婚約解消しろ? 頼む相手を間違えていますよ?

風見ゆうみ

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22 何を覚えていればいいのでしょう?

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 次の日、ミリー様が早まった事をしないように、まずはお話を聞かせてもらいたいというお手紙を書いて、騎士の方に急ぎで持っていってもらうようにお願いした。
 たぶん、ケイン様が持っていかれると思われます。
 ミリー様にとっては余計なお世話かもしれませんが、誰でも良いというのであれば、ケイン様でも良いはずです。
 本当は直接、お話をお伺いできれば良いのですが、今日の私には用事がありました。
 用事というのは、ラルフ様から昼食を共にと、お誘いを受けたからです。
 そして、今日から、新しい侍女が仲間入りしました。
 そうです。
 昨日の令嬢です。
 彼女は子爵令嬢ですが、今更、家に戻りたくはないけれど、行く所もないため、クラーク邸で働く事に決めてくれたようです。
 フレイ様は地下から出る事もなさそうだし、出会う事が絶対にないという事も決めた理由の一つだそうです。
 もちろん、カーミラ様達にも鉢合わせしないよう、この屋敷内で働きたいとの事で、ラルフ様は彼女が望むなら、良い結婚相手を探すとも言っておられました。
 こ私が連れてきた侍女だけでは、屋敷の大きさに比べると少なかったので、彼女が侍女として働いてくれるのは有り難い事なのです。

 ラルフ様と二人での昼食かと思ったのですが、どうやら、お客様が来られるようで、私の向かい側の席に一人分の食事が用意されています。

「ラルフ! どういう事だ!」

 そんな事を考えていたからでしょうか、扉が乱暴に開かれ、ランドン辺境伯がすごい剣幕で部屋の中に入ってこられました。
 騎士の方が止めなかったということは、こんな風に入ってくることは、あらかじめ予測していたのでしょう。

「食事中だ。静かにしろ。お前の分も用意してあるから食べろ」

 ラルフ様はランドン辺境伯の方は全く見ずに言ったあと、私の方を見て謝られます。

「騒がしくしてすまないな。あいつがどうしても俺と話したいみたいでな。ちょうどリノアにも話そうと思っていた事だから、あなたには同席してもらう事にした」
「どんな話なのでしょう?」

 首を傾げると、ランドン辺境伯が叫ぶ。

「婚約破棄とはどういう事だ!」
「そのままの意味だが?」

 え?
 婚約破棄?
 ランドン辺境伯が文句を言っておられるということは、ミラルル様との話でしょうか?

「お前の姉をもらってくれる様な奴なんて、この世にいないだろ!」
「それがいたんだ」
「は?」
「はい?」

 聞き返したのはランドン辺境伯だけでなく私もでした。

「今回、俺が無関心だった事が原因で、色々な人が傷付いた。それに関しては申し訳ないと思っているが、過去に戻ってどうこうする事はできない。だから、今やれる事だけやる事にした」
「それがミラルルの婚約破棄!? あの女がそんな事を受け入れると思ってるのか!?」
「受け入れたが?」

 ラルフ様は軽く息を吐いてから、部屋の奥には入ってこず、扉の前から動かないランドン辺境伯を見据えて続けます。

「姉上と縁を切りたいという話をしたところ、願いをなんでもきくから、それだけはやめてくれとお願いされた。だから、お願いした」
「婚約破棄を!? それはわかったにしても、あいつと結婚したがる相手なんて!」
「それがいたんだ。まあ、大事にしてくれるかはわからんがな」

 ラルフ様は目を閉じて苦笑されます。

「ミラルル様の新しいお相手は、どんな方なのでしょう?」
「昨日、リノアと一緒に屋敷に行ったろう? その当主だ」
「独身の方だったのですね…」
「どうやら、暴力がひどいようでな。噂が広まっているから誰も嫁に来ないらしい」

 まあ、冷静に考えてみれば、昨日の令嬢にひどい対応をとっているくらいですから、女性にはそんな対応をする事が多いのでしょう。
 そんな方の奥様になったりでもしたら、苦労するのは目に見えてますものね。

「昨日、屋敷に行った際に、少しだけ席を外しただろ? その時に話をつけた。辺境伯とつながりが持てると思ったんだろうな。それはもう一つ返事で受けてくれた。姉上にも昨日の内に話をしておいた」
「ミラルル様は納得されたんですか?」
「泣きわめいて嫌だと懇願されたが、何でも願いをきくという話だったろう、と相手にしないようにした。引っ越す準備があるだろうから、日にちに猶予は与えたが、2日後くらいには別邸からいなくなるだろう」
「もし、あの伯爵邸が嫌になって帰ってきたくても、帰る家がありませんから、我慢するしかないのですね」

 あの伯爵邸からラルフ様のお屋敷までは馬車を使っても、何日もかかるし、何より山を越えなければいけません。
 昨日はラルフ様が伯爵邸の近くまで行った事があったので、魔道具を使えたけれど、ミラルル様の旦那様になる伯爵が、ラルフ様に見放されているミラルル様に高価な魔道具を買う様なお金など、一切与えてくれないでしょう。

「覚えてろよ!」
 
 ランドン辺境伯は捨て台詞を吐いて、部屋から出ると、乱暴に扉を閉めていかれました。
 一体、何を覚えていればいいのでしょう?
 
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