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2 父の暴挙
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サブル殿下と私の婚約が決まるとすぐに、私が夢で見た内容を書いていた紙の束は王家に譲渡されることにかなりました。
新たに紙とペンを用意され、夢を見れば紙に書き、書き終われば両親に渡すことが義務付けられるようになったのです。
調べてもらったところ、予知夢について少しだけわかったことがありました。
私が夢を見てから、次の夢を見るまでの間に起こる出来事であり、日にちを割り出すのは事前には難しいようで、その日の天気、太陽の位置などで判断するしかないとのことです。
雨の日の出来事なら予想がつきやすいのですが、それ以外は難しく、場所も特徴がなければどこだかわからないのが辛いところです。
そして、不幸な出来事を回避するには、その直前に私と何らかの形で接触しなければならないようです。
「王子様と婚約だなんてシェラルが羨ましいわ」
二つ年上のラーナお姉様は金色の髪にピンク色の瞳を持つ、妹の私から見てもとても可愛らしい少女でした。予知夢を見ることができる私を自慢にしてくれていて、幼い頃からとても仲が良かったのです。
私はお姉様のことが大好きで、夢で見た話をよく話をしていたものです。そのこともあってか、お姉様も私ほどではありませんが予知夢を見ることができるようになりました。
両親に詳しく調べてもらいますと、お母様のご先祖様に未来を予言できる方がいらっしゃったそうです。
「これで私も誰かの役に立てるかしら」
嬉しそうな顔で話をしてくれたお姉様の顔を、私は今でも覚えています。
そんな私たちの関係が変わったのは、私が11歳の時でした。
誰かが不幸になる未来を少しでも良いものに変えようと、学園に通いながら奔走していた私は、子供ですのに過労で倒れてしまったのです。
私を見舞うために、サブル殿下が来てくれたのですが、その時、ジェリク様も一緒に来てくださりました。
「大勢で来るものではないとわかっているんだけど、ジェリクが君のことをすごく気にかけているから連れてきたんだ」
「そうだったのですね。お気遣いいただき、ありがとうございます」
ジェリク様に頭を下げると、彼は口元に笑みを浮かべます。
「元気そうで良かった。招かれてもいないのにここに来たんだ。俺は今日はこれで失礼する」
「いえいえ! せっかくですのでゆっくりしていってください!」
気にかけてくれているわりには、ジェリク様は目線を合わせてくれません。
やはり嫌われていて、弱っている私を見に来たかったのでしょうか。
「殿下、ジェリク様、シアリンのためにご足労いただきありがとうございます」
満面の笑みを浮かべたお父様は、お姉様を紹介します。
「もう一人の娘のラーナです。とても良い子なのですよ」
この時のお父様は、あわよくばジェリク様の婚約者にお姉様を選んでほしいという魂胆があったのだと思います。
ですが、挨拶を返したジェリク様は、お姉様にまったく興味のないご様子。どちらかというと、サブル殿下のほうがお姉様を気に入ったみたいでした。
この時にお姉様はジェリク様に一目惚れし、猛アタックするようになりました。
通っていた学園を転校し、ジェリク様たちと同じ学園に通うようにしたり、昼休みには会いに行って声をかけたりするなど、色々と頑張っていたようです。
お相手のジェリク様は手強いお方で、相手にしてもらえない日々を送っていたある日のこと。サブル殿下がジェリク様を連れて訪ねてきたのです。
お姉様と一緒に応対したところ、サブル殿下は笑顔で話します。
「ジェリクは予知夢が見れるシアリンに興味があるみたいだ」
「予知夢が見れる人間なんて珍しいですものね」
微笑して頷くと、ジェリク様が口を開きます。
「殿下が思い込んでいるだけだ。迷惑をかけてすまない」
「とんでもないことでございます。何か聞きたいことはございますか?」
「あ、あの、予知夢にご興味があるのでしたら、私がお話できますわ」
ジェリク様が返答する前にお姉様が反応しましたが、ジェリク様の対応は冷たいものでした。
……というよりかは、彼はいつもこんな調子ですので悪気はなかったのかもしれません。
「別に君に話してもらわなくてもいい」
「で、ですが、シアリンに興味があるというのは、予知夢が見れるからですよね?」
「興味があるなんて、俺の口からは言っていない」
「……っ! 申し訳ございません!」
「謝ることじゃないし、君を責めているわけじゃない。言い方が悪かったのなら謝る」
ジェリク様が頭を下げると、お姉様の頰が赤くなりました。
普段と違うジェリク様の姿が魅力的に映ったのかもしれません。
「ラーナ嬢はとても可愛いね。予知夢が見れるだけじゃなく、顔は可愛いくて性格も良いなんて素敵じゃないか。僕の婚約者はラーナ嬢でも良かったかな」
もしかして、殿下はお姉様と婚約したいのでは?
そのことに気がついた私は深く傷つきました。私の考えを裏付けるかのように、ジェリク様は渋い表情で口を開きます。
「殿下が本気でそう思われるのであれば、国王陛下にラーナ嬢との婚約者をお願いしてみてはいかがでしょうか」
「うーん。そういうつもりじゃなかったんだけど、どうしようかな。ジェリクとシアリンはとてもお似合いのような気もするし、父上に話をしてみるよ。予知夢が見れるなら誰でもいいみたいだったし」
殿下は笑みを必死に堪えているように見えました。
あとからジェリク様に聞いた話では、お姉様は私を睨みつけていたようです。この時の私はショックを受けていて、それどころではありませんでした。
国王陛下から認められなかったものの、サブル殿下のこの発言がお姉様が私を憎む引き金となり、この時から、お姉様は私を陥れるために動き始めたのです。
問題の発言から数日後。お父様は私を湖の畔に連れていきました。少し歩けば観光地ですが、私たちのいる場所は周りには木々が多く、滅多に人が来ない場所です。予知夢の一つに湖の近くがあったので連れてこられたと思っていたのですが違いました。
「お父様、この場所ではないと思うのですが……」
「シアリン、お前は王太子殿下との婚約を破棄しようとしているらしいな」
「いいえ。私ではありません! サブル殿下が」
「言い訳するな!」
お父様は温和な笑みを消してそう叫ぶと、私を湖に向かって突き飛ばしたのでした。
新たに紙とペンを用意され、夢を見れば紙に書き、書き終われば両親に渡すことが義務付けられるようになったのです。
調べてもらったところ、予知夢について少しだけわかったことがありました。
私が夢を見てから、次の夢を見るまでの間に起こる出来事であり、日にちを割り出すのは事前には難しいようで、その日の天気、太陽の位置などで判断するしかないとのことです。
雨の日の出来事なら予想がつきやすいのですが、それ以外は難しく、場所も特徴がなければどこだかわからないのが辛いところです。
そして、不幸な出来事を回避するには、その直前に私と何らかの形で接触しなければならないようです。
「王子様と婚約だなんてシェラルが羨ましいわ」
二つ年上のラーナお姉様は金色の髪にピンク色の瞳を持つ、妹の私から見てもとても可愛らしい少女でした。予知夢を見ることができる私を自慢にしてくれていて、幼い頃からとても仲が良かったのです。
私はお姉様のことが大好きで、夢で見た話をよく話をしていたものです。そのこともあってか、お姉様も私ほどではありませんが予知夢を見ることができるようになりました。
両親に詳しく調べてもらいますと、お母様のご先祖様に未来を予言できる方がいらっしゃったそうです。
「これで私も誰かの役に立てるかしら」
嬉しそうな顔で話をしてくれたお姉様の顔を、私は今でも覚えています。
そんな私たちの関係が変わったのは、私が11歳の時でした。
誰かが不幸になる未来を少しでも良いものに変えようと、学園に通いながら奔走していた私は、子供ですのに過労で倒れてしまったのです。
私を見舞うために、サブル殿下が来てくれたのですが、その時、ジェリク様も一緒に来てくださりました。
「大勢で来るものではないとわかっているんだけど、ジェリクが君のことをすごく気にかけているから連れてきたんだ」
「そうだったのですね。お気遣いいただき、ありがとうございます」
ジェリク様に頭を下げると、彼は口元に笑みを浮かべます。
「元気そうで良かった。招かれてもいないのにここに来たんだ。俺は今日はこれで失礼する」
「いえいえ! せっかくですのでゆっくりしていってください!」
気にかけてくれているわりには、ジェリク様は目線を合わせてくれません。
やはり嫌われていて、弱っている私を見に来たかったのでしょうか。
「殿下、ジェリク様、シアリンのためにご足労いただきありがとうございます」
満面の笑みを浮かべたお父様は、お姉様を紹介します。
「もう一人の娘のラーナです。とても良い子なのですよ」
この時のお父様は、あわよくばジェリク様の婚約者にお姉様を選んでほしいという魂胆があったのだと思います。
ですが、挨拶を返したジェリク様は、お姉様にまったく興味のないご様子。どちらかというと、サブル殿下のほうがお姉様を気に入ったみたいでした。
この時にお姉様はジェリク様に一目惚れし、猛アタックするようになりました。
通っていた学園を転校し、ジェリク様たちと同じ学園に通うようにしたり、昼休みには会いに行って声をかけたりするなど、色々と頑張っていたようです。
お相手のジェリク様は手強いお方で、相手にしてもらえない日々を送っていたある日のこと。サブル殿下がジェリク様を連れて訪ねてきたのです。
お姉様と一緒に応対したところ、サブル殿下は笑顔で話します。
「ジェリクは予知夢が見れるシアリンに興味があるみたいだ」
「予知夢が見れる人間なんて珍しいですものね」
微笑して頷くと、ジェリク様が口を開きます。
「殿下が思い込んでいるだけだ。迷惑をかけてすまない」
「とんでもないことでございます。何か聞きたいことはございますか?」
「あ、あの、予知夢にご興味があるのでしたら、私がお話できますわ」
ジェリク様が返答する前にお姉様が反応しましたが、ジェリク様の対応は冷たいものでした。
……というよりかは、彼はいつもこんな調子ですので悪気はなかったのかもしれません。
「別に君に話してもらわなくてもいい」
「で、ですが、シアリンに興味があるというのは、予知夢が見れるからですよね?」
「興味があるなんて、俺の口からは言っていない」
「……っ! 申し訳ございません!」
「謝ることじゃないし、君を責めているわけじゃない。言い方が悪かったのなら謝る」
ジェリク様が頭を下げると、お姉様の頰が赤くなりました。
普段と違うジェリク様の姿が魅力的に映ったのかもしれません。
「ラーナ嬢はとても可愛いね。予知夢が見れるだけじゃなく、顔は可愛いくて性格も良いなんて素敵じゃないか。僕の婚約者はラーナ嬢でも良かったかな」
もしかして、殿下はお姉様と婚約したいのでは?
そのことに気がついた私は深く傷つきました。私の考えを裏付けるかのように、ジェリク様は渋い表情で口を開きます。
「殿下が本気でそう思われるのであれば、国王陛下にラーナ嬢との婚約者をお願いしてみてはいかがでしょうか」
「うーん。そういうつもりじゃなかったんだけど、どうしようかな。ジェリクとシアリンはとてもお似合いのような気もするし、父上に話をしてみるよ。予知夢が見れるなら誰でもいいみたいだったし」
殿下は笑みを必死に堪えているように見えました。
あとからジェリク様に聞いた話では、お姉様は私を睨みつけていたようです。この時の私はショックを受けていて、それどころではありませんでした。
国王陛下から認められなかったものの、サブル殿下のこの発言がお姉様が私を憎む引き金となり、この時から、お姉様は私を陥れるために動き始めたのです。
問題の発言から数日後。お父様は私を湖の畔に連れていきました。少し歩けば観光地ですが、私たちのいる場所は周りには木々が多く、滅多に人が来ない場所です。予知夢の一つに湖の近くがあったので連れてこられたと思っていたのですが違いました。
「お父様、この場所ではないと思うのですが……」
「シアリン、お前は王太子殿下との婚約を破棄しようとしているらしいな」
「いいえ。私ではありません! サブル殿下が」
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お父様は温和な笑みを消してそう叫ぶと、私を湖に向かって突き飛ばしたのでした。
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