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8  「僕に改革をさせたくないんだよ」

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 妖精さんの名前はデルトロさんで、何百年も城の地下から出たことはなかったらしい。

「久しぶりの地上は、やっぱり良いね!」
 
 デルトロさんはフワフワと部屋中を飛び回った後に、我に返ったのか、慌てた顔をして口を開く。

「こんなことをしている場合じゃなかった! 毒で苦しんだふりをしないと怪しまれる。ダニエル! 君はロアリン嬢や他の人に彼女は今、毒と戦っているという話をしてきてほしい」
「わかりました」

 ダニエル殿下は私を優しくベッドの上に下ろすと、急いで部屋を出ていった。
 落ち着かなくて、ずり落ちる服を手でおさえて、部屋の中を見回す。
 私が履いていた靴は、いつの間にか、ベッドの横に揃えて置かれていた。
 デルトロさんが運んでくれたのかもしれない。

 下着などはダニエル殿下が服と一緒に抱えてくれていたから、今、この場にある。

「わたちは、どうちたらよいのでしょー」
「そうだね。元に戻るまでは、この部屋から絶対に出ないこと! それから、毒で苦しんでいたという演技をするんだ」
「わかりまちた」
「あと、君の寝間着も用意して? 元に戻った時に何も着ていないのは変だからね」

 デルトロさんに言われてベッドから下りようとした。
 でも、体が小さくなっている私には、たとえ下りられたとしても、また、ベッドの上に上がるのは難しそうだった。

「しょうがないなあ」

 デルトロさんは小さく息を吐いた。
 すると、私の体がふわりと浮かび上がった。

「わあ!?」
「好きなように動いてよ。引き出しが開けられないなら開けてあげる」
「ありがとうございましゅ」

 デルトロさんのおかげで、無事に寝巻きを用意できた私は、寝巻きを抱えてシーツの中に潜り込んだ。

 それからしばらくして、ダニエル殿下が部屋に戻ってきた。

 レイシール様は愛人たちといちゃいちゃしていて、真っ最中だったらしいから、私のことは話さなかったと教えてくれた。
 両陛下と問題のロアリン様は私の様子を見に来たがったらしい。
 でも、話せる状況ではないと医者が言っているからと話をしてくれたらしい。
 かといって、部屋に訪ねて来る人はいた。

 デルトロさんは人に変身することができ、誰かが訪ねてくるたびにメイドの姿になったり、医者の格好をした人になったりして、相手を追い返してくれた。
 
 しばらくして、ダニエル殿下は女性の部屋に長居するのはいけないと言って、部屋から出て行こうとした。

 でも、デルトロさんがそれを引き止めた。

「彼女はこんな状況になって不安だと思うよ。だから、君が付いてあげて話をするんだ」
「話なら明日でも良いでしょう。それに話はデルトロがしてあげてください」
「君たちのトラブルに僕が手を貸してるんだから、簡単な説明くらい君がしてくれよ。誤解させないように手は打つからさ」

 デルトロ様にそう言われたダニエル殿下は、ベッドの近くに安楽椅子を持ってきて、詳しい話をしてくれた。

「ロアリン嬢は魔法にとても興味がある。この国では魔法を使える人間は少ない。でも、ロアリン嬢はどうしても魔法を使いたくて、僕と一緒に留学していた」
「どうちて、ダニエルでんかまでりゅーがくちていたんでしゅか?」
「兄上が両親に頼んだんだよ。そして、瞳の色を変える魔法を覚えさせるために、僕を他国に留学させた」
「……しょれは」

 この言い方だと、両陛下はレイシール様のワガママを優先させたということになる。

「両親は言い伝えを信じている」
「オレンジいろのひとみをもつものが、かいかくをしゅるというはなちでしゅか?」
「うん。あなたを婚約者の座から逃さないのは、改革をさせないためだよ」
「……どういうことでしゅか?」
「改革を改革させるというつもりでいるんじゃないかな。両親も兄上がこのままでは駄目な国王になるとわかっている。でも、僕に改革をさせたくないんだよ」

 難しい話になってきたわ。

 話を整理すると、両陛下はレイシール様が駄目な人間だと理解している。
 でも、ダニエル殿下が改革するということは、レイシール様の失脚を意味する。
 両陛下はそれをさせたくない、レイシール様は失脚したくないから、同じく、オレンジ色の瞳を持つ私で対抗しようとしてるってこと?
 
 そんなの、無理がありすぎるわ!

 それに、どうして私は幼児化してしまったの!?




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昨年はお読みいただき、本当にありがとうございます!
本年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m

そして、名前を間違いまくっていて申し訳ございません……。
本年は誤字脱字も含めてミスを減らすように精進して参ります。
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