おっとり令嬢ではありますが、何も考えていないわけではございません

風見ゆうみ

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23  そんな権利はないですよね?

 朝の8時過ぎに家族を引き連れてやってきた旦那様は、しくしく泣いているツヤラ様を抱きしめながら言いました。

「犯人を連れて来てやったぞ。お前には土下座して謝ってもらう」

 旦那様は俯いて震えているメイドを指差しています。
 彼女を犯人に仕立て上げることにしたのですね。

「納得のいく答えがいただけましたら、もちろん謝罪いたします」

 昨日は謝罪だけでしたが、今日は土下座もご希望のようです。
 間違っていたのであれば、謝らなければならないのは当たり前のことです。……が、メイドの様子を見るに無理やり犯人に仕立て上げられているのでしょう。

 話を最後まで聞いてから判断しましょう。

「手紙をすり替えたのはこいつだ!」
「も、も、申し訳ございません」

 震えているメイドとはほとんど面識がありません。中年のメイドで、ツヤラ様にべったりだったからです。

 忠誠心を買われて身代わりにされたのでしょうが、本人は嫌そうですね。

「あなたがツヤラ様が書いた私宛の手紙を自分が書いた手紙と取り替えたと言いたいのですね?」
「……そうです」

 うなずいたメイドの震えが激しくなりました。
 
 自分がどうなるのか、それは不安ですよね。

「とりあえず中にお入りください」

 リビングに案内し、旦那様たち家族にはソファに座ってもらい、メイドには立ってもらったまま話を聞くことにしました。

 旦那様たちの向かい側に座り、メイドを見上げて質問を開始します。

「どうして手紙を取り替えたのです?」
「その、あの、バイヤ様に近づかないように、してほしくて……」
「それはどうしてです?」
「バイヤ様はツヤラ様のものですから!」
「では、シサヤ卿の元婚約者に送った手紙はどういうことでしょう?」

 私宛の手紙の件だけなら、その言い訳で乗り切れたかもしれません。ですが、シサヤ卿の元婚約者への手紙を送った相手と同一人物である必要があります。
 どう話を合わせるつもりでしょうか。

「そ、それも、その、シサヤ卿に近づいてほしくなかったので……」
「旦那様の件もそうですが、あなたにそんな権利はないですよね?」
「それはもちろん、わかっておりますが……」

 メイドは今にも泣き出しそうです。気の毒になってきましたが、旦那様たちは全く気にする様子もありません。

「わかっているけど出してしまったのですか?」
「……はい」
「では、一つお願いしたいことがあります」
「何でしょうか」
「紙とペンを用意させますので、私宛の手紙とシサヤ卿の元婚約者に宛てた手紙の内容を書いてもらえますか?」

 一朝一夕で文字を完璧に真似るのは無理でしょう。それに、書いた内容も本人でなければ知らないはずです。

 にこりと微笑んだ私に、メイドは安堵した表情になり、逆にツヤラ様は焦った表情になったのでした。 


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