おっとり令嬢ではありますが、何も考えていないわけではございません

風見ゆうみ

文字の大きさ
25 / 28

24  謝罪してもらうだけでは済ませません

「そんなことをしても無駄です! とにかく犯人がわかったのですから、もうこの話は終わりでいいでしょう?」

 引きつり笑いを浮かべ、ツヤラ様は何とかこの場を乗り越えようとしました。しかし、それを拒否したのは、私ではなく旦那様でした。

「何を言っているんだツヤラ。お前の無実を証明するためには、どうせ文字を書かせないと駄目なんだ。さっさとメイドに書かせて、リリコットに土下座してもらえ」
「そ、それは……でも、時間の無駄かと思います」
「どうしてだ? どうせ、シサヤ卿も文字を書けと言うに決まっている」

 ツヤラ様の額から、じんわりと汗が滲み始めているのが見えます。味方から攻撃されるとは思っていなかったのでしょう。
 ……まあ、旦那様は攻撃する気は一切なさそうですが。
 
 この様子ですと、旦那様たちはメイドがやったことだと本気で信じているようですね。

 なら、こちらも一つ条件をつけさせていただきましょう。

「旦那様、もし、メイドが真犯人なら私が謝罪することは決まっておりますが、もし、真犯人が他にいた場合はどうなるのでしょうか」
「……どうなる、とは?」

 旦那様が不機嫌そうに眉間に皺を寄せて聞き返しました。左隣に座るミノ様も同じような表情をしており、イビーバ侯爵は腕を組んだ状態で、私を睨みつけています。

 家族揃って本当にツヤラ様が大好きなのですね。だからといって自分の思い込みやツヤラ様が言ったからという理由で、他人を好きなようにしていいわけではありません。

 この方たちにも、それ相応の覚悟を持って発言してもらいます。

「もし、このメイドが真犯人ではなく、他の誰かであった場合、私に謝罪してもらうだけでは済ませません」
「……何が目的だ?」
「そうですね。まずは、真犯人をシサヤ卿に伝え、重い罰を与えるように進言してください」
「や、やめてください! シサヤ卿は関係ないでしょう!」

 ツヤラ様は旦那様の胸にしがみついて訴えます。

「お兄様! リリコット様が意地悪なことを言うんです! どうにかしてください!」
「わかった。まずは、ツヤラ。メイドに文字を書かせよう。そうすれば、すぐにリリコットは泣いて土下座する羽目になるはずだ」

 旦那様はにやりと笑って私に目を向けました。

 ツヤラ様の動揺ぶりを見れば、彼女が真犯人だとすぐわかりますのに、旦那様たちは本当に鈍い方たちです。

 まあ、鈍いからこそ、逆にツヤラ様を追い詰めていますから滑稽でもありますね。

「私が土下座するのか、もしくは旦那様たちが私のお願いを聞くことになるのか。早速、判断することにいたしましょう」

 私はそう言って、私の横にメイドを座らせたのでした。


 
    
感想 31

あなたにおすすめの小説

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

ローザとフラン ~奪われた側と奪った側~

水無月あん
恋愛
私は伯爵家の娘ローザ。同じ年の侯爵家のダリル様と婚約している。が、ある日、私とはまるで性格が違う従姉妹のフランを預かることになった。距離が近づく二人に心が痛む……。 婚約者を奪われた側と奪った側の二人の少女のお話です。 5話で完結の短いお話です。 いつもながら、ゆるい設定のご都合主義です。 お暇な時にでも、お気軽に読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

その令嬢は、実家との縁を切ってもらいたい

キョウキョウ
恋愛
シャルダン公爵家の令嬢アメリは、学園の卒業記念パーティーの最中にバルトロメ王子から一方的に婚約破棄を宣告される。 妹のアーレラをイジメたと、覚えのない罪を着せられて。 そして、婚約破棄だけでなく公爵家からも追放されてしまう。 だけどそれは、彼女の求めた展開だった。

夏の眼差し

通木遼平
恋愛
 伯爵令嬢であるティナの婚約者とティナの妹が恋仲になり、ティナは婚約を解消することになる。婚約者に対して特に思い入れはなかったが、姉妹の婚約のすげ替えについての噂と勝手なことばかり言う妹に気疲れしたティナは、昔から彼女を気にかけてくれていたイライザ夫人の紹介で夫人の孫娘リネットの話し相手として雇われることになった。  家から離れ、リネット共に穏やかな日々を過ごすティナは、リネットの従兄であるセオドアと出会う。 ※他サイトにも掲載しています

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

見えるものしか見ないから

mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。 第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ

みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。 婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。 これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。 愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。 毎日20時30分に投稿