婚約解消しろ? 頼む相手を間違えていますよ?

風見ゆうみ

文字の大きさ
19 / 30

15 大丈夫ですよね?

 お仕事時間中に申し訳ないですが、言いたいことを言ってしまおうと、ラルフ様の部屋に行くと、それはもう大歓迎されましたが。

「婚約解消できませんか?」
「無理だな」

 私の言葉を聞くと、すぐに笑顔を消して却下すると、慌てた表情で言います。

「どうしてまたそんな事を? まだ三日目だろう?」
「まだ三日目なのに、精神的な疲れが酷いのです!」
「何があったか聞かせてくれ」

 なぜか、ラルフ様の執務机の椅子に座らされたかと思うと、すぐに抱き上げられ、太ももの上にのせられ、お腹をラルフ様の腕にホールドされた状態で話す事になりました。

 とても恥ずかしいのです。

 ですが、まずは言わないといけない事を忘れていたので、そのままの状態でラルフ様に言う。

「一人、フレイ様付きのメイドをこちらに配属されましたか?」
「いや、俺はそんな事はしていないが…。もしかすると、メイド長が決めたのかもしれないな。フレイの面倒を見る必要がなくなったからな」
「大変失礼な事をお聞きしますけど、まさか、フレイ様はメイドにも手を出したりしていませんよね?」
「…それに関してはなんとも言えん。だから、あいつを外に出す訳にはいかない」
「否定しないという事は、メイドに手を出してたんですね」

 これ以上は呆れて物が言えません。
 フレイ様は本当にラルフ様と兄弟なんでしょうか。
 もしかして、ラルフ様も色んな女性をとっかえひっかえしたりしているのでしょうか。
 そう思うと、なんだかショックです。
 この国の貴族は妻がいても未婚の愛人を持つのが当たり前なので、私が妻になっても、いつしかラルフ様は愛人をお迎えになるのでしょうけれど…。

「どうかしたか?」

 無防備でいたためか、ちゅ、と音を立てて私の頬にキスをされたあと、つかまれて動けない事をいい事に、色んな所にキスをしてこられます。

「ラルフ様! そういう事はまだ早いのです!」
「では、早く式を挙げよう。役所に婚姻届も出さないとな」
「そんな話をしているんじゃありません!」

 ラルフ様には力ではかなわないので、手の甲の皮を少しだけつまんでみると、大して痛くもなさそうでしたが、私が抗議している事は伝わったようで、話を戻して下さいます。

「メイドをどうしてほしいんだ?」
「フレイ様付きのメイドを私の所にまわすのはやめていただきたいのです。特に、カーミラ様達と仲の良い方々は」
「わかった。それから、しばらくは母上達と夕食を共にするのも止めておこう」
「良いのですか?」
「ああ。それにケイン達がうるさいんだ。結婚前に母上達と長く関わらせると、リノアが逃げてしまうとな」

 まさに、そんな気分だったわけですが、皆様にそんな風に気遣ってもらえるなら、気持ちが少しだけ楽になります。

「ケイン様達にお礼を言わないといけませんね」
「リノアはよくケインを褒めるんだな」
「あら。別にケイン様一人だけ褒めたわけではありませんが、ケイン様は気遣い上手ですもの。さぞかし、女性にも人気があるのでしょうね」
「人気はあるかもしれないが、意中の女性には相手にされていないようだ」
「意中の方がいらっしゃるのですか!」

 詳しく聞いてはいけない話かもしれませんが、気になってしまいます。
 すると、なぜかラルフ様はしまった、と言わんばかりの顔をされました。

「どうかされました? もしかして、私には話してはいけないと言われていたとか?」
「いや。余計にリノアがケインに興味を持ってしまった、と思ってな」
「それは、そうかもですが…」
「ケイン!」

 お部屋の外で待機していたケイン様の名を呼ばれ、彼が入ってくると、ラルフ様は言われました。

「今日はお前に褒美をやる」
「え、どうしたんですか」
「リノアに気分転換させてやりたい。お前ならどこか知ってるな?」
「知ってます」
「あと、ミリーをリノアに紹介してやってくれ」

 ミリーという方はケイン様の思い人なのでしょうか。
 名前を聞いた途端、ケイン様はぴくりと眉を動かされましたから。

「リノアもこっちで友達が欲しいだろう? 平民と一緒に貴族用のレストランで働いている男爵令嬢だ。性格の良さはケインのお墨付きだ」
「お友達は欲しいのです」
「…いいですけど、ラルフ様、アイツがいたらどうするんです」
「リノアに話しかけたら殺せ」
「いや、いきなり殺すは無理ですよ」

 何やら物騒な話をしておられますが、大丈夫でしょうか。
 でも、外に出ている間はカーミラ様達にも会わないでしょうし、大丈夫ですよね?

あなたにおすすめの小説

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

諦めていた自由を手に入れた令嬢

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢シャーロットは婚約者であるニコルソン王太子殿下に好きな令嬢がいることを知っている。 これまで二度、婚約解消を申し入れても国王夫妻に許してもらえなかったが、王子と隣国の皇女の婚約話を知り、三度目に婚約解消が許された。 実家からも逃げたいシャーロットは平民になりたいと願い、学園を卒業と同時に一人暮らしをするはずが、実家に知られて連れ戻されないよう、結婚することになってしまう。 自由を手に入れて、幸せな結婚まで手にするシャーロットのお話です。

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、ハーメルンなど他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」  公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。  それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。  そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。  ※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。

家も婚約者も、もう要りません。今の私には、すべてがありますから

阿里
恋愛
「嫉妬深い女」と濡れ衣を着せられ、家も婚約者も妹に奪われた侯爵令嬢エレナ。 雨の中、たった一人で放り出された私を拾ってくれたのは、身分を隠した第二王子でした。 彼に求婚され、王宮で輝きを取り戻した私が舞踏会に現れると、そこには没落した元家族の姿が……。 ねぇ、今さら私にすり寄ってきたって遅いのです。だって、私にはもう、すべてがあるのですから。