価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

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22 戦う令嬢


 わかってはいたけれど、今日のお茶会に出席している令嬢達の目当ては私だった。

 私はソラウ国では情報のない人間なので、どんな人間性なのか見極めたいというのもあると思う。

 それは貴族としては当たり前のことでもあるし、逆に私にとっても好都合だった。

 アズはいつか国王になる。
 という事はいずれ王妃になる私を味方につけておきたい貴族の気持ちはわかる。

 そして、私にしてみても、相手がどんな令嬢なのかを知る事の出来るよい機会でもあった。

 マーニャ嬢の企みがなければ、楽しいお茶会を過ごせていたかもしれないと思うと残念だった。

 お茶会が始まってしばらく経ち、私に対しての質問が途切れたところで、シエラさんに耳打ちされた。

「マーニャが裏門から人を呼び入れましたわ。見張らせてはおりますが、狙いはお義姉さまが1人になる時でしょう」
「1人になんて中々なれないけれど、マーニャ嬢がお掃除してくれていた所は1人になれますわね」

 微笑んで言うと、シエラさんは緊張した表情で頷いた。

 唯一、1人になれるのはお手洗いだった。

 さすがに護衛の人間も、何か異変がない限り、あの中には入ってこれない。

 マーニャ嬢はそれを狙っているのだと思われた。
 
 令嬢達と再度談笑し、少し時間が経ったところで、お手洗いに言ってくるとシエラさんに声を掛ける。
 彼女も王家の一員だっただけに、動揺などは一切見せずに、温和な表情を浮かべて頷いた。

 メイドが案内をしてくれて、後ろを付いて歩いていると、背後に気配を感じた。

 足音を数えると3人。
 複数相手を想定していなかったから、出来れば1人ずつ片付けたかった。 

 来客用のお手洗いはマーニャ嬢が掃除をしていた時に見たけれど、パウダールームも一緒になっている。
 そのため、1人用だけれど、とても広かった。

 付いてきている人達を周りを見回すかのように首を左右に動かして横目で見ると、使用人の格好をした男性3人の姿が見えた。

 それにしても、マーニャ嬢が賢くないというのは本当ね。

 裏門だからって、伯爵家の門なのだから、守衛がいて当たり前。
 それなのに、誰1人も立っていないんだから怪しむべきよ。

 プライドが高すぎて、自分がやる事は上手くいくと思い込んでいるとか?

 本人に説明してもらっても、私には到底理解できないんでしょうね。

 お手洗いの前まで連れてきてもらうと、わざと人払いをする。

「ありがとう。1人で戻れるから、あなたはお茶会の場所に戻ってちょうだい」
「ですが……」
「ゆっくり過ごしたいのよ」

 メイドは渋ったけれど、私のお願いを断れるはずもなく、肩を落として戻っていく。

 3人の男達は一度、私の横を通り過ぎたけれど、私が中に入ると、足音を忍ばせて戻ってきた。
 そして、扉の前で足音が止まる。

 騎士らしき男性と女性の話す声が聞こえ、少しずつ遠ざかっていくのもわかった。

「顔を見たけど、まあまあ、可愛んじゃないか? 男爵令嬢とか言ってたけど、良さそうなドレスを着てたし、身につけているアクセサリーは奪って」

 私の事を男爵令嬢だなんて教えたのね。

 呆れてしまい、男性の話の途中だったけれど、勢いよく扉を開け、目の前に立っていた男の首に、隠し持っていた短剣の刃先をつきつけた。
 
「私に何か御用でしょうか? 声が大きすぎて丸聞こえでしたけれど」

 まさかの展開だったのか、首に短剣をつきつけられている男性以外の2人も、驚愕の表情を浮かべて動きを止めた。

「いや……あの、何かお困りの事はないかと……」

 男性は震える声でそう言った。

 さっきまでお手洗いの近くにいたはずの騎士の姿が見えない。
 
 さっきの声は騎士とマーニャ嬢の声だったみたいね。

 そう思ったあと、すぐに目の前の男性に視線を戻す。

「まず、お1人目、ご案内いたしますわね」

 短剣を首からはなし、素早くレッグホルスターに仕舞うと、男性の腕をひねり上げて頭を下げさせて前かがみにさせた。
 男性は悲鳴をあげたけれど、そんな声は無視して、後ろ足で彼のお尻を蹴った。
 たたらを踏んだ男性はお手洗いの個室の中に吸い込まれる様にして入っていく。

 それを確認してから素早く扉を締めて鍵をかける。

 レッグホルスターから短剣を取り出すと、男性は尻餅をついて、泣き出しそうになりながら私を見上げた。

「申し訳……ございませんでした……」
「私に用事があったんですわよね? 言ってくださらない? 早くしないと誰か来ますわよ?」

 短剣の刃先を男性の左頬に当てて笑顔を作って言った。

「申し訳ございません! 助けてください! 命だけはとらないでください!」

 すると、彼は大粒の涙を流して命乞いをしてきたのだった。

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