24 / 42
第一部
23 どういう意味ですか!
しおりを挟む
ルイス様のお友達の誕生日を祝うパーティーは、いつもの夜会とは違って、会場内にいる大人も若かった。
普段なら、年配の方も見受けられるけれど、今日は数えるほどしかいない。
ルイス様のお友達は主役だから、あちらこちらに引っ張りだこだった。
だから、おめでとうの挨拶を交わしたあとは、気を遣われたのか、ほとんど会話もすることなく別れてしまった。
そんなもので良いのかと聞いてみれば、話したいことがあれば、学園で話せるからと答えられた。
「フィリア、あっちにスイーツがあるぞ! 美味しそうだ! キーファも一緒に食べよう」
「僕は勤務中ですので遠慮しておきます」
「そんなことを言うなよ。お前が食べないなら、フィリアだって食べれなくなるだろ」
ルイス様の言葉に、アットンは私のほうを見てから苦笑した。
「ルイス様が望まれるのでしたら」
「ああ。食べることを望む。そうだ。別にスイーツでなくても良い。食べたいものを食べてくれ」
「承知致しました」
小さく頭を下げるアットンに話しかける。
「別に無理して食べなくていいからね」
「無理はしないよ。ただ、僕が食べないと君が食べにくいというのなら別だけど」
「私だって、あなたに無理をして食べてもらわないといけないほど、食べたいわけじゃないわよ」
「そうなの? そんな風には見えなかったけど」
アットンは微笑して言った。
馬鹿にされているのかしら?
それだとしたら、腹が立つし食べてやるもんか。
さっきまでアットンに、ドキドキしていたのは、きっと何かの間違いだと思う。
そんな風に可愛くないことを考えていると、ルイス様がスイーツがたくさん置かれているテーブルを指差して言う。
「フィリア、どうせなら楽しい仕事の方が良いだろう? キーファもあまり、フィリアをからかうなよ。彼女は子供だから、すぐに意地を張るからな」
「気を付けます」
「ちょっと! 真面目に答えないでよ! それに、ルイス様、私が子供だからってどういう意味ですか!」
「そうやってムキになるところをルイス様は子供だって言ってるんだろう。ルイス様が許可されているのだから、好きな様に食べたらいいんだよ」
「さっきの話を聞いた以上食べにくいでしょう!」
私だって、今日は遊びに来たんじゃないんだから、美味しそうな食べ物に浮かれている場合ではないことくらいわかっている。
すると、アットンは少し考えてから、私に話しかけてきた。
「君はどれがオススメだと思う?」
「は?」
「テーブルに並べられているスイーツで、君のオススメは?」
「それは、食べてみないとわからないけど……。見た目だけで判断でもいいの?」
「うん」
どうしてそんなことを聞いてくるのかわからないけれど、テーブルに近付き、取皿を手に取った。
トングを使って、個人的に特に美味しそうに見えるものを皿にのせていく。
皿の半分以上をミニケーキなどで埋めたところで、アットンに向かって皿を差し出す。
「選んでみたけど?」
「美味しいかどうかはわからないから、先に君が食べてみてよ」
「………」
笑顔のアットンを無言で軽く睨む。
私に食べさせようとして、わざとそんなことを言ったのね。
「いいんじゃないか? フィリア、食べて教えてあげればいい。それから、俺はちょっと用事を思い出した」
「勝手に動いては駄目ですよ、ルイス様」
私とアットンを二人にさせようとしたのか、ルイス様がどこかへ行こうとしたけれど、アットンが引き止める。
「僕達がここへ来たのは、あなたの護衛です。パーティーを楽しみに来たのではありません」
「そんなにかたいことを言わなくてもいいだろう」
ルイス様は不服そうにしたけれど、諦めて、私とアットンの間に立った。
「二人に見られながらは、食べにくいんですが……」
「なら、食べながら、さっきの男と話をしたらどうだ? あの辺なら人も少ないし、話は出来るだろう?」
パーティー会場の隅を指差して、ルイス様は言う。
「そうですね。話をすることを忘れて帰ってしまわない様に、先に話だけしてきます」
辺りを見回すと、人は多いけれど、メイディの姿はすぐに見つかったので、ケーキののった皿とフォークを持って、彼に近付いていく。
「メイディ」
「やあ、フィリア」
「今なら話せるんだけど、あなたは大丈夫?」
彼の周りには女性が三人いて、私が話しかけると、女性達は全員、ムッとした表情になった。
三人共私より少し年下くらいだろうか、とても若く見えて、子供がいる年齢には見えないので、親ではなく姉として付き添いで来たように思える。
そういえば、メイディはモテていたし、確か婚約者もいなかったようだから、どこぞのご令嬢にしてみれば、話しかけるいい機会だったのかもしれない。
申し訳ないことをしちゃったかも。
「時間をとってくれてありがとう」
「かまわないけど、ゆっくりは話せないわ」
「大丈夫だよ」
メイディと私は女性達から離れて、ルイス様に指定された場所に移動して、話をすることになった。
「……で、何なの?」
特に彼とは仲が良かったわけではない。
だけど、仲が悪かったわけでもなく、彼の話したいことというのが、見当もつかない。
「婚約者と破談になったって話を聞いたよ」
「あ、ああ、まあね」
「ショックを受けてるんじゃないか?」
「最初はショックだったけど、一日も経たない内に復活したから大丈夫よ。お気遣いありがとう」
野次馬根性で話しかけてきたのかと思うとイラッとしてしまい、失礼だとわかっていながらも、話の途中だというのに、イライラをおさえるために、ケーキを食べ始めた。
「いや、その、そんなことが言いたいんじゃなくて……」
「……何?」
眉根を寄せて尋ねると、メイディは真剣な表情で私を見つめて、口を開いた。
「フィリアのこと、学生時代に、ずっと気になってたんだ。でも、君には婚約者がいるから、声を掛けれなかった」
「え?」
「もし、特定の相手がいないなら、俺と付き合ってくれないかな」
「えっ!?」
突然の申し出に、私は近くにいた人が驚いて振り返るくらいの大きな声を出してしまった。
普段なら、年配の方も見受けられるけれど、今日は数えるほどしかいない。
ルイス様のお友達は主役だから、あちらこちらに引っ張りだこだった。
だから、おめでとうの挨拶を交わしたあとは、気を遣われたのか、ほとんど会話もすることなく別れてしまった。
そんなもので良いのかと聞いてみれば、話したいことがあれば、学園で話せるからと答えられた。
「フィリア、あっちにスイーツがあるぞ! 美味しそうだ! キーファも一緒に食べよう」
「僕は勤務中ですので遠慮しておきます」
「そんなことを言うなよ。お前が食べないなら、フィリアだって食べれなくなるだろ」
ルイス様の言葉に、アットンは私のほうを見てから苦笑した。
「ルイス様が望まれるのでしたら」
「ああ。食べることを望む。そうだ。別にスイーツでなくても良い。食べたいものを食べてくれ」
「承知致しました」
小さく頭を下げるアットンに話しかける。
「別に無理して食べなくていいからね」
「無理はしないよ。ただ、僕が食べないと君が食べにくいというのなら別だけど」
「私だって、あなたに無理をして食べてもらわないといけないほど、食べたいわけじゃないわよ」
「そうなの? そんな風には見えなかったけど」
アットンは微笑して言った。
馬鹿にされているのかしら?
それだとしたら、腹が立つし食べてやるもんか。
さっきまでアットンに、ドキドキしていたのは、きっと何かの間違いだと思う。
そんな風に可愛くないことを考えていると、ルイス様がスイーツがたくさん置かれているテーブルを指差して言う。
「フィリア、どうせなら楽しい仕事の方が良いだろう? キーファもあまり、フィリアをからかうなよ。彼女は子供だから、すぐに意地を張るからな」
「気を付けます」
「ちょっと! 真面目に答えないでよ! それに、ルイス様、私が子供だからってどういう意味ですか!」
「そうやってムキになるところをルイス様は子供だって言ってるんだろう。ルイス様が許可されているのだから、好きな様に食べたらいいんだよ」
「さっきの話を聞いた以上食べにくいでしょう!」
私だって、今日は遊びに来たんじゃないんだから、美味しそうな食べ物に浮かれている場合ではないことくらいわかっている。
すると、アットンは少し考えてから、私に話しかけてきた。
「君はどれがオススメだと思う?」
「は?」
「テーブルに並べられているスイーツで、君のオススメは?」
「それは、食べてみないとわからないけど……。見た目だけで判断でもいいの?」
「うん」
どうしてそんなことを聞いてくるのかわからないけれど、テーブルに近付き、取皿を手に取った。
トングを使って、個人的に特に美味しそうに見えるものを皿にのせていく。
皿の半分以上をミニケーキなどで埋めたところで、アットンに向かって皿を差し出す。
「選んでみたけど?」
「美味しいかどうかはわからないから、先に君が食べてみてよ」
「………」
笑顔のアットンを無言で軽く睨む。
私に食べさせようとして、わざとそんなことを言ったのね。
「いいんじゃないか? フィリア、食べて教えてあげればいい。それから、俺はちょっと用事を思い出した」
「勝手に動いては駄目ですよ、ルイス様」
私とアットンを二人にさせようとしたのか、ルイス様がどこかへ行こうとしたけれど、アットンが引き止める。
「僕達がここへ来たのは、あなたの護衛です。パーティーを楽しみに来たのではありません」
「そんなにかたいことを言わなくてもいいだろう」
ルイス様は不服そうにしたけれど、諦めて、私とアットンの間に立った。
「二人に見られながらは、食べにくいんですが……」
「なら、食べながら、さっきの男と話をしたらどうだ? あの辺なら人も少ないし、話は出来るだろう?」
パーティー会場の隅を指差して、ルイス様は言う。
「そうですね。話をすることを忘れて帰ってしまわない様に、先に話だけしてきます」
辺りを見回すと、人は多いけれど、メイディの姿はすぐに見つかったので、ケーキののった皿とフォークを持って、彼に近付いていく。
「メイディ」
「やあ、フィリア」
「今なら話せるんだけど、あなたは大丈夫?」
彼の周りには女性が三人いて、私が話しかけると、女性達は全員、ムッとした表情になった。
三人共私より少し年下くらいだろうか、とても若く見えて、子供がいる年齢には見えないので、親ではなく姉として付き添いで来たように思える。
そういえば、メイディはモテていたし、確か婚約者もいなかったようだから、どこぞのご令嬢にしてみれば、話しかけるいい機会だったのかもしれない。
申し訳ないことをしちゃったかも。
「時間をとってくれてありがとう」
「かまわないけど、ゆっくりは話せないわ」
「大丈夫だよ」
メイディと私は女性達から離れて、ルイス様に指定された場所に移動して、話をすることになった。
「……で、何なの?」
特に彼とは仲が良かったわけではない。
だけど、仲が悪かったわけでもなく、彼の話したいことというのが、見当もつかない。
「婚約者と破談になったって話を聞いたよ」
「あ、ああ、まあね」
「ショックを受けてるんじゃないか?」
「最初はショックだったけど、一日も経たない内に復活したから大丈夫よ。お気遣いありがとう」
野次馬根性で話しかけてきたのかと思うとイラッとしてしまい、失礼だとわかっていながらも、話の途中だというのに、イライラをおさえるために、ケーキを食べ始めた。
「いや、その、そんなことが言いたいんじゃなくて……」
「……何?」
眉根を寄せて尋ねると、メイディは真剣な表情で私を見つめて、口を開いた。
「フィリアのこと、学生時代に、ずっと気になってたんだ。でも、君には婚約者がいるから、声を掛けれなかった」
「え?」
「もし、特定の相手がいないなら、俺と付き合ってくれないかな」
「えっ!?」
突然の申し出に、私は近くにいた人が驚いて振り返るくらいの大きな声を出してしまった。
34
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる