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30 元母の恨み言
ジェリー様が考えた作戦をソルトに話すと、彼は嫌そうな顔をしたけれど、私とジェリー様が良いというのであれば協力はすると言ってくれた。
そして、私達がそれを実行する前に、まずはセイ様とお父様の離婚の話が本格的に行われた。
ちなみに、わざとお母様と呼び続けていると、思い通りにならないことに苛立っていたセイ様は「あなたなんか娘じゃない! 育ての親に対してなんて仕打ちだ!」と怒りちらしたので、セイ様と呼ぶことになった。
これに関しては、離婚が進んでしまえば、外でそう呼んでもおかしくないので、私はすんなりと受け入れた。
「とにかく、僕がレナス侯爵家を継ぐまでは、ミリエル姉さんには姉さんのままでいてほしいです。というか、ずっと、姉さんでいてほしいですけと……」
「侯爵家を継いだあとも、あなたは私にとっては弟よ。それに、本当のことを明るみに出すつもりはないから、実家はレナス家のままでいるつもりなんだから、世間体的にもずっと姉よ?」
「姉さんがそう望む気持ちはわかりますが、本当のご両親はどう思うか……」
そのことについては、私だけじゃなく、お父様もジェリー様も、ヨウビル公爵閣下も気にかけていた。
だから、お父様のほうからセファ伯爵夫妻に確認してもらうことにした。
どうやら、伯爵夫妻も薄々気付き始めていたようで、私がこのままで良いと納得しているなら、それで良いということだった。
今更、血が繋がっていないと言われても、長年育ててきたノマ様への愛情が消えるわけでもないからと言われたんだそう。
ただ、私のことが気にならないわけではないから、パーティーの時に話をするくらいはさせてほしいと言っていたらしく、あとからその話を聞いた私もそのことについて承諾した。
ソルトに一通りのことを伝えてから微笑む。
「だから大丈夫よ」
「周りに噂されませんか?」
「雰囲気が似ているから気になって話しかけてみた、というように持っていくつもりだけど?」
「何か言われる前に先に言ってしまうということですね」
「ええ。怪しまれてもいいわ。堂々としてれば、それだけでも多少の噂は払拭できるでしょうし」
「ミリエル姉さんは本当に考え方が前向きですよね。まあ、そのおかげで、今まで僕も頑張ってこれたんですけど」
そう言ったソルトの顔は呆れたといった感じではなく、優しく見守ってくれるような温かい笑みを浮かべていた。
***
セイ様とお父様の離婚成立まではそう時間はかからなかった。
離婚理由としては、セイ様の妥協案として、お父様が愛人にうつつを抜かし、最終的に捨てられてからは腑抜けになってしまったため、セイ様が愛想をつかしたと世間に伝えることに決まった。
本来なら、レナス家としては、そんな噂がまわってしまっては痛手なのだけれど、ソルトが卒業後には代替わりすることや、お父様が社交場に出て、腑抜け状態から抜け出したことをアピールすることになった。
ヨウビル公爵家としては、私達娘には関係ないことだとして、婚約関係を続けてくれることを公にしてくれた。
セイ様は実弟の家に身を寄せることになり、レナス家から出ていく日の朝、見送るつもりはなかったけれど、向こうから呼び出されてしまったので、顔を出さざるをえなかった。
「ミリエル、あなた、今まで育ててきた恩も忘れて、私をこんな目にあわせるなんて絶対に許さないわ!」
セイ様は大勢の使用人やお父様、レジーノ様、ソルトが見ている前で、私に向かって叫んだ。
「育ててもらった恩というのであれば、ナニーや使用人を雇ってくれたのはお父様のお金ですから、お父様に恩はあったとしても、セイ様に対しては、その恩というものが何なのか思い浮かばないのですが?」
「育ててやったじゃないの!」
「ナニーに任せっきりだったじゃないですか」
「抱っこをしたりもしてあげたわよ!」
「セイ様、それに関しては、当たり前のことでしょう?」
本当の親であれば当然のことだし、セイ様が取り替えなければ、私はこの人に嫌な目に合わされることはなかった。
もちろん、殺されなかっただけマシだと思っている。
だけど、それは当たり前のことだ。
「覚えていなさい。絶対にあなたを幸せになんてさせないわ!」
セイ様は私を睨みつけたあと、レジーノ様だけは愛しげに強く抱きしめて別れを告げた。
「元気でね、レジーノ。あなたのことはヨウビル公爵夫人が守ってくれるから安心しなさい」
「ありがとうございます、お母様」
抱きしめ返したレジーノ様の目はこちらに向けられていて、その感じからして、ほくそ笑んでいるように見えた。
たぶん、私を見て笑っているのだと思うんだけど……。
困惑している間に、名残惜しそうに二人は離れると、セイ様は屋敷を出て行った。
セイ様の実弟の屋敷までは馬車で二日ほどかかる。
そして、二日目の朝、セイ様の乗った馬車が盗賊に襲われたとレナス侯爵家に連絡が入ったのだった。
そして、私達がそれを実行する前に、まずはセイ様とお父様の離婚の話が本格的に行われた。
ちなみに、わざとお母様と呼び続けていると、思い通りにならないことに苛立っていたセイ様は「あなたなんか娘じゃない! 育ての親に対してなんて仕打ちだ!」と怒りちらしたので、セイ様と呼ぶことになった。
これに関しては、離婚が進んでしまえば、外でそう呼んでもおかしくないので、私はすんなりと受け入れた。
「とにかく、僕がレナス侯爵家を継ぐまでは、ミリエル姉さんには姉さんのままでいてほしいです。というか、ずっと、姉さんでいてほしいですけと……」
「侯爵家を継いだあとも、あなたは私にとっては弟よ。それに、本当のことを明るみに出すつもりはないから、実家はレナス家のままでいるつもりなんだから、世間体的にもずっと姉よ?」
「姉さんがそう望む気持ちはわかりますが、本当のご両親はどう思うか……」
そのことについては、私だけじゃなく、お父様もジェリー様も、ヨウビル公爵閣下も気にかけていた。
だから、お父様のほうからセファ伯爵夫妻に確認してもらうことにした。
どうやら、伯爵夫妻も薄々気付き始めていたようで、私がこのままで良いと納得しているなら、それで良いということだった。
今更、血が繋がっていないと言われても、長年育ててきたノマ様への愛情が消えるわけでもないからと言われたんだそう。
ただ、私のことが気にならないわけではないから、パーティーの時に話をするくらいはさせてほしいと言っていたらしく、あとからその話を聞いた私もそのことについて承諾した。
ソルトに一通りのことを伝えてから微笑む。
「だから大丈夫よ」
「周りに噂されませんか?」
「雰囲気が似ているから気になって話しかけてみた、というように持っていくつもりだけど?」
「何か言われる前に先に言ってしまうということですね」
「ええ。怪しまれてもいいわ。堂々としてれば、それだけでも多少の噂は払拭できるでしょうし」
「ミリエル姉さんは本当に考え方が前向きですよね。まあ、そのおかげで、今まで僕も頑張ってこれたんですけど」
そう言ったソルトの顔は呆れたといった感じではなく、優しく見守ってくれるような温かい笑みを浮かべていた。
***
セイ様とお父様の離婚成立まではそう時間はかからなかった。
離婚理由としては、セイ様の妥協案として、お父様が愛人にうつつを抜かし、最終的に捨てられてからは腑抜けになってしまったため、セイ様が愛想をつかしたと世間に伝えることに決まった。
本来なら、レナス家としては、そんな噂がまわってしまっては痛手なのだけれど、ソルトが卒業後には代替わりすることや、お父様が社交場に出て、腑抜け状態から抜け出したことをアピールすることになった。
ヨウビル公爵家としては、私達娘には関係ないことだとして、婚約関係を続けてくれることを公にしてくれた。
セイ様は実弟の家に身を寄せることになり、レナス家から出ていく日の朝、見送るつもりはなかったけれど、向こうから呼び出されてしまったので、顔を出さざるをえなかった。
「ミリエル、あなた、今まで育ててきた恩も忘れて、私をこんな目にあわせるなんて絶対に許さないわ!」
セイ様は大勢の使用人やお父様、レジーノ様、ソルトが見ている前で、私に向かって叫んだ。
「育ててもらった恩というのであれば、ナニーや使用人を雇ってくれたのはお父様のお金ですから、お父様に恩はあったとしても、セイ様に対しては、その恩というものが何なのか思い浮かばないのですが?」
「育ててやったじゃないの!」
「ナニーに任せっきりだったじゃないですか」
「抱っこをしたりもしてあげたわよ!」
「セイ様、それに関しては、当たり前のことでしょう?」
本当の親であれば当然のことだし、セイ様が取り替えなければ、私はこの人に嫌な目に合わされることはなかった。
もちろん、殺されなかっただけマシだと思っている。
だけど、それは当たり前のことだ。
「覚えていなさい。絶対にあなたを幸せになんてさせないわ!」
セイ様は私を睨みつけたあと、レジーノ様だけは愛しげに強く抱きしめて別れを告げた。
「元気でね、レジーノ。あなたのことはヨウビル公爵夫人が守ってくれるから安心しなさい」
「ありがとうございます、お母様」
抱きしめ返したレジーノ様の目はこちらに向けられていて、その感じからして、ほくそ笑んでいるように見えた。
たぶん、私を見て笑っているのだと思うんだけど……。
困惑している間に、名残惜しそうに二人は離れると、セイ様は屋敷を出て行った。
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