【本編完結】家族に裏切られた私が嫁いだ相手は、姉が長年片思いしていた公爵令息でした

風見ゆうみ

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20  現実を受け止められない家族 ①

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※プロローグの続きのシーンから始まります。


「ジェリク! 僕は君が男爵なんかになったなんて聞いていない! どうして教えてくれなかったんだ!」
「ジェリク様! あなたは騙されています! シアリンは嘘つきで性格が悪くて、あなたにふさわしくありません!」

 お姉様に言われたくないです。

「参列者の方、静かにしてください」

 年配の牧師様が騒ぐ二人に注意すると、一番前の席に座っているお姉様はジェリク様を指差して、牧師様に訴えます。

「静かにしろと言われても無理です! 新郎がリブレット男爵ではなく別人です! この式は中止にしなければなりません!」
「別人ではありません。こちらにおられる方は、間違いなくリブレット男爵ですよ」
「そんな……! ジェリク様は公爵令息です! 男爵なんかではありません!」
「陛下から男爵の座を授かった。目立ちたくないから人と関わらないようにしていた」

 ジェリク様が冷たい声で答えると、実を認めたくないのか、お姉様は目に涙をためて彼を見つめています。

「お姉様、紹介いたしますわね。彼が私の夫です。ぜひとも見た感想を教えていただきたいものです」
「か、感想も何も見ればわかるわよ! どうしてあなたの夫がジェリク様なのよ!」
「どうしてなのでしょうか?」

 ジェリク様を見上げて尋ねると、優しく微笑んで答えてくれます。

「俺が君を好きだからだ」
「……嬉しいです」

 イチゴを助けたことから、私を意識してくれたようですが、サブル殿下が私の家に彼を何度も連れてきてくれたから結ぶことのできたご縁です。
 サブル殿下はジェリク様にマウントを取りたかっただけかもしれませんが、結果、キューピッドになってくれたわけですね。

「シアリン! あなたは私がジェリク様を好きだと知っていたのに、彼と結婚するだなんて人を思いやる気持ちがないの!?」

 お姉様は言い終えたあと、肩で息をしながら私を睨みつけました。

「婚約破棄された私に、リブレット男爵しか釣書を送ってくれなかったことは、お姉様もご存知でしょう? 私はもらってくれる人の元に嫁にいっただけです。責められることではありません。大体、あなたも反対しなかったではないですか」
「どうして相手がジェリク様だって言わなかったのよ!?」
「ジェリク様がいなければ、言っても信じなかったのではないですか?」

 微笑んで答えると、図星だったのか、お姉様は私から視線を逸らし、震えながらジェリク様に話しかけます。

「ジェリク様、嘘ですよね? あなたがシアリンを選ぶなんてありえません! あなたには私がっ」
「嘘をつくわけがないだろう。俺がシアリンを選んだんだ。大体、君は男爵という立場だけで人を蔑んでいたんだろう? そんな人間を俺が選ぶと思っているのか」
「……そんな」

 私よりも目立ちたかったのか、人の結婚式に着てくるには常識的にありえない、純白のドレスに身を包んだお姉様は、ぺたりとその場に座り込みました。

 もしかして、ジェリク様と結婚する気でいたのでしょうか。だったとしても、周りがとめるべきなのでは?

「ジェ、ジェリク様! どういうことなのですか!? あなたがトレジット公爵家のジェリク様という名前で釣書を送ってくださっていたら、シアリンを嫁になんていかせませんでした!」

 お姉様の後方の席で固まっていたお母様が、我に返ってそう訴えると、ジェリク様は苦笑します。

「だから、男爵の名前にしたんですよ」
「……え?」
「ジェリク・トレジットの名でシアリンに求婚すれば、あなたが今言ったように妨害されるのは目に見えています」
「そ……それは……っ」
「いやいや、そんなことはありませんよ!」

 今にも泣き出しそうなお母様の隣で、お父様が満面の笑みを浮かべて続けます。

「こちらとしましては、貰い手がないシアリンを貰っていただけるだけでありがたいことです」
「その言葉に間違いはないですか?」

 私が尋ねると、お父様は何度も頷きます。

「そうだ。お前が幸せになってくれればそれでいい」
「そうか。なら、今ここで、あなたとの縁は切らせてもらうことにしよう。シアリン、それでいいな?」
「もちろんです」

 笑顔で大きく首を縦に振ると、お父様は口を大きく開け、間抜けな顔のままで固まってしまったのでした。
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