婚約破棄していただき、誠にありがとうございます!

風見ゆうみ

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11.5 わたしはレニス(レニス視点)

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 わたしの名前はレニス・エンブル。

 年令問わず、多くの男性を虜にしてしまう罪な女よ。

 そのせいでたくさんの人恨まれてきたし、婚約者とも上手くいかないの。

 でも、嫉妬されてしまうくらい可愛いんだから、しょうがないわよねっ。

 妹であるミレニアの友人は、よくわたしのことを頭がおかしいって言っていたけれど気にしないわ!

 だってそれって、わたしが可愛いから嫉妬してるだけでしょう?

 もしくは、そんなことを言う人が変わっていると思うのよ。

 わたしが変だから、婚約者も恋人もいないんだなんてこともよく言われているわ。
 でもそれってね、わたしが特定の人を決めたら大変なことになりそうだから、わざと決めていないだけなのよ?

 だって、多くの男性は、か弱いわたしが大好きなんだものっ!

 だから、わたしは皆の前ではミレニアのものでいるの。

 だって、妹を可愛がる姉って素敵でしょう?

 ミレニアは顔は、わたしよりは可愛くないけれど、他の人に比べたら整った顔をしているし、口うるさい時もあるけれど、わたしにとっては可愛い妹よ。

 ずっと、わたしが守ってきてあげたの。

 それに、男性からの誘いを断るのに、ミレニアはちょうど良かったわ。
 妹と約束があるからって言えば、皆、諦めてくれるのよ。

 だから、運命の人と出会うまでは、ミレニアと一緒に生きていくつもりだったの。

 それなのに、国王陛下はミレニアを嫁に出すとか言っちゃうし、ミレニアは本当に出て行ってしまった。
 だから、わたしは出て行ったミレニアを迎えに行くことに決めたの。

 ミレニアの元婚約者のジーギス様と一緒に魔王の家に行って、ミレニアを助けようと試みたんだけれど駄目だったわ。
 だってね、魔王の家にはモンスターがいたのよ!
 多くの人は犬は可愛いというけれど、わたしにしてみれば、犬は怖い生き物だわ。
 襲ってくるんだもの!

 だから、モンスター扱いでいいわよね?

 そうそう。
 少し前に、陛下にお願いしたことがあるの。

 犬はぜーったいに飼わないでね、って。

 そうしたら、陛下は自分は猫派だから大丈夫って言ってくれていたわ。
 ジーギス様もそうなんだって知ってホッとしたの。

 でも、あの魔王は国王陛下の子供なのに、猫派じゃないみたい。
 犬を飼うだなんて信じられないわ。

 しかも、わたしに向かって吠えるような犬なんて余計にありえない!
 そうだわ。
 なんて躾のできていない犬なのかしらと思ったから、モンスターと呼ぶことにしたんだった。
 
 すぐに忘れちゃうから嫌になるわ。

 椅子に座り、果実のジュースを飲みながら、これからどうしようか考えていると、ジーギス様が話しかけてくる。

「レニス、ロードの家では散々な目に遭ったな」
「ほんとですぅ。あんな野蛮な生き物を飼っているだなんて信じられませんっ! 本当に怖かったですぅ! 今でも思い出すと怖くて震えちゃいますっ!」
「レニスは本当に可愛いな」

 ジーギス様はわたしに近づいてきて、座っているわたしの頭を自分のお腹に引き寄せた。

 ほらね。
 男の人はわたしがちょっと悲しむふりをしたら、こうやって優しくなるのよ。

 それにしても魔王は手強そうだし、モンスターもいるから、もう二度とあの魔城には行きたくないわ。

 どうすれば、ミレニアをあの魔城から連れ出してあげられるのかしら。

 お手紙を書いても返事は来ないし、きっと軟禁されているのね。

 今頃、ミレニアはわたしを恋しがっているはずだわ。
 わたしと一緒にいるとなぜか嫌そうな顔をしていたことが多かったけれど、あれは、わたしと比べられることが嫌だったからでしょう?

 そんなことを思った時、朝から顔を見ていなかった陛下が仮住まいの家に戻ってきたの。

「くそっ! あの恩知らずめ! せっかく、あやつの家に居候してやろうと思ったのに、話も聞かないとは!」
「どうかされたのですか?」
「どうもこうもない! 聞いてくれ!」

 国王陛下から聞いた話によると、街でミレニアに出会ったんですって!

 良いアイデアが浮かんだわ!
 そうよ!
 わたしが、魔城に居候すればいいんだわ!
 
 わたしが居候してあげるんだから、モンスターをどうにかしてもらえば良いのよ!

 でも、あの魔王は私たちよりもモンスターを大事にするわよね。

 ああ。
 やっぱり駄目だわ。

 どうしたら、わたしはミレニアと一緒にいることができるの?
 やっぱり、魔王をわたしの可愛さでおとすしかないのかしら。

 大体、こんな面倒なことになったのは、ジーギス殿下のせいなのよね。
 別にミレニアとの婚約を破棄しなくても良かったのに!

 わたしは最近のミレニアが意地悪だから、ちょっとだけ痛い目に遭ってほしかっただけなのよ。

 ミレニアは悪い子なの。

 ミレニアが知り合いの家に持っていく予定だったお菓子の箱を開けて、ちょっとだけつまみ食いしただけで怒るんだから、心が狭いわよね!

 渡す相手だって、ちょっとくらい中身が減っていても気づかないわよ。
 
 ミレニアは本当に真面目すぎるのよね!

 あ、そうだわ!
 今から街に行けばミレニアに会えるんじゃないかしら。

 待っていてね、ミレニア!
 もうそろそろ反省したでしょうし、お姉様が迎えに行ってあげるからね!
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