あなたとずっと一緒にいられますように

風見ゆうみ

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第一部

23 どういう意味ですか!

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 ルイス様のお友達の誕生日を祝うパーティーは、いつもの夜会とは違って、会場内にいる大人も若かった。
 普段なら、年配の方も見受けられるけれど、今日は数えるほどしかいない。

 ルイス様のお友達は主役だから、あちらこちらに引っ張りだこだった。
 だから、おめでとうの挨拶を交わしたあとは、気を遣われたのか、ほとんど会話もすることなく別れてしまった。
 
 そんなもので良いのかと聞いてみれば、話したいことがあれば、学園で話せるからと答えられた。

「フィリア、あっちにスイーツがあるぞ! 美味しそうだ! キーファも一緒に食べよう」
「僕は勤務中ですので遠慮しておきます」
「そんなことを言うなよ。お前が食べないなら、フィリアだって食べれなくなるだろ」
 
 ルイス様の言葉に、アットンは私のほうを見てから苦笑した。

「ルイス様が望まれるのでしたら」
「ああ。食べることを望む。そうだ。別にスイーツでなくても良い。食べたいものを食べてくれ」
「承知致しました」
  
 小さく頭を下げるアットンに話しかける。

「別に無理して食べなくていいからね」
「無理はしないよ。ただ、僕が食べないと君が食べにくいというのなら別だけど」
「私だって、あなたに無理をして食べてもらわないといけないほど、食べたいわけじゃないわよ」
「そうなの? そんな風には見えなかったけど」

 アットンは微笑して言った。

 馬鹿にされているのかしら?
 それだとしたら、腹が立つし食べてやるもんか。
 さっきまでアットンに、ドキドキしていたのは、きっと何かの間違いだと思う。

 そんな風に可愛くないことを考えていると、ルイス様がスイーツがたくさん置かれているテーブルを指差して言う。

「フィリア、どうせなら楽しい仕事の方が良いだろう? キーファもあまり、フィリアをからかうなよ。彼女は子供だから、すぐに意地を張るからな」
「気を付けます」
「ちょっと! 真面目に答えないでよ! それに、ルイス様、私が子供だからってどういう意味ですか!」
「そうやってムキになるところをルイス様は子供だって言ってるんだろう。ルイス様が許可されているのだから、好きな様に食べたらいいんだよ」
「さっきの話を聞いた以上食べにくいでしょう!」

 私だって、今日は遊びに来たんじゃないんだから、美味しそうな食べ物に浮かれている場合ではないことくらいわかっている。
 すると、アットンは少し考えてから、私に話しかけてきた。

「君はどれがオススメだと思う?」
「は?」
「テーブルに並べられているスイーツで、君のオススメは?」
「それは、食べてみないとわからないけど……。見た目だけで判断でもいいの?」
「うん」

 どうしてそんなことを聞いてくるのかわからないけれど、テーブルに近付き、取皿を手に取った。
 トングを使って、個人的に特に美味しそうに見えるものを皿にのせていく。
 皿の半分以上をミニケーキなどで埋めたところで、アットンに向かって皿を差し出す。

「選んでみたけど?」
「美味しいかどうかはわからないから、先に君が食べてみてよ」
「………」

 笑顔のアットンを無言で軽く睨む。
 
 私に食べさせようとして、わざとそんなことを言ったのね。

「いいんじゃないか? フィリア、食べて教えてあげればいい。それから、俺はちょっと用事を思い出した」
「勝手に動いては駄目ですよ、ルイス様」

 私とアットンを二人にさせようとしたのか、ルイス様がどこかへ行こうとしたけれど、アットンが引き止める。

「僕達がここへ来たのは、あなたの護衛です。パーティーを楽しみに来たのではありません」
「そんなにかたいことを言わなくてもいいだろう」

 ルイス様は不服そうにしたけれど、諦めて、私とアットンの間に立った。

「二人に見られながらは、食べにくいんですが……」
「なら、食べながら、さっきの男と話をしたらどうだ? あの辺なら人も少ないし、話は出来るだろう?」

 パーティー会場の隅を指差して、ルイス様は言う。

「そうですね。話をすることを忘れて帰ってしまわない様に、先に話だけしてきます」

 辺りを見回すと、人は多いけれど、メイディの姿はすぐに見つかったので、ケーキののった皿とフォークを持って、彼に近付いていく。

「メイディ」
「やあ、フィリア」
「今なら話せるんだけど、あなたは大丈夫?」

 彼の周りには女性が三人いて、私が話しかけると、女性達は全員、ムッとした表情になった。
 三人共私より少し年下くらいだろうか、とても若く見えて、子供がいる年齢には見えないので、親ではなく姉として付き添いで来たように思える。

 そういえば、メイディはモテていたし、確か婚約者もいなかったようだから、どこぞのご令嬢にしてみれば、話しかけるいい機会だったのかもしれない。
 申し訳ないことをしちゃったかも。

「時間をとってくれてありがとう」
「かまわないけど、ゆっくりは話せないわ」
「大丈夫だよ」

 メイディと私は女性達から離れて、ルイス様に指定された場所に移動して、話をすることになった。

「……で、何なの?」

 特に彼とは仲が良かったわけではない。
 だけど、仲が悪かったわけでもなく、彼の話したいことというのが、見当もつかない。

「婚約者と破談になったって話を聞いたよ」
「あ、ああ、まあね」
「ショックを受けてるんじゃないか?」
「最初はショックだったけど、一日も経たない内に復活したから大丈夫よ。お気遣いありがとう」

 野次馬根性で話しかけてきたのかと思うとイラッとしてしまい、失礼だとわかっていながらも、話の途中だというのに、イライラをおさえるために、ケーキを食べ始めた。

「いや、その、そんなことが言いたいんじゃなくて……」
「……何?」

 眉根を寄せて尋ねると、メイディは真剣な表情で私を見つめて、口を開いた。

「フィリアのこと、学生時代に、ずっと気になってたんだ。でも、君には婚約者がいるから、声を掛けれなかった」
「え?」
「もし、特定の相手がいないなら、俺と付き合ってくれないかな」
「えっ!?」

 突然の申し出に、私は近くにいた人が驚いて振り返るくらいの大きな声を出してしまった。



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