。きっとあなたの血を強くひいたのね。私ならもっと上手くやれているわ! まあ、エアリスだから何をしても可愛いんだけれど』
『あまり甘やかすのも良くないけどな。っていうか、今までエアリスが気絶してたのは、お前のせいだからな』
『でも、ちょうど良かったじゃない。あの男に手を出されずに済んだんだから。それにしても、眠っている人間に手を出そうとするとは思わなかったわ』
目の前に黒のローブを羽織った、黒髪の背の高いやんちゃそうな顔立ちの男性と、男性よりも少しだけ背が低く、気の強そうな顔立ちの女性が立っていた。
幼い頃の記憶に残っている、あの人達と同じ顔だ。
そう、お祖父様とお祖母様が口喧嘩をしていた。
『お祖父様とお祖母様?』
口にすると、2人がこちらに振り返って笑顔を見せた。
『可愛いエアリス、お前を巻き込んですまなかった。そのかわり、俺たちは出来るだけの事をするつもりだからな』
『今回の事は自分自身で魔力を扱うのは初めてだったからしょうがないとして、魔力切れを起こすなんて、もう二度とやめてちょうだい。ミラーザから魔法を学んでね。きっとあなたの役に立つはずだから』
『あと、ロンバートの件は悪かった。魅了魔法がかかってるのかどうか、判断がつきにくかったんだ。それに、解除しても、すぐに魅了魔法をかけられていて、イタチごっこでな』
お祖父様が私の頭を撫でながら続ける。
『お前とロンバートの邪魔をしたのは俺達だ。あの家に囚われていた魔法使いに妨害されたのと、自分の魔力じゃないから、うまくコントロールが出来なくて、お前の魔力を限界近くまで使って気絶させちまった。本当に悪かった』
気絶?
メアリーもそう言っていたけど、何かの魔法を使って、魔力切れを起こしてたって事?
あと、囚われている魔法使いって?
『あら、困ったちゃんが、エアリスを起こそうとしてるわ』
お祖母様が私のお母様に似た顔を歪めて、私の頬に優しく触れる。
『エドワードは良い子よ。今度こそ幸せになりなさい』
『その前に、あのクソ共をどうにかしてくれ』
『ちょっとエアリスの前でそんな口汚い言葉を発さないでちょうだい! それに、もうあの家には魔法使いはいないのだから、勝手に自滅すると思うわ』
お祖母様がお祖父様の頭を叩いたあと、笑顔になって続けた。
『エアリス。ずっとそばにいるわ。あなたのお兄様のクラリスにも、そう伝えて』
『俺もだ。ずっとお前たちを見守ってるから』
お祖父様とお祖母様の姿がどんどん遠ざかっていく。
これだけは言わなければいけない。
そう思って、大声を出す。
『ありがとう、お祖父様、お祖母様! 大好きよ!』
私の言葉に2人が微笑んだ時だった。
ツンツンと頬をつつかれるような感覚を覚えたのと同時に目を覚ましてしまった。
ゆっくりと顔を横に向けると、すぐそばにエドの顔があった。
「エ、エド!?」
「うなされてたみたいだから」
「うなされてた…?」
もしかしたら、夢の中でお祖父様達に話しかけていたから、それがうなされているように見えたのかしら?
「…エアリスは大胆だな」
「な、何が」
「ここ、僕のベッドだけど」
「ええっ!?」
確認するために慌てて起き上がろうとしたけど、腕を引っ張られて、元の位置に戻された。
服は誰かが着替えさせてくれたのか、いつも着ているネグリジェ姿だった。
「からかってごめん。僕が目覚めたあと、君が意識を失ったって聞いて、様子を見に行こうとしたら寝てろと言われたんだ。それでも、顔だけ見たいって言ったら、君がここに運ばれてきた。婚約者だからいいだろうって」
「……ここで寝ていたのは、私のせいじゃないのね」
「そうだな」
並べられた枕はピッタリとくっつけられていて、エドとの距離が近い。
エドの方に背中を向けると、彼が小さな声で謝ってきた。
「起こしてしまって悪かった」
「謝らないでよ。私の様子がおかしかったから起こしてくれたんでしょ?」
「…それだけじゃない」
「何よ」
気になって、寝返りを打ち、エドの方に身体を向けると、彼は手を口で隠しながら言った。
「……起きなかったら、イタズラしてやろうかと思った」
「寝てる人になんて事しようとするの!」
「君が無理をしたと聞いたから」
そう言った、エドの声のトーンがいつもより低いのと、私を見つめる目が厳しくて、彼が怒っているのだとわかった。
「何があったかわからないんだけど…。私、魔力切れをおこしたのね?」
「ああ。たぶんだけど、君の魔力が暴走して、君のお祖母様が母にかけていた封印魔法を解除した」
「すごい! 私ってそんな事ができるのね!」
「で、魔力切れをおこしそうになって倒れた」
「す、すみません…」
お祖父様とお祖母様が魔力切れで亡くなったっていうのに、私ったら何をしてるのか…。
夢の中でもお祖母様に怒られてしまったし。
「謝らなくていい。助けてくれてありがとう、エアリス」
「助けたのはあなたのお母様よ」
「それだけじゃないだろ? 君と、君のお祖父様とお祖母様のおかげだ」
そう言って、エドは優しく微笑んだ。
応援ありがとうございます!
18
お気に入りに追加
3,459
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる