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23 勝手な思い込み
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「な、何なんだ、お前は!」
「それはこっちの台詞だ! リディアちゃんに付きまとうな!」
いや、付きまとってたのは、あなたもでしょ。
ブレックさんの言葉に思わずツッコむ。
覗き窓から確認してみると、二人が取っ組み合いの喧嘩になっていて、リュシリュー男爵が派遣してくれた人達は、呆れた顔で二人を見守っていた。
バカバカしくて止める気にもならないのかも…。
「一体、何の騒ぎ?」
「ひえっ!?」
背後から声が聞こえ、変な声を出しながら、慌てて後ろに振り返ると、私服姿のミランが立っていた。
「ごめん。ワイズのいる所へと考えて転移したんだ」
「モウチョットデ、フマレルトコロダッタヨー」
ミランの答えにワイズが文句を言う。
「来なくていいって言ったのに」
「そういう訳にはいかないだろ。それに、ここまでなったのには、僕の両親も関係がある。他所様のお嬢さんを危ない目にあわせる公爵家なんてありえないだろ。これをネタに脅しをかける」
「自分の両親を脅すつもり?」
「脅す、といっても、君を実家に帰れるようにしてもらう様にするだけだよ。しなかったら、世間に公表するって」
「そんな事をしたら、あなたの立場も悪くなるじゃない!」
「僕は君が近くにいてくれるなら、どんな辛い事でも乗り越えるつもりだけど?」
ミランに笑顔で言われて、こんな時なのに、ときめいてしまう。
そんな私の心を見透かしたかの様に、ワイズが口を開いてくれた。
「イマハ、ラブラブ、シテルバアイジャナインジャナイ?」
「それもそうだな」
ミランがそう言って、扉の方に歩いていく。
「どうするつもりなの?」
「とりあえず、彼らの言い分を聞いてみようと思って」
私が何か答える前に、ミランは扉を開けた。
「リディア!?」
「リディアちゃん!?」
私が出てきたと思ったのか、弾んだ声の二人だったけれど、出てきたのがミランだとわかったジッシーは悲鳴を上げた。
「ひいぃぃ! ど、どうしてここに!?」
「なんなんだ、あんたは! どうして、リディアちゃんの家にいるんだ! リディアちゃんを働かせて、お前は何もしていないんだろう!? リディアちゃん、目を覚ませ! こんなヒモ男は君にふさわしくない」
「ヒモオトコ…」
私の腕にとまったワイズが呟く様に言ってから「ウッフッフ」と笑う。
「こういう風にとられると思ったから嫌だったんだ」
ミランは不機嫌そうにワイズの方を振り返って言った後、ブレックさんに言う。
「残念ながら、僕は学生だし、ヒモ男ではない」
「家の中から全然、出てこないじゃないか! 学生なら学校へ行け!」
「どうして、あなたは彼が私の家にいる事を知ってるんです?」
ミランに守られてるだけでは違う気がしたから、私も外へ出ていき、彼の隣に立って尋ねると、ブレックさんは焦った顔をして、私から視線をそらした。
「それは、その…、向かいだから、見えるじゃないか」
「お店は四六時中開いているわけではないですよね? 開いてない時間帯に彼が帰ったとは思わないんですか?」
「い、今はそんな事は関係ない! リディアちゃん、どうして君は僕の気持ちに気付いてくれなかったんだ!? それだけじゃなく、僕の事を警察に相談しようとしていたし!」
そういえば、夫婦だと勘違いしていた時に、ブレックさんには相談していたっけ。
今、思えば、私は犯人に相談していて、ブレックさんは犯人だから、警察に行くのをすすめなかったのかもしれない。
「普通、付きまとわれたら気持ち悪いでしょう? 私、そういう人はお断りです」
「なっ!? どうしてそんな事を言うんだ!? 君への愛ゆえになんだよ!?」
「恋人同士だって、恋人にそんな風に付きまとわれたら、嫌だと思う人はいっぱいいると思いますけど?」
「僕はリディアちゃんと一緒にいたいんだ! こんな田舎町では、若い女性はすぐに都会に出ていってしまうし、良い出会いなんてなかった! そこへ君が現れたんだ! 運命と考えるしかないだろ!?」
「ありえません」
私とミランが声を揃えて答えた。
ブレックさんはミランに向かって言う。
「大体、何なんだよ、偉そうに!」
「ちょっと、止めておいた方が…」
彼と今まで喧嘩していたはずのジッシーが、ブレックさんを止めようとする。
「うるさい! 先にリディアちゃんを見つけたのは僕だ!」
正確に言えば、ブレックさんよりも、ジッシーとミランと会ってる方が先なんだけど…。
「お前みたいな顔だけの男には渡さない! 僕は手に職を持っていて、パン屋を経営してるんだぞ!」
「それはすごい事だと思います」
「そうだろう」
ミランが笑顔で頷くと、ブレックさんは誇らしげに言った。
うーん。
ミランの着ている服装はラフな格好なんだけれど、生地は上等そうだし、貴族っぽい雰囲気を醸し出してると思うんだけど、伝わらないみたいね…。
「やっぱり、僕の方が彼女にふさわしい」
「勝手に決めないで下さい! 私、申し訳ないですけど、ブレックさんの事、そういう目で見た事ありません!」
「リディアちゃん、目を覚ましてくれ! こんなヒモ男がいいのか? 顔だけじゃ、暮らしていけないよ!」
「おい! あんた、もう止めておけよ!」
ジッシーが割って入ろうとした時だった。
見覚えのある馬車がやって来たかと思うと、私の家の前で停まり、中からリュシリュー男爵が降りてきた。
「何の騒ぎだ!」
不機嫌そうに言ってから、ミランを見て、一緒、動きを止めた後に、すぐに我に返って叫ぶ。
「ミーグス公爵令息! いらっしゃっていたのですか!」
その言葉を聞いたブレックさんの顔が青ざめていくのがわかった。
「それはこっちの台詞だ! リディアちゃんに付きまとうな!」
いや、付きまとってたのは、あなたもでしょ。
ブレックさんの言葉に思わずツッコむ。
覗き窓から確認してみると、二人が取っ組み合いの喧嘩になっていて、リュシリュー男爵が派遣してくれた人達は、呆れた顔で二人を見守っていた。
バカバカしくて止める気にもならないのかも…。
「一体、何の騒ぎ?」
「ひえっ!?」
背後から声が聞こえ、変な声を出しながら、慌てて後ろに振り返ると、私服姿のミランが立っていた。
「ごめん。ワイズのいる所へと考えて転移したんだ」
「モウチョットデ、フマレルトコロダッタヨー」
ミランの答えにワイズが文句を言う。
「来なくていいって言ったのに」
「そういう訳にはいかないだろ。それに、ここまでなったのには、僕の両親も関係がある。他所様のお嬢さんを危ない目にあわせる公爵家なんてありえないだろ。これをネタに脅しをかける」
「自分の両親を脅すつもり?」
「脅す、といっても、君を実家に帰れるようにしてもらう様にするだけだよ。しなかったら、世間に公表するって」
「そんな事をしたら、あなたの立場も悪くなるじゃない!」
「僕は君が近くにいてくれるなら、どんな辛い事でも乗り越えるつもりだけど?」
ミランに笑顔で言われて、こんな時なのに、ときめいてしまう。
そんな私の心を見透かしたかの様に、ワイズが口を開いてくれた。
「イマハ、ラブラブ、シテルバアイジャナインジャナイ?」
「それもそうだな」
ミランがそう言って、扉の方に歩いていく。
「どうするつもりなの?」
「とりあえず、彼らの言い分を聞いてみようと思って」
私が何か答える前に、ミランは扉を開けた。
「リディア!?」
「リディアちゃん!?」
私が出てきたと思ったのか、弾んだ声の二人だったけれど、出てきたのがミランだとわかったジッシーは悲鳴を上げた。
「ひいぃぃ! ど、どうしてここに!?」
「なんなんだ、あんたは! どうして、リディアちゃんの家にいるんだ! リディアちゃんを働かせて、お前は何もしていないんだろう!? リディアちゃん、目を覚ませ! こんなヒモ男は君にふさわしくない」
「ヒモオトコ…」
私の腕にとまったワイズが呟く様に言ってから「ウッフッフ」と笑う。
「こういう風にとられると思ったから嫌だったんだ」
ミランは不機嫌そうにワイズの方を振り返って言った後、ブレックさんに言う。
「残念ながら、僕は学生だし、ヒモ男ではない」
「家の中から全然、出てこないじゃないか! 学生なら学校へ行け!」
「どうして、あなたは彼が私の家にいる事を知ってるんです?」
ミランに守られてるだけでは違う気がしたから、私も外へ出ていき、彼の隣に立って尋ねると、ブレックさんは焦った顔をして、私から視線をそらした。
「それは、その…、向かいだから、見えるじゃないか」
「お店は四六時中開いているわけではないですよね? 開いてない時間帯に彼が帰ったとは思わないんですか?」
「い、今はそんな事は関係ない! リディアちゃん、どうして君は僕の気持ちに気付いてくれなかったんだ!? それだけじゃなく、僕の事を警察に相談しようとしていたし!」
そういえば、夫婦だと勘違いしていた時に、ブレックさんには相談していたっけ。
今、思えば、私は犯人に相談していて、ブレックさんは犯人だから、警察に行くのをすすめなかったのかもしれない。
「普通、付きまとわれたら気持ち悪いでしょう? 私、そういう人はお断りです」
「なっ!? どうしてそんな事を言うんだ!? 君への愛ゆえになんだよ!?」
「恋人同士だって、恋人にそんな風に付きまとわれたら、嫌だと思う人はいっぱいいると思いますけど?」
「僕はリディアちゃんと一緒にいたいんだ! こんな田舎町では、若い女性はすぐに都会に出ていってしまうし、良い出会いなんてなかった! そこへ君が現れたんだ! 運命と考えるしかないだろ!?」
「ありえません」
私とミランが声を揃えて答えた。
ブレックさんはミランに向かって言う。
「大体、何なんだよ、偉そうに!」
「ちょっと、止めておいた方が…」
彼と今まで喧嘩していたはずのジッシーが、ブレックさんを止めようとする。
「うるさい! 先にリディアちゃんを見つけたのは僕だ!」
正確に言えば、ブレックさんよりも、ジッシーとミランと会ってる方が先なんだけど…。
「お前みたいな顔だけの男には渡さない! 僕は手に職を持っていて、パン屋を経営してるんだぞ!」
「それはすごい事だと思います」
「そうだろう」
ミランが笑顔で頷くと、ブレックさんは誇らしげに言った。
うーん。
ミランの着ている服装はラフな格好なんだけれど、生地は上等そうだし、貴族っぽい雰囲気を醸し出してると思うんだけど、伝わらないみたいね…。
「やっぱり、僕の方が彼女にふさわしい」
「勝手に決めないで下さい! 私、申し訳ないですけど、ブレックさんの事、そういう目で見た事ありません!」
「リディアちゃん、目を覚ましてくれ! こんなヒモ男がいいのか? 顔だけじゃ、暮らしていけないよ!」
「おい! あんた、もう止めておけよ!」
ジッシーが割って入ろうとした時だった。
見覚えのある馬車がやって来たかと思うと、私の家の前で停まり、中からリュシリュー男爵が降りてきた。
「何の騒ぎだ!」
不機嫌そうに言ってから、ミランを見て、一緒、動きを止めた後に、すぐに我に返って叫ぶ。
「ミーグス公爵令息! いらっしゃっていたのですか!」
その言葉を聞いたブレックさんの顔が青ざめていくのがわかった。
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