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第一部
40 告白します
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私の家の馬車が迎えに来てくれたので、どうしようか迷っていると、ルイス様に話しかけられる。
「詳しい話を聞きたいから、せっかく来てもらったのに悪いが、フィリアの家の馬車には誰ものせずに帰ってもらって、フィリアは俺の用意した馬車で帰らないか?」
「それはかまわないのですが……」
「なら帰ろう。キーファ、お前も一緒に帰ろう」
ルイス様がアットンに声を掛けると、彼は首を横に振る。
「申し訳ございませんが、僕は彼らと一緒に警察に行ってきます。誰に頼まれたかなど確認したいこともありますので」
「……そうか。誰かが事情を説明しないといけないのも確かだしな。ではキーファ、勤務時間外なのに済まない。あとで残業時間の申告をしてくれ。その分の給料は払う」
「自分が勝手にやることですので、お気持ちだけ受け取っておきます」
「駄目だ! 労働の対価は払わなければならん!」
「自分がしたいからしているだけです。労働ではありません」
アットンは微笑んでから頭を下げると、やって来た警察のところへ事情を話しに行ってしまった。
アットンに助けてもらったお礼は言えないまま、私はルイス様が用意してくれた馬車に乗り込む。
「フィリア、その……、勝手な真似をしてしまって悪かった」
馬車が私の家に向かって走り出してすぐに、向かいに座るルイス様が頭を下げてきた。
「私は気にしていませんから謝らないで下さい。でも、どうしてここへ?」
「なんだか嫌な予感がしてな。大丈夫だと思うようにしていたんだが、やはり、お前に何かあって後悔するよりかは、怒られてでも無事を確保するほうが良いと思ったんだ」
「そんなことを言われましたら、怒りたくても怒れないじゃないですか。助けに来ていただきありがとうございます」
「お前を助けたのはキーファだ。どうしても胸騒ぎがおさまらないと相談したら、彼がお前を迎えに行くと言ってくれたんだ。俺も気になるから同行させてもらったんだ」
「でも、ルイス様が声を掛けてくださらなかったら、アットンはここには来てくれなかったと思いますから」
笑顔で答えてから、深々と頭を下げる。
「ルイス様、本当にありがとうございました。助けていただいたこともそうですし、今日の同窓会に行くようにすすめてくださったことにも感謝してます」
「それなら良かったが……」
まだ不安げな表情をしているルイス様に、私は宣言する。
「ルイス様、私、アットンに告白します」
私の言葉を聞いたルイス様は焦った様子で聞いてくる。
「ど、どうしたんだ、いきなり?」
「このまま、ダラダラ思い続けるのは嫌なんです」
「気持ちはわからないでもないが、えらく急だな。だけど、フィリアがそう決めたなら俺は止めない。応援はするがな!」
「ありがとうございます!」
両拳を握りしめるルイス様に、お礼を言った。
ウジウジ考えているなんて私らしくないわ。
フラレるだろうけれど、いつまでもこのままじゃいけないものね。
「詳しい話を聞きたいから、せっかく来てもらったのに悪いが、フィリアの家の馬車には誰ものせずに帰ってもらって、フィリアは俺の用意した馬車で帰らないか?」
「それはかまわないのですが……」
「なら帰ろう。キーファ、お前も一緒に帰ろう」
ルイス様がアットンに声を掛けると、彼は首を横に振る。
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「ルイス様、本当にありがとうございました。助けていただいたこともそうですし、今日の同窓会に行くようにすすめてくださったことにも感謝してます」
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