8 / 32
6 公爵令嬢の転機
しおりを挟む
レイル王国の国王陛下には私からの手紙だけではなく、ディリング公爵からも連絡がいっていました。
ランフェスからどう話を聞いたのかはわかりませんが、ディリング公爵はトーマス殿下が何もしていないランフェスを殴ったことで、ハズレー王国との友好関係を見直さなければいけないのではないかという陳情書を送ったのです。その時に、ファルナが私に対して無礼な態度を取っていたことも書いてくださっていたそうで、国王陛下の命で、ファルナを解雇することができました。
今回の件で良いことが多いことかったことは確かですが、悪いこともありました。今回の王命を不満に思った両親は私に責任があるとして、私を部屋に閉じ込めるようになったのです。
「嫁に行くだけなんだから簡単なことだろ。どうしてそんな簡単なこともできないわけ? バカなの?」
「ランフェス様とトーマス殿下を弄んだりするからよ。トーマス殿下との婚約の話がなくなればあなたは用無しよ」
事情を何も知らないくせに兄と姉は、わざわざ部屋にやって来て、私に文句を言いました。普通、こんなことを家族に言われればショックを受けることでしょう。でも、私はそうはなりませんでした。
「用無しで結構です。生きていくことは難しいですが、捨てていただいたほうが気持ちが楽になります」
「安心しろよ。国王陛下はお前とトーマス殿下の婚約を破棄しようとしているそうだからさ。父上たちはお前に怒りまくっているから、そのうち追い出してもらえるよ」
お兄様は言うだけ言って満足したのか、お姉様と一緒に去っていきました。久しぶりの兄と姉との会話は酷いものでした。
そして、この話をされた二日後、私とトーマス殿下の婚約はレイル王国の国王陛下により破棄され、ハズレー王国と結ばれていた友好関係も終止符を打ったのでした。
といっても、王家同士の友好関係が終止符を打っただけであり、国同士の中が悪くなったわけではありません。レイル王国の国民もハズレー王国の国民もトーマス殿下の素行の悪さに呆れており、王家の関係と国民同士との関係は別物だと考えてくれたからです。ハズレー王国の重鎮たちはこの件があって、トーマス殿下が十六歳になったとしても即位させるわけにはいかないという話になりました。
かといって、現時点では王位継承権を剥奪する権利が他の人たちにないため、即位の年齢を十八歳に変更し、その間に法改正を進めるようです。
トーマス殿下は剥奪についての話は知らないため、即位を十八歳にするという条件をのむ代わりに、今すぐに私を彼の妻にするように求めました。レイル王国の国王陛下は拒否してくれましたが、両親は、私をトーマス殿下の妻にすることを諦めませんでした。
「トーマス殿下の元へ行きなさい。国王陛下は断ったかもしれないけれど、私はトーマス殿下の妻になりたいと言うのです!」
「お前をハズレ―王国に連れて行くための馬車を用意する。馬車が来るまでに荷造りを終えておくように。嫌がるようなら追い出すだけだ」
お母様とお父様は言いたいことだけ言うと、私の部屋から去っていきました。自分の家の馬車を使うのは嫌なようで、馬車と御者をレンタルするようです。逃げ出そうかと思いましたが、部屋の前や窓の外には夜中にも見張りがいて、逃げ出すことはできませんでした。
ハズレ―王国に送られれば、私の自由などなくなるでしょう。届くかどうかはわかりませんが、私はランフェス宛に手紙を書き、ファルナの代わりにやって来た侍女に手紙を届けるように頼むと「必ずお届けします」と約束してくれました。
そして、次の日の朝、私は馬車に押し込まれるように乗せられて、ハズレ―王国に向かうことになりました。もう駄目なのかと諦めかけていた頃、私の乗った馬車が何者かによって襲われ、私、ユミリー・エルファイドは、その時に命を奪われたことにされたのでした。
ランフェスからどう話を聞いたのかはわかりませんが、ディリング公爵はトーマス殿下が何もしていないランフェスを殴ったことで、ハズレー王国との友好関係を見直さなければいけないのではないかという陳情書を送ったのです。その時に、ファルナが私に対して無礼な態度を取っていたことも書いてくださっていたそうで、国王陛下の命で、ファルナを解雇することができました。
今回の件で良いことが多いことかったことは確かですが、悪いこともありました。今回の王命を不満に思った両親は私に責任があるとして、私を部屋に閉じ込めるようになったのです。
「嫁に行くだけなんだから簡単なことだろ。どうしてそんな簡単なこともできないわけ? バカなの?」
「ランフェス様とトーマス殿下を弄んだりするからよ。トーマス殿下との婚約の話がなくなればあなたは用無しよ」
事情を何も知らないくせに兄と姉は、わざわざ部屋にやって来て、私に文句を言いました。普通、こんなことを家族に言われればショックを受けることでしょう。でも、私はそうはなりませんでした。
「用無しで結構です。生きていくことは難しいですが、捨てていただいたほうが気持ちが楽になります」
「安心しろよ。国王陛下はお前とトーマス殿下の婚約を破棄しようとしているそうだからさ。父上たちはお前に怒りまくっているから、そのうち追い出してもらえるよ」
お兄様は言うだけ言って満足したのか、お姉様と一緒に去っていきました。久しぶりの兄と姉との会話は酷いものでした。
そして、この話をされた二日後、私とトーマス殿下の婚約はレイル王国の国王陛下により破棄され、ハズレー王国と結ばれていた友好関係も終止符を打ったのでした。
といっても、王家同士の友好関係が終止符を打っただけであり、国同士の中が悪くなったわけではありません。レイル王国の国民もハズレー王国の国民もトーマス殿下の素行の悪さに呆れており、王家の関係と国民同士との関係は別物だと考えてくれたからです。ハズレー王国の重鎮たちはこの件があって、トーマス殿下が十六歳になったとしても即位させるわけにはいかないという話になりました。
かといって、現時点では王位継承権を剥奪する権利が他の人たちにないため、即位の年齢を十八歳に変更し、その間に法改正を進めるようです。
トーマス殿下は剥奪についての話は知らないため、即位を十八歳にするという条件をのむ代わりに、今すぐに私を彼の妻にするように求めました。レイル王国の国王陛下は拒否してくれましたが、両親は、私をトーマス殿下の妻にすることを諦めませんでした。
「トーマス殿下の元へ行きなさい。国王陛下は断ったかもしれないけれど、私はトーマス殿下の妻になりたいと言うのです!」
「お前をハズレ―王国に連れて行くための馬車を用意する。馬車が来るまでに荷造りを終えておくように。嫌がるようなら追い出すだけだ」
お母様とお父様は言いたいことだけ言うと、私の部屋から去っていきました。自分の家の馬車を使うのは嫌なようで、馬車と御者をレンタルするようです。逃げ出そうかと思いましたが、部屋の前や窓の外には夜中にも見張りがいて、逃げ出すことはできませんでした。
ハズレ―王国に送られれば、私の自由などなくなるでしょう。届くかどうかはわかりませんが、私はランフェス宛に手紙を書き、ファルナの代わりにやって来た侍女に手紙を届けるように頼むと「必ずお届けします」と約束してくれました。
そして、次の日の朝、私は馬車に押し込まれるように乗せられて、ハズレ―王国に向かうことになりました。もう駄目なのかと諦めかけていた頃、私の乗った馬車が何者かによって襲われ、私、ユミリー・エルファイドは、その時に命を奪われたことにされたのでした。
433
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
婚約破棄ですか?勿論お受けします。
アズやっこ
恋愛
私は婚約者が嫌い。
そんな婚約者が女性と一緒に待ち合わせ場所に来た。
婚約破棄するとようやく言ってくれたわ!
慰謝料?そんなのいらないわよ。
それより早く婚約破棄しましょう。
❈ 作者独自の世界観です。
(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ?
青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。
チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。
しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは……
これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で
す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦)
それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる