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9 決意
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※ 過激発言がございます。その他につきましても、物語としてお読み下さい。
「一体、どういう事なの?」
ケイティの侍女が亡くなったと伝えに来てくれたのは、ワイアットで、私は彼に怒っても意味がない事をわかっていながらも、つい厳しい声を上げてしまった。
「僕も聞いた話でしかありませんが、ケイティの侍女がケイティに何か助言したところ、気に食わないと怒り出し、王太子殿下に殺してくれと叫んだそうです。もちろん、その場では王太子殿下は何もしていません」
意味深な言い方に、私は黙って先を促す。
「数時間後、勤務を終えた侍女が、ケイティの部屋から宿舎に戻る途中に火をつけられた様です。まずは悲鳴を上げない様に、喉を焼いたのではないかと思われています。ちなみに侍女が火をつけられるところを見ている者は誰もいません。見ていたとしても、自分が殺される可能性がありますから名乗り出れないでしょうね」
「ワイアットは犯人の予想できる?」
「予想ですか…」
ワイアットが難しい顔をして口を閉ざした。
口に出すべきか迷っているみたい。
もちろん、私だって犯人が誰かなんてわかっている。
だけど、そんな事をするだなんて信じられなかった。
朝の早い時間なので、起きてはいたけれど、まだ使用人が来ておらず、自分でミルクとチョコレートを温めて、ホットチョコレートにしてコップに入れると、ワイアットと自分の前に置いた。
温かい飲み物を飲めば、少しは気持ちが落ち着く気がしたから。
「気に入らない人間を殺すという噂が流れ始めたら、どうなると思いますか?」
「わからないけれど、彼の事だから、口封じに人を殺していくかもしれないわ」
私の中では犯人は一人しか考えられないから、彼、と断定して言うと、ワイアットはホットチョコレートを一口飲んでから、大きく息を吐いた。
「陛下がこの事を知れば、精神的なもので病状が悪化するかもしれないと医者は言うんです。そのせいで同僚達も頭を抱えています。侍女が一人亡くなっただけと考えるか、犯人が彼かもしれないという事を重きにおくか、どうすれば良いか…」
「彼が自分がやったと言うなら、お伝えした方が良い様な気がするわ。人殺しだなんて、貴族だろうがなんだろうがやっていい事じゃないもの」
「証拠もないのに、素直に吐くと思いますか?」
「さすがにそこまで馬鹿ではないでしょうね」
答えると、ワイアットは顔を両手で覆って言う。
「元気な人でも、自分の息子が人を殺したと聞いたら精神的に負担がくるでしょう。それが怒りか悲しみかはわかりませんが、心身の負担になるはずです。それで、陛下の寿命が縮まったら…?」
「ワイアット、本当に彼の仕業かどうかはわからないわ。わかってから考えましょう。あなただけが悩む問題じゃないわ。多くの人間で判断しなくちゃいけない事よ」
ワイアットにそう言った時だった。
家の扉がノックされる音が聞こえた。
時計を確認すると、使用人達が来るにはまだ早い時間だったので、ワイアットには待っていてもらい、玄関に向かって声を掛ける。
「誰かしら?」
「ソフィア? 私よ」
ケイティの声だった。
彼女の声がワイアットにも聞こえたらしく、彼が私の所まで来てくれたけれど、無言で首を横に振る。
私とワイアットの婚約は保留になっているので、二人きりになっているのをケイティに知られたくなかった。
彼女の事だから、自分の事は棚に上げて、何を言い出すかわからない。
弱みになりそうな事を彼女に知られたくない。
そう思った私は、扉の鍵を開け、家の外に出た。
「あら、中に入れてくれないの?」
「長話するつもりなの?」
「いいえ。あなたに知らせたい事があっただけ」
「…知らせたい事?」
聞かなくてもわかるけれど、知らないふりをして聞き返すと、ケイティは笑った。
「昨日ね、私の侍女が死んだの!」
「笑って言う事じゃないと思うけど…。何にしてもお悔やみ申し上げるわ」
「あなたのせいよ」
「何の話?」
「侍女がマナーがおかしいと注意してきたの! 彼女は注意ではなく、私の為だとか何とか言っていたけど、貴族のマナーなんてどうでもいいのよ!」
ケイティの叫びに、私は無言で眉をひそめて、彼女を見た。
まさか、本当に注意された事だけで腹を立てて、侍女を殺したの?
「どうしたの、ソフィア、私の事が怖くなった?」
「そんな訳ないでしょう。それよりもあなた、侍女を殺したと自白しているの?」
「私は殺していないわ。殺してほしいと言いはしたかもしれないけれど。何もしていないわ」
「どうしてそんな事を…」
「だって、ソフィア、あなたのせいで人が死んだら悲しいでしょう? だから死んでくれないかなって思ったの」
「意味がわからないわ」
「あの侍女は陰で私より、ソフィアの方が王妃にふさわしいと言っていたらしいわ! あなたの手先なんでしょう!?」
「そんなわけないでしょう!」
ケイティがここまで病んでいるとは思わなかった。
私達の家に来たことで、彼女は病んでしまったの?
それとも元から?
「まあ、いいわ。動揺してるあなたの顔が見れたし十分。何より、私の悪口を言う女が、この世から一人消えたし、気分がいいわ!」
人が一人死んでいるのに、気分がいいだなんておかしい。
それに、彼女は手を下していないから、捕まえても、無実を訴えるに決まっている。
「あなた、本当に王妃になる気はあるの?」
「当たり前でしょう」
「なら、どうして、もっと自分以外の人間を思いやらないの!? 死んでしまった彼女も国民の一人なのよ!? しかも自分が気に入らないというだけの理由で死ねばいいと思うなんておかしいわ!」
「ソフィアのそういう綺麗事をいうところも嫌いなの。どうして私が国民の事を考えないといけないの? 思いやらない王妃じゃ国民が可哀想? そんなの私の知った事じゃないの。王様に愛されたから王妃なの。私の考えている王妃はそうなのよ。勝手にあなたのイメージを私に押し付けないで頂戴!」
「清廉潔白になれとは言わないけど、せめて人の死を喜ぶ様な王妃になろうとするのは止めて」
「ソフィア。それはあなたの価値観であって、私の価値観とは違うの」
国民の上に立つのだから、国民を大事にする国王や王妃でいてほしいと思うのは、私の勝手な願いだと、ケイティは言いたいみたいね。
「自分の幸せを優先する事は間違っていないわ。だけど、わざと人を傷付ける事はやってはいけない行為だという事くらいわかるでしょう!?」
「はあ? 別に他人がどうなろうが、私の知った事ではないわ。私の国に住んでいる以上、文句は言わせないわよ。嫌なら他国に引っ越せばいいじゃない」
「そんな事が簡単にできるわけないでしょう!」
その日一日を暮らすだけでも精一杯の人もいる。
何より、今まで築いてきた暮らしがある。
それなのに、引っ越せだなんて無茶な事を。
「安心してよ、ソフィア。大人しくしている人間を傷つけたりしないわ。ただ、私を悪く言ったり、不快な思いをさせる様な人間はいらないわ! ゼント殿下は王太子なのに、国王陛下のせいで、やれる事が少ないの。だけど、国王になったら違う! 王妃教育もマナーも何も関係ないわ! 文句を言う人間は殺せばいいだけだもの。文字が書けないなら書ける様に勉強しろ? 王妃教育を学んでこい? 上から目線で、そんな事を言う人間は殺してやるわ!」
「ケイティ、あなたが文字を書けない事、王妃教育をしたくない事は、国民がどうなろうが関係がないと言うなら、国民に迷惑をかけなければ、あなたの自由にすればいい事なのかもしれない。だけど、殺してやるという発言はしてはいけないものよ!」
少し前のケイティは少女らしい可愛さが見えていたのに、今は違う。
口調も見た目も、ただの傲慢で冷酷な人間だった。
これが彼女の本性だった。
私達は本能的にそれを感じ取っていたから、相容れない感情や考え方を持つ彼女と、無意識に関わらない様に避けていたんだわ。
「ソフィアに言われても傷付いたりなんかしない。いつか、王妃になったらあなたを処刑してやる。監察役っていう役なんか、なくしてあげるから。その時には命乞いしてよね? 醜く命乞いしてくれたら、助けてあげるかもしれない。まあ、全ては私が決める事だけれど」
「ケイティ、それはこっちのセリフよ。王太子殿下の恋人だからって、何をやっても、何を言っても許されるとは思わないで。王太子殿下が王太子でなくなれば、酷い場合は平民だからね」
「王太子殿下が王太子でなくなる? 何を言っているのかわからないわ。そんな事、あるわけないじゃない。そんな事になったら、それこそ、国王陛下が死んだ時には、この国が終わるわよ? 大人しく、ゼント殿下が国王になるのを待ちなさいよ。国王陛下だって…。あ、大変。さすがに国王陛下の悪口を言ったら、私も怒られちゃうわよね?」
「いいかげんにしなさいよ…」
「ソフィア。私、あなたの事、昔から大嫌いだった。家族から無条件に愛されて、何の努力もせずに魔法も使えて、フィート様とも仲が良くて、婚約者は王太子、いずれ、王妃になるだなんて! そんな事許せなかった。これ以上、あなたを幸せになんてしてやるもんですか! 私より幸せそうに見える人間は全て敵よ! この世界で一番幸せになるのは私なの! ソフィア、今はあなたを私の手で処刑はしてあげられないけど、あなたの権力では王太子には、そう簡単には逆らえない事もわかってる。指をくわえて私が幸せになっていくのを見ていればいいわ」
ケイティは言いたい事を言い終えると、背を向けて、城へ続く道を歩いていく。
周りにいた騎士達の何人かが、私の事を心配げな表情で見つめ、その他の騎士達は、ケイティの背中を睨むように見つめていた。
殺されてしまった侍女には本当に申し訳ない。
あなたという犠牲があって、やっと、私は目が覚めた。
相手は王太子。
この国は王族に絶対的といってもいい程の権力が与えられている。
だから、国王陛下に許可をもらっていたとしても、ゼント殿下は私より身分が上だからと、彼の不利になる事は何もできないと思い込んでいた。
もちろん、下手に動けば私の命の危険性もあったから。
本当にごめんなさい。
自分可愛さで犠牲を出してしまった。
だけど、これ以上、悲しい犠牲は出さない。
それが今の私に出来る事だわ…。
ケイティ。
それから、ケイティの為なら、何の躊躇いもなく、人を殺してしまうゼント殿下。
あなた達には、私に喧嘩を売った事を後悔してもらいましょう。
「一体、どういう事なの?」
ケイティの侍女が亡くなったと伝えに来てくれたのは、ワイアットで、私は彼に怒っても意味がない事をわかっていながらも、つい厳しい声を上げてしまった。
「僕も聞いた話でしかありませんが、ケイティの侍女がケイティに何か助言したところ、気に食わないと怒り出し、王太子殿下に殺してくれと叫んだそうです。もちろん、その場では王太子殿下は何もしていません」
意味深な言い方に、私は黙って先を促す。
「数時間後、勤務を終えた侍女が、ケイティの部屋から宿舎に戻る途中に火をつけられた様です。まずは悲鳴を上げない様に、喉を焼いたのではないかと思われています。ちなみに侍女が火をつけられるところを見ている者は誰もいません。見ていたとしても、自分が殺される可能性がありますから名乗り出れないでしょうね」
「ワイアットは犯人の予想できる?」
「予想ですか…」
ワイアットが難しい顔をして口を閉ざした。
口に出すべきか迷っているみたい。
もちろん、私だって犯人が誰かなんてわかっている。
だけど、そんな事をするだなんて信じられなかった。
朝の早い時間なので、起きてはいたけれど、まだ使用人が来ておらず、自分でミルクとチョコレートを温めて、ホットチョコレートにしてコップに入れると、ワイアットと自分の前に置いた。
温かい飲み物を飲めば、少しは気持ちが落ち着く気がしたから。
「気に入らない人間を殺すという噂が流れ始めたら、どうなると思いますか?」
「わからないけれど、彼の事だから、口封じに人を殺していくかもしれないわ」
私の中では犯人は一人しか考えられないから、彼、と断定して言うと、ワイアットはホットチョコレートを一口飲んでから、大きく息を吐いた。
「陛下がこの事を知れば、精神的なもので病状が悪化するかもしれないと医者は言うんです。そのせいで同僚達も頭を抱えています。侍女が一人亡くなっただけと考えるか、犯人が彼かもしれないという事を重きにおくか、どうすれば良いか…」
「彼が自分がやったと言うなら、お伝えした方が良い様な気がするわ。人殺しだなんて、貴族だろうがなんだろうがやっていい事じゃないもの」
「証拠もないのに、素直に吐くと思いますか?」
「さすがにそこまで馬鹿ではないでしょうね」
答えると、ワイアットは顔を両手で覆って言う。
「元気な人でも、自分の息子が人を殺したと聞いたら精神的に負担がくるでしょう。それが怒りか悲しみかはわかりませんが、心身の負担になるはずです。それで、陛下の寿命が縮まったら…?」
「ワイアット、本当に彼の仕業かどうかはわからないわ。わかってから考えましょう。あなただけが悩む問題じゃないわ。多くの人間で判断しなくちゃいけない事よ」
ワイアットにそう言った時だった。
家の扉がノックされる音が聞こえた。
時計を確認すると、使用人達が来るにはまだ早い時間だったので、ワイアットには待っていてもらい、玄関に向かって声を掛ける。
「誰かしら?」
「ソフィア? 私よ」
ケイティの声だった。
彼女の声がワイアットにも聞こえたらしく、彼が私の所まで来てくれたけれど、無言で首を横に振る。
私とワイアットの婚約は保留になっているので、二人きりになっているのをケイティに知られたくなかった。
彼女の事だから、自分の事は棚に上げて、何を言い出すかわからない。
弱みになりそうな事を彼女に知られたくない。
そう思った私は、扉の鍵を開け、家の外に出た。
「あら、中に入れてくれないの?」
「長話するつもりなの?」
「いいえ。あなたに知らせたい事があっただけ」
「…知らせたい事?」
聞かなくてもわかるけれど、知らないふりをして聞き返すと、ケイティは笑った。
「昨日ね、私の侍女が死んだの!」
「笑って言う事じゃないと思うけど…。何にしてもお悔やみ申し上げるわ」
「あなたのせいよ」
「何の話?」
「侍女がマナーがおかしいと注意してきたの! 彼女は注意ではなく、私の為だとか何とか言っていたけど、貴族のマナーなんてどうでもいいのよ!」
ケイティの叫びに、私は無言で眉をひそめて、彼女を見た。
まさか、本当に注意された事だけで腹を立てて、侍女を殺したの?
「どうしたの、ソフィア、私の事が怖くなった?」
「そんな訳ないでしょう。それよりもあなた、侍女を殺したと自白しているの?」
「私は殺していないわ。殺してほしいと言いはしたかもしれないけれど。何もしていないわ」
「どうしてそんな事を…」
「だって、ソフィア、あなたのせいで人が死んだら悲しいでしょう? だから死んでくれないかなって思ったの」
「意味がわからないわ」
「あの侍女は陰で私より、ソフィアの方が王妃にふさわしいと言っていたらしいわ! あなたの手先なんでしょう!?」
「そんなわけないでしょう!」
ケイティがここまで病んでいるとは思わなかった。
私達の家に来たことで、彼女は病んでしまったの?
それとも元から?
「まあ、いいわ。動揺してるあなたの顔が見れたし十分。何より、私の悪口を言う女が、この世から一人消えたし、気分がいいわ!」
人が一人死んでいるのに、気分がいいだなんておかしい。
それに、彼女は手を下していないから、捕まえても、無実を訴えるに決まっている。
「あなた、本当に王妃になる気はあるの?」
「当たり前でしょう」
「なら、どうして、もっと自分以外の人間を思いやらないの!? 死んでしまった彼女も国民の一人なのよ!? しかも自分が気に入らないというだけの理由で死ねばいいと思うなんておかしいわ!」
「ソフィアのそういう綺麗事をいうところも嫌いなの。どうして私が国民の事を考えないといけないの? 思いやらない王妃じゃ国民が可哀想? そんなの私の知った事じゃないの。王様に愛されたから王妃なの。私の考えている王妃はそうなのよ。勝手にあなたのイメージを私に押し付けないで頂戴!」
「清廉潔白になれとは言わないけど、せめて人の死を喜ぶ様な王妃になろうとするのは止めて」
「ソフィア。それはあなたの価値観であって、私の価値観とは違うの」
国民の上に立つのだから、国民を大事にする国王や王妃でいてほしいと思うのは、私の勝手な願いだと、ケイティは言いたいみたいね。
「自分の幸せを優先する事は間違っていないわ。だけど、わざと人を傷付ける事はやってはいけない行為だという事くらいわかるでしょう!?」
「はあ? 別に他人がどうなろうが、私の知った事ではないわ。私の国に住んでいる以上、文句は言わせないわよ。嫌なら他国に引っ越せばいいじゃない」
「そんな事が簡単にできるわけないでしょう!」
その日一日を暮らすだけでも精一杯の人もいる。
何より、今まで築いてきた暮らしがある。
それなのに、引っ越せだなんて無茶な事を。
「安心してよ、ソフィア。大人しくしている人間を傷つけたりしないわ。ただ、私を悪く言ったり、不快な思いをさせる様な人間はいらないわ! ゼント殿下は王太子なのに、国王陛下のせいで、やれる事が少ないの。だけど、国王になったら違う! 王妃教育もマナーも何も関係ないわ! 文句を言う人間は殺せばいいだけだもの。文字が書けないなら書ける様に勉強しろ? 王妃教育を学んでこい? 上から目線で、そんな事を言う人間は殺してやるわ!」
「ケイティ、あなたが文字を書けない事、王妃教育をしたくない事は、国民がどうなろうが関係がないと言うなら、国民に迷惑をかけなければ、あなたの自由にすればいい事なのかもしれない。だけど、殺してやるという発言はしてはいけないものよ!」
少し前のケイティは少女らしい可愛さが見えていたのに、今は違う。
口調も見た目も、ただの傲慢で冷酷な人間だった。
これが彼女の本性だった。
私達は本能的にそれを感じ取っていたから、相容れない感情や考え方を持つ彼女と、無意識に関わらない様に避けていたんだわ。
「ソフィアに言われても傷付いたりなんかしない。いつか、王妃になったらあなたを処刑してやる。監察役っていう役なんか、なくしてあげるから。その時には命乞いしてよね? 醜く命乞いしてくれたら、助けてあげるかもしれない。まあ、全ては私が決める事だけれど」
「ケイティ、それはこっちのセリフよ。王太子殿下の恋人だからって、何をやっても、何を言っても許されるとは思わないで。王太子殿下が王太子でなくなれば、酷い場合は平民だからね」
「王太子殿下が王太子でなくなる? 何を言っているのかわからないわ。そんな事、あるわけないじゃない。そんな事になったら、それこそ、国王陛下が死んだ時には、この国が終わるわよ? 大人しく、ゼント殿下が国王になるのを待ちなさいよ。国王陛下だって…。あ、大変。さすがに国王陛下の悪口を言ったら、私も怒られちゃうわよね?」
「いいかげんにしなさいよ…」
「ソフィア。私、あなたの事、昔から大嫌いだった。家族から無条件に愛されて、何の努力もせずに魔法も使えて、フィート様とも仲が良くて、婚約者は王太子、いずれ、王妃になるだなんて! そんな事許せなかった。これ以上、あなたを幸せになんてしてやるもんですか! 私より幸せそうに見える人間は全て敵よ! この世界で一番幸せになるのは私なの! ソフィア、今はあなたを私の手で処刑はしてあげられないけど、あなたの権力では王太子には、そう簡単には逆らえない事もわかってる。指をくわえて私が幸せになっていくのを見ていればいいわ」
ケイティは言いたい事を言い終えると、背を向けて、城へ続く道を歩いていく。
周りにいた騎士達の何人かが、私の事を心配げな表情で見つめ、その他の騎士達は、ケイティの背中を睨むように見つめていた。
殺されてしまった侍女には本当に申し訳ない。
あなたという犠牲があって、やっと、私は目が覚めた。
相手は王太子。
この国は王族に絶対的といってもいい程の権力が与えられている。
だから、国王陛下に許可をもらっていたとしても、ゼント殿下は私より身分が上だからと、彼の不利になる事は何もできないと思い込んでいた。
もちろん、下手に動けば私の命の危険性もあったから。
本当にごめんなさい。
自分可愛さで犠牲を出してしまった。
だけど、これ以上、悲しい犠牲は出さない。
それが今の私に出来る事だわ…。
ケイティ。
それから、ケイティの為なら、何の躊躇いもなく、人を殺してしまうゼント殿下。
あなた達には、私に喧嘩を売った事を後悔してもらいましょう。
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