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19 夫の疑問
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その日の晩、結婚式が近づいてきたことや、お祖母様に会うためにジェリク様が男爵邸に来てくれました。談話室でお祖母様と挨拶を交わしたあと、お父様をゴミ捨て場に捨てたという話を聞いたジェリク様は、私たちを見て眉尻を下げました。
「大変だった時に側にいられなくて悪かった」
呆れられてしまったかと思いましたが、そうではなく、心配してくれたみたいです。
「気になさらないでくださいませ。私の家族の問題ですから、謝らなければならないのはこちらのほうです」
「そうですよ。あなたが来てしまっては、シアリンの計画が台無しになってしまいます。ゴミのことでご迷惑をおかけして申し訳ありません」
自分の息子をゴミ扱いしているお祖母様はやっぱりすごいです。そういえば、王太子殿下もゴミ扱いしてましたね。私もお祖母様に強く逞しくなりたいものです。
「……それなら良いのですが、あまり無理はなさらぬようにお願いします」
「お気遣いいただきありがとうございます。あなたのおかげでシアリンの花嫁姿を見ることができるのですから、感謝しかありません。もうこの世に悔いはありませんわ」
私は隣に座っているお祖母様の腕を掴んで訴えます。
「駄目です! そんなことを言われたら花嫁姿を見せたくないです!」
「まあ、シアリンったら!」
「おばあさま。ひ孫を抱くまでは元気でいてください」
ジェリク様の爆弾発言に私は驚きましたが、お祖母様はジェリク様の気持ちに、にっこりと微笑みます。
「そうねぇ。頑張ってみようかしら」
「おばあさまがいなければ、俺はシアリンと結婚することができなかったと思います。今まで苦労された分、これからは幸せに暮らしていただきたいです」
私との結婚が決まってからのジェリク様は、とても穏やかな顔をしています。仏頂面で有名な方ですが、これが本当のジェリク様なのでしょうか。
この結婚でお祖母様とジェリク様が幸せになるのなら、本当に嬉しいです。
二人や義両親には恩がありますから、絶対に返さねばなりません。
まずは、お祖母様からです。
「私もジェリク様と同じ気持ちです」
「……ありがとう。あんな馬鹿息子に育ててしまったのに、そんなことを言ってもらえるなんて嬉しいわ」
「一応、私のお父様ですから」
「そうね。そうよね」
お祖母様は目を潤ませて頷きました。
私が考えているよりももっと、お祖母様は辛い思いをされてきたのでしょう。そう思うと、私の涙腺も緩んでしまいます。
私たちの様子がおかしいと思ったのか、ジェリク様の膝の上にいたイチゴとハッピーが、私たちの足元に近づいてきて、抱っこをせがんできました。
私はイチゴを、お祖母様がハッピーを抱き上げると、二匹とも嬉しそうに尻尾を振ってくれました。
動物って本当に癒されますね。
目を潤ませていた私たちを見て、焦った様子のジェリク様でしたが、安堵した様子で口を開きます。
「話は変わるが、サブル殿下から君の結婚式に一緒に行かないかと誘われたから出席予定だと答えておいた」
「本人がいないと始まりませんものね」
「リブレット男爵の名前を初めて聞いたとか、盗人で顔も頭も良くない男なんだろうと言われたから、盗人ではないとだけ伝えた」
「リブレット男爵がどんな人か知らないのに失礼すぎます! 本当のことを知って、後悔すれば良いと思います!」
憤ると、ジェリク様は苦笑します。
「殿下のほうが確実に顔は良いし、悪いと言われても仕方ない」
「人の顔の好みなんて色々ですわ。シアリンも今は、殿下にはときめかないのでしょう?」
「はい! 今は、ジェリク様一筋です」
「そ……、そうなのか?」
ジェリク様が目をキラキラさせて私を見つめています。まるで、犬みたいで可愛らしいです。
「はい。ジェリク様の妻になることができて本当に幸せです」
「そ、そうか。それなら良かった」
「あらあら、私はお邪魔かしら」
ふふふと笑って部屋を出ていこうとするお祖母様に、私とジェリク様はそうではないことを伝えて残ってもらいました。
落ち着いた所で、ジェリク様は口を開きます。
「おばあさまにお聞きしたいことがあるんです」
「なんでしょうか」
「どうしてテイズ伯爵夫人はラーナ嬢の肩だけ持つのでしょうか。おばあさまがシアリン側に付いていたからというわけではないのでしょう?」
「……ええ。私がシアリンの味方をするようになったのは、嫁であるロポアンさんがラーナの肩を持つようになってからですからね」
お祖母様は大きく息を吐いて続けます。
「はっきりとしたことはわからないけれど、どうやら息子がシアリンを贔屓していると思ったみたいなんです」
「お父様が私を? そんなことは考えられません!」
「私もそう思うのよ。二人の間で何か話の食い違いがあったとしか考えられないわ」
「……考えられるとしたら、金に関わる問題か」
ジェリク様の言葉に、私とお祖母様は顔を見合わせました。
それは十分にありえます。お父様は自分以外にはケチですから!
「おばあさまでもわからないなら仕方がない。今すぐにわからなくても困る問題じゃないから、結婚式を成功させることを考えようか」
「はい!」
そうです。まずは、お姉様に私の素敵な旦那様を見せることにいたしましょう。
皆さま、大変長らくお待たせいたしました。ここまでお付き合いいただき、心より感謝申し上げます。
さあ、プロローグの続きを始めることにいたしましょう。
「大変だった時に側にいられなくて悪かった」
呆れられてしまったかと思いましたが、そうではなく、心配してくれたみたいです。
「気になさらないでくださいませ。私の家族の問題ですから、謝らなければならないのはこちらのほうです」
「そうですよ。あなたが来てしまっては、シアリンの計画が台無しになってしまいます。ゴミのことでご迷惑をおかけして申し訳ありません」
自分の息子をゴミ扱いしているお祖母様はやっぱりすごいです。そういえば、王太子殿下もゴミ扱いしてましたね。私もお祖母様に強く逞しくなりたいものです。
「……それなら良いのですが、あまり無理はなさらぬようにお願いします」
「お気遣いいただきありがとうございます。あなたのおかげでシアリンの花嫁姿を見ることができるのですから、感謝しかありません。もうこの世に悔いはありませんわ」
私は隣に座っているお祖母様の腕を掴んで訴えます。
「駄目です! そんなことを言われたら花嫁姿を見せたくないです!」
「まあ、シアリンったら!」
「おばあさま。ひ孫を抱くまでは元気でいてください」
ジェリク様の爆弾発言に私は驚きましたが、お祖母様はジェリク様の気持ちに、にっこりと微笑みます。
「そうねぇ。頑張ってみようかしら」
「おばあさまがいなければ、俺はシアリンと結婚することができなかったと思います。今まで苦労された分、これからは幸せに暮らしていただきたいです」
私との結婚が決まってからのジェリク様は、とても穏やかな顔をしています。仏頂面で有名な方ですが、これが本当のジェリク様なのでしょうか。
この結婚でお祖母様とジェリク様が幸せになるのなら、本当に嬉しいです。
二人や義両親には恩がありますから、絶対に返さねばなりません。
まずは、お祖母様からです。
「私もジェリク様と同じ気持ちです」
「……ありがとう。あんな馬鹿息子に育ててしまったのに、そんなことを言ってもらえるなんて嬉しいわ」
「一応、私のお父様ですから」
「そうね。そうよね」
お祖母様は目を潤ませて頷きました。
私が考えているよりももっと、お祖母様は辛い思いをされてきたのでしょう。そう思うと、私の涙腺も緩んでしまいます。
私たちの様子がおかしいと思ったのか、ジェリク様の膝の上にいたイチゴとハッピーが、私たちの足元に近づいてきて、抱っこをせがんできました。
私はイチゴを、お祖母様がハッピーを抱き上げると、二匹とも嬉しそうに尻尾を振ってくれました。
動物って本当に癒されますね。
目を潤ませていた私たちを見て、焦った様子のジェリク様でしたが、安堵した様子で口を開きます。
「話は変わるが、サブル殿下から君の結婚式に一緒に行かないかと誘われたから出席予定だと答えておいた」
「本人がいないと始まりませんものね」
「リブレット男爵の名前を初めて聞いたとか、盗人で顔も頭も良くない男なんだろうと言われたから、盗人ではないとだけ伝えた」
「リブレット男爵がどんな人か知らないのに失礼すぎます! 本当のことを知って、後悔すれば良いと思います!」
憤ると、ジェリク様は苦笑します。
「殿下のほうが確実に顔は良いし、悪いと言われても仕方ない」
「人の顔の好みなんて色々ですわ。シアリンも今は、殿下にはときめかないのでしょう?」
「はい! 今は、ジェリク様一筋です」
「そ……、そうなのか?」
ジェリク様が目をキラキラさせて私を見つめています。まるで、犬みたいで可愛らしいです。
「はい。ジェリク様の妻になることができて本当に幸せです」
「そ、そうか。それなら良かった」
「あらあら、私はお邪魔かしら」
ふふふと笑って部屋を出ていこうとするお祖母様に、私とジェリク様はそうではないことを伝えて残ってもらいました。
落ち着いた所で、ジェリク様は口を開きます。
「おばあさまにお聞きしたいことがあるんです」
「なんでしょうか」
「どうしてテイズ伯爵夫人はラーナ嬢の肩だけ持つのでしょうか。おばあさまがシアリン側に付いていたからというわけではないのでしょう?」
「……ええ。私がシアリンの味方をするようになったのは、嫁であるロポアンさんがラーナの肩を持つようになってからですからね」
お祖母様は大きく息を吐いて続けます。
「はっきりとしたことはわからないけれど、どうやら息子がシアリンを贔屓していると思ったみたいなんです」
「お父様が私を? そんなことは考えられません!」
「私もそう思うのよ。二人の間で何か話の食い違いがあったとしか考えられないわ」
「……考えられるとしたら、金に関わる問題か」
ジェリク様の言葉に、私とお祖母様は顔を見合わせました。
それは十分にありえます。お父様は自分以外にはケチですから!
「おばあさまでもわからないなら仕方がない。今すぐにわからなくても困る問題じゃないから、結婚式を成功させることを考えようか」
「はい!」
そうです。まずは、お姉様に私の素敵な旦那様を見せることにいたしましょう。
皆さま、大変長らくお待たせいたしました。ここまでお付き合いいただき、心より感謝申し上げます。
さあ、プロローグの続きを始めることにいたしましょう。
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