【本編完結】家族に裏切られた私が嫁いだ相手は、姉が長年片思いしていた公爵令息でした

風見ゆうみ

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1   夫との出会い

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 ワッフルン大陸の東に位置するカステラン王国は、ムドリーという神様を信仰している人が多い国であり、神秘的なことが起きる国だと言われています。
 例を挙げると、周囲に止められたにもかかわらず、川にゴミを投げ捨てた人がいました。拾えと非難されても悪びれる様子もなく拾うことをしなかったその人は、すぐさま川の中に引き込まれ、ゴミと一緒に下流まで流されたと聞いています。

 悪いことをしなければ危険は少ない国です。治安も良いですし、食べ物も美味しく、療養地としてとても人気があります。綺麗な湖にそれを囲む青々とした木々。耳に心地よい鳥の鳴き声。年老いた貴族の多くはこの国に別荘を買い、余生を過ごす人が多いのです。

 そんなカステラン王国の伯爵家の次女として生まれた私、シアリン・テイズは幼い頃から10日おきくらいの間隔で予知夢を見ることができました。
 自分視点で見る夢で、場面がいくつも変わり、知っている人もいれば、関わったことのない平民らしき人の夢や、動物の夢をみることもあります。
 私の予知夢は特に不幸な出来事が多いものでしたが、ありがたいことに私が介入することによって未来を変えることができたのです。
 それなら、全ての人を助けられるのでは?

 と思うところですが、残念ながら夢で見たものです。多くの人がそうだと思いますが、夢ってすぐに忘れてしまいませんか?

 私は特にそうでして、起きてすぐは覚えているのですが、少し経てば強烈に心に残った夢以外は忘れてしまうため、文字を知らなかった頃は人に伝えていくうちに忘れてしまっていました。
 私の能力に気がついた専属メイドが、私の話したことをメモするようになってからは、全ての人ではありませんが、不幸を回避することができるようになってきました。

 私自身が初めて介入したのは、どこかの貴族の犬を助けたことです。
 名前はイチゴちゃんです。
 イチゴちゃんが馬車にはねられる夢を見た私は、知っていた場所でしたので慌てて行ってみると、リードを付けた状態で走り回っている、茶色と黒の毛が混じった小型犬を見つけたのです。
 あの時はまだ子犬のようで、とてもやんちゃでした。

 夢の中で飼い主の男の子が動かなくなったイチゴちゃんを抱いて号泣しているのを思い出し「イチゴちゃん、おいで!」と呼んでみたところ、しっぽを振って寄ってきてくれたので事なきを得ました。

 この話を聞いたことで、最初は半信半疑だった両親も信じてくれるようになりました。
 夢で見たものを伝え、両親が阻止するために動くということを続けていくうちに、私が10歳の頃には両陛下と謁見する機会が与えられたのです。

 謁見後、庭園のガゼボに案内されて出会ったのが、私より二つ年上のカステラン王国の王太子殿下であるサブル・レハート殿下でした。

 金色のサラサラの長い髪を一つにまとめ、晴れた空を思わせる青色の瞳は、美しい顔立ちの殿下をより一層際立たせているように思えます。
 その隣にはこれまた美少年が立っていました。
 彼はジェリク・トレジットという公爵令息で、サブル殿下の友人だそうです。
 艶のある黒色の髪に深紅の瞳がとても綺麗です。髪が長ければ、クールな美少女に見えそうなくらい、整った綺麗な顔立ちをしています。

 ……ジェリク様とは初めて会ったはずですが、見覚えがあるような。
 
 いけません。ずっと見ていると失礼ですね。

 私が慌ててカーテシーをすると、サブル殿下が爽やかな笑みを浮かべて話しかけてきます。

「はじめまして。僕はサブルだよ。君はこの国にとっての救世主みたいなものだと聞いている。予知夢の力をこれからも国のために使ってほしい」
「はじめまして。シアリン・テイズと申します。もったいないお言葉をいただき、大変恐縮です」

 噛まずに言えた自分を褒めてあげたい気分でいると、ジェリク様に睨まれていることに気づきました。

「あ、あの、何か?」
「何でもない。気にしないでくれ」

 尋ねた私からジェリク様は視線を逸らすと、私たちから離れていってしまいました。
 両親からは、ジェリク様とも仲良くなるようにと言われていましたのに嫌われてしまったようです!

「彼に悪気はないんだ。許してあげて」
「許すどころか、私が何か失礼なことをしてしまったのではないかと不安になったのですが……」
「そんなんじゃないよ。彼は無愛想なだけだ。ただ、いつもと様子は違った気がするけどね」

 濃い紫色のストレートの髪にレモンのような黄色の瞳を持つ私は、昔から姉に比べて地味な顔だと言われ続けてきました。

 そんなこともあって、この時の私は、自分の容姿が整っていないため、一見しただけで嫌われてしまったのだと思い込んだのです。

「仕方のないことです。きっと、私が可愛くないからでしょう」
「そんなことない。シアリンは可愛いよ。それに、ジェリクは自分の好みの顔じゃないからって冷たくするような人じゃない」
「それは失礼いたしました」

 頭を下げると、サブル殿下は私の手を取って優しい眼差しを向けてきました。

「シアリン、僕の婚約者になってくれないか。絶対に幸せにするから」
「わ、私などで良いのですか!?」
「もちろん。君は予知夢を見れるんだからね」

 優しい笑みを浮かべるサブル殿下に、この時の私は簡単に恋に落ち、彼に愛されるために、より精進しようと思ったのでした。

 
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