あなたに未練などありません

風見ゆうみ

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第34話 誕生日パーティー

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 わたしとミシェルがヘイスト様に引導を渡す計画を進めている間に、ジェレミー殿下達はファブロー公爵をより詳しく探る事になった。

 ちなみにファブロー公爵はミシェルの事をかなり恐れている様だった。
 それがなぜかというと、ミシェルは赤い瞳ではないけれど、ファブロー公爵が好きだった女性にかなり外見が似ているらしかった。

 だから、ミシェルがヘイスト様の婚約者として名乗りを上げた時、あのファブロー公爵が悲鳴に近い声を上げたそうだった。

「好きだった人が恨みを晴らしに出てきたとでも思ったんだろうね」

 今日はヘイスト様の誕生日を祝う会がファブロー公爵家で開かれる事になっていた。
 その会に出席する為、ファブロー公爵家に向かう馬車の中で、わたしとジェレミー殿下は並んで座って話をしていた。
 
 ヘイスト様の誕生日を祝う会は元々決まっていたし、わたしとミシェルが考えた計画を実行するにはちょうど良かった。
 そして、わたしがヘイスト様にプレゼントを直接渡すことも決まっている。
 もちろん、これも計画の1つだった。

 普通ならあんなにも会おうとしなかったわたしがプレゼントを渡すだなんてなったら、不審に思うところだと思うのだけれど、ヘイスト様は疑わずにわたしがやって来る事を本当に喜んでいたらしかった。

 それはそれで良心が痛むけれど、もう決めた事だし、変な情けをかけるのは余計に良くないと思った。

「私も近くにいるようにするけど、本当に大丈夫か?」
「はい。もう何回もシミュレーションしましたので大丈夫です。それに、今更、後には退けませんから」
「わかった。それから、もう1つの件だが……」
「ミシェルに連絡して下さったのですよね?」
「ああ。本当に彼女は肝がすわってるよ。ヘイストが公爵として駄目でも、結婚すれば彼女が上手くやってくれそうだ」
「そうでなければ、ファブロー公爵家を残す必要が無くなりますから」

 隣に座るジェレミー殿下を見上げて頷くと、彼は膝の上に置いていたわたしの左手を取って優しく握りしめる。

「ヘイストの件は本当にいいのか? 私がやっても…」
「いいえ。わたしがやるからこそ意味があるんです」
「……そうか。でも、あまり無理はしないでくれ」
「無理も何も大したことをやるわけではないですから」

 心配してくれている気持ちが嬉しくて、ジェレミー殿下の頬にキスをした。

「!?」

 ジェレミー殿下は驚いた顔をして白い肌をピンク色に染めて、わたしを見た。

「ごめんなさい、嬉しくてつい…」

 自分でも驚いてしまったくらいに突発的な行動だったから、深々と頭を下げると、ジェレミー殿下は私の左手をはなして、今度は右頬に触れた。

 顔の半分が包み込まれてしまいそうなくらい、ジェレミー殿下の手が大きくてドキドキする。

 ううん。
 きっと、それだけじゃない。
 
 ジェレミー殿下の熱を帯びた視線を受けて、わたしはゆっくりと目を閉じた。

 初めてのジェレミー殿下とのキスは触れるだけ。
 けれど、2回目からは違った。

 その後は、キスの味はどうだったかなんてどうでも良くなるくらいに、わたしはトロケてしまったのだった。

 それからしばらくして、ファブロー公爵家に着き馬車を降りてすぐに、別の馬車だけれど、一緒に来ていてもらった侍女に口紅を塗り直してもらう事になってしまった。

 今から戦いに行こうとしているからって、あんな事を馬車の中でしてしまうなんて…!

 わたしはかなり動揺しているのに、他の人と話をしているジェレミー殿下は何もなかったかの様にしているのは悔しかった。

 そして、パーティーは始まり、招待客の中から選ばれた数人が直接、ヘイスト様にプレゼントを渡す事になった。

 わたしは渡すことが決まっているので、渡そうと並んでいる人達の一番後ろに並んだ。

 プレゼントは複数あるので、ヘイスト様には目録を渡す形になる。

「アニエス…!」

 ヘイスト様は相変わらず顔色は良くないし、不健康そうだったけれど、わたしを見て笑顔を見せた。

「アニエス、君とゆっくり話したいんだ」

 壇上の椅子に座っていたヘイスト様は、わたしのところまでやって来ると続ける。

「僕は君を幸せにしたい! そして、君を幸せに出来るのは僕だけなんだ」

 ヘイスト様がわたしの手を掴んで叫んだと同時に、わたしは叫ぶ。

「ジェレミー殿下! 助けて下さい! ヘイスト様が乱暴な事をしてこられます!」
「へ?」

 わたしの叫びを聞いた周りの人達は訝しげな顔をし、ヘイスト様は間抜けな声を上げて動きを止めたのだった。
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