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3 「絶対に婚約を解消なんてしない」
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「お久しぶりですわね、レイシール様」
「ロアリンか。久しぶりだね。元気そうで良かったよ。君に会うのは何年ぶりかな?」
「2年ぶりですわ」
ロアリン様はレイシール様に微笑むと、髪と同じ色のダークパープルの瞳を私に向けて尋ねる。
「こちらの方はどなたでしょうか?」
「君の義理の姉になるエアリーだよ。可愛いだろう?」
レイシール様はベラに頬を寄せて言う。
そんな状態で言われても、ベラの事を可愛いと言っているのか、私の事を言っているのかわからないわね。
鼻で笑いそうになるのを何とかこらえた。
「エアリー様? まあ、それは失礼いたしました」
ロアリン様はプリンセスラインのドレスの裾を軽くつまんでカーテシーをしてくる。
「ロアリン・トッシーウと申します。エアリー様にお会い出来て光栄ですわ」
「エアリー・ブロンクスです。ロアリン様にお会い出来て光栄です」
私もカーテシーをしてから頭を上げると、ロアリン様と目が合った。
すると、ロアリン様はすぐに目を逸らして眉根を寄せる。
「本当にオレンジ色の瞳なのですね」
「瞳の色がオレンジだと何か問題があるのですか?」
特にオレンジ色の瞳がこの国に災いをもたらすなどの言い伝えを聞いたことがない。
それなのに、レイシール様もロアリン様も拒否反応を示す理由がわからなかった。
「問題があるというわけではありませんが、好きな色ではありませんの」
ロアリン様はそう答えた後に、私とベラを交互に見て嘲笑する。
「それにしても、この様子ですと、どちらが婚約者かわかりませんわね」
「そうでしょう? ですから、婚約者の変更をお願いしていたところでした」
「まあ、そうなんですね!」
私の答えを聞いたロアリン様は笑顔で手を合わせると、レイシール様を見て尋ねる。
「どうされるおつもりですの?」
「どうする、とは?」
「婚約者の変更をされますの?」
「いや、そのつもりはないよ。僕はエアリーのことを愛しているから」
また、愛しているだなんてわけのわからないことを言い出した。
絶対にありえない。
顔がよっぽど好みだったとしても、愛しているだなんて変でしょう。
それなら、顔だけ愛していると言ってほしい。
顔だけ愛してると言えないのは、瞳の色が嫌いだから?
もしくは、レイシール様は一目惚れだなんて嘘をついているだけで、私を良いように使いたいだけか。
顔のことで思い出して、レイシール様に尋ねてみる。
「そういえば、レイシール様は私の妹と結婚したかったのではないのですか?」
「ううん。そうじゃない。最初から僕も両親も君が希望だったよ」
「……どういうことでしょう?」
眉根を寄せる私を見て、レイシール様は微笑む。
「多くの女性は自分の夫には自分だけを見てほしいと願うだろう? でも、君は愛人は認めざるを得ないことであると最初から受け止めてくれそうだった。そして、予想通りに君は文句を一つも言わなかった」
どうして、そんな事がわかるの?
「まさか、私のことを調べておられたのですか?」
「そうだよ? 面倒な婚約者なんていらない。妹は甘えん坊さんみたいで、それはそれで可愛いけど、僕が必要なのか妹の方じゃなくて君だった。君の両親が君を差し出すだろうって事も予想はついていたんだよ」
「私がレイシール様の愛人関係に関して文句を言えば、ベラに婚約者の変更をしていただけるのですか?」
「それはない。ベラは可愛いが仕事ができるわけじゃない。王太子妃に必要なのは、そこそこの外見と礼儀作法、それから、感情をコントロールできることだ」
お飾りの妻がほしいのだと最初から言えばいいものを。
ベラだとお飾りの妻にならないと言いたいのね?
「君は納得いってないようだけど、本当に僕は君を愛しているんだよ。これからも僕と国の為に頑張ってほしい」
「愛人を許し、私よりも優秀な人物が見つかれば良いのですね?」
「駄目だ」
「はい?」
「僕は君を妻にすると決めた。君には伝えていなかったが、君が20歳になる年に結婚するつもりだった」
私が確認していなかったから悪いのか、そんな話は初耳だった。
「私である必要性がわかりません!」
「君が嫌がっても無駄だよ。僕が決めたんだ。それに両親も君を気に入っている。逃げられると思わないでね?」
レイシール様は笑顔で言うと、ベラに視線を向ける。
「エアリーにバレてしまったという事は、もう君は侍女ではいられないだろう。しょうがないから、君も愛人の一人にしてあげるね」
「嬉しいです!」
ベラは幸せそうな表情で頷くと、私の方に目を向ける。
「ごめんね、エアリー。私は友情よりも愛する人を取るわ。あなたもこの気持ちがいつかわかるはずよ」
「悪いな、エアリー。ベラは僕がもらうよ」
「どうしたら婚約を解消してくださるんですか!」
声を荒らげると、レイシール様は爽やかや笑みを浮かべる。
「エアリー、聞き分けの悪い子は嫌いだよ。悪いけど、無駄な考えだと思って諦めて? 僕は絶対に婚約を解消なんてしない」
レイシール様は話は終わりだと言わんばかりに、ベラを連れて自室に入っていった。
嫌いだと言うのであれば、婚約者の座から外してくれればいいものを。
優秀な人間を見つけても私を逃さないだなんて、ただの嫌がらせだわ。
「お気の毒ですわね」
ロアリン様は嘲笑した後、待たせていた侍女たちと一緒に去っていった。
この時のロアリン様は、レイシール様に対して特別な感情を持っているようには思えなかった。
けれど、数日後に会った時の彼女のレイシール様への態度は、驚くほどに急変していたのだった。
「ロアリンか。久しぶりだね。元気そうで良かったよ。君に会うのは何年ぶりかな?」
「2年ぶりですわ」
ロアリン様はレイシール様に微笑むと、髪と同じ色のダークパープルの瞳を私に向けて尋ねる。
「こちらの方はどなたでしょうか?」
「君の義理の姉になるエアリーだよ。可愛いだろう?」
レイシール様はベラに頬を寄せて言う。
そんな状態で言われても、ベラの事を可愛いと言っているのか、私の事を言っているのかわからないわね。
鼻で笑いそうになるのを何とかこらえた。
「エアリー様? まあ、それは失礼いたしました」
ロアリン様はプリンセスラインのドレスの裾を軽くつまんでカーテシーをしてくる。
「ロアリン・トッシーウと申します。エアリー様にお会い出来て光栄ですわ」
「エアリー・ブロンクスです。ロアリン様にお会い出来て光栄です」
私もカーテシーをしてから頭を上げると、ロアリン様と目が合った。
すると、ロアリン様はすぐに目を逸らして眉根を寄せる。
「本当にオレンジ色の瞳なのですね」
「瞳の色がオレンジだと何か問題があるのですか?」
特にオレンジ色の瞳がこの国に災いをもたらすなどの言い伝えを聞いたことがない。
それなのに、レイシール様もロアリン様も拒否反応を示す理由がわからなかった。
「問題があるというわけではありませんが、好きな色ではありませんの」
ロアリン様はそう答えた後に、私とベラを交互に見て嘲笑する。
「それにしても、この様子ですと、どちらが婚約者かわかりませんわね」
「そうでしょう? ですから、婚約者の変更をお願いしていたところでした」
「まあ、そうなんですね!」
私の答えを聞いたロアリン様は笑顔で手を合わせると、レイシール様を見て尋ねる。
「どうされるおつもりですの?」
「どうする、とは?」
「婚約者の変更をされますの?」
「いや、そのつもりはないよ。僕はエアリーのことを愛しているから」
また、愛しているだなんてわけのわからないことを言い出した。
絶対にありえない。
顔がよっぽど好みだったとしても、愛しているだなんて変でしょう。
それなら、顔だけ愛していると言ってほしい。
顔だけ愛してると言えないのは、瞳の色が嫌いだから?
もしくは、レイシール様は一目惚れだなんて嘘をついているだけで、私を良いように使いたいだけか。
顔のことで思い出して、レイシール様に尋ねてみる。
「そういえば、レイシール様は私の妹と結婚したかったのではないのですか?」
「ううん。そうじゃない。最初から僕も両親も君が希望だったよ」
「……どういうことでしょう?」
眉根を寄せる私を見て、レイシール様は微笑む。
「多くの女性は自分の夫には自分だけを見てほしいと願うだろう? でも、君は愛人は認めざるを得ないことであると最初から受け止めてくれそうだった。そして、予想通りに君は文句を一つも言わなかった」
どうして、そんな事がわかるの?
「まさか、私のことを調べておられたのですか?」
「そうだよ? 面倒な婚約者なんていらない。妹は甘えん坊さんみたいで、それはそれで可愛いけど、僕が必要なのか妹の方じゃなくて君だった。君の両親が君を差し出すだろうって事も予想はついていたんだよ」
「私がレイシール様の愛人関係に関して文句を言えば、ベラに婚約者の変更をしていただけるのですか?」
「それはない。ベラは可愛いが仕事ができるわけじゃない。王太子妃に必要なのは、そこそこの外見と礼儀作法、それから、感情をコントロールできることだ」
お飾りの妻がほしいのだと最初から言えばいいものを。
ベラだとお飾りの妻にならないと言いたいのね?
「君は納得いってないようだけど、本当に僕は君を愛しているんだよ。これからも僕と国の為に頑張ってほしい」
「愛人を許し、私よりも優秀な人物が見つかれば良いのですね?」
「駄目だ」
「はい?」
「僕は君を妻にすると決めた。君には伝えていなかったが、君が20歳になる年に結婚するつもりだった」
私が確認していなかったから悪いのか、そんな話は初耳だった。
「私である必要性がわかりません!」
「君が嫌がっても無駄だよ。僕が決めたんだ。それに両親も君を気に入っている。逃げられると思わないでね?」
レイシール様は笑顔で言うと、ベラに視線を向ける。
「エアリーにバレてしまったという事は、もう君は侍女ではいられないだろう。しょうがないから、君も愛人の一人にしてあげるね」
「嬉しいです!」
ベラは幸せそうな表情で頷くと、私の方に目を向ける。
「ごめんね、エアリー。私は友情よりも愛する人を取るわ。あなたもこの気持ちがいつかわかるはずよ」
「悪いな、エアリー。ベラは僕がもらうよ」
「どうしたら婚約を解消してくださるんですか!」
声を荒らげると、レイシール様は爽やかや笑みを浮かべる。
「エアリー、聞き分けの悪い子は嫌いだよ。悪いけど、無駄な考えだと思って諦めて? 僕は絶対に婚約を解消なんてしない」
レイシール様は話は終わりだと言わんばかりに、ベラを連れて自室に入っていった。
嫌いだと言うのであれば、婚約者の座から外してくれればいいものを。
優秀な人間を見つけても私を逃さないだなんて、ただの嫌がらせだわ。
「お気の毒ですわね」
ロアリン様は嘲笑した後、待たせていた侍女たちと一緒に去っていった。
この時のロアリン様は、レイシール様に対して特別な感情を持っているようには思えなかった。
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