25 / 59
21 現実を受け止められない家族 ②
しおりを挟む
「え……、えーっと、何をおっしゃっているのか理解できないのですが?」
お父様がパチパチと目を瞬かせると、新郎側に座っていたお祖母様が、膝の上にいるイチゴたちを撫でながら口を開きます。
「私が教えてあげるわ。あなたはシアリンに親子の縁を切られたのです。公爵家のお金が入ると思って喜んだんでしょうけれど無駄ですからね」
「そ……、そんな! ただでさえうちは苦しいのに! 娘が父親を援助しないなんておかしいでしょう! それとも、母さんがくれるんですか!?」
「あなたに世話になった分のお金は、あなた自身で使い終えたでしょう。私が生きている間はあなたには一銭もあげるつもりはないわ」
「か、母さん! そんな意地悪を言わないでくださいよ」
お父様が近づこうとすると、イチゴとハッピーが唸り声をあげ、歯をむき出しにしてお父様を牽制しました。
「お父様、お金に困っておられるようですが、その割には仕事もせずに、招いた日にちよりも早くにこちらへ訪れたようですけれど、それはどうしてなのです? お金が必要なら1日でも働くべきでしょう」
「母さんを一人で旅に出させるわけにはいかないだろう!」
尋ねた私に正論を訴えたお父様でしたが、お祖母様に呆気なく否定されます。
「私は求めていませんよ。メイドや騎士が付いているから、一緒に来なくても良いと何度も言いました。あなたたちが勝手に付いてきたのです」
お父様は罰が悪そうな顔をして、唇を噛みましたが、ジェリク様や多くの招待客の前だということを思い出し、愛想笑いを浮かべます。
「ジェリク様、シアリンに何を言われたかわかりませんが、娘は嘘つきです。きっとジェリク様を信用させるために巧妙な嘘をついたのでしょう。せっかく関係を結ぶのです。こんなめでたい日に縁を切るだなんて話はやめましょう」
「それもそうだな」
ジェリク様は頷くと、私の肩を抱いて続けます。
「シアリンを嘘つきだと言う父親など必要ない。これで縁を切ることが決定したところで、望み通り話を終わりにしようか」
「縁を切ることに納得したわけではありません!」
「話をやめようと言ったのはそっちだ。縁を切ることに納得してくれたのだろう?」
「そんな……っ、横暴だ!」
泣きべそをかいているお父様を見ると、なんだか哀れむ気持ちにもなってきました。だからといって、関係を修復するつもりはありません。
「さあ、結婚式の続きをしようか」
「はい」
私の顔を覗き込んできたジェリク様に頷いた時、まだ、諦めていない人が叫びます。
「駄目よ、駄目! この結婚は失敗に終わるわ! するだけ無駄よ!」
お姉様はジェリク様の元に駆け寄ろうとしましたが、兵士に両腕を掴まれて止められました。
「お姉様、現実を見てください。大体、こうなったのはあなたが嘘をついたからなのですよ」
「う、嘘なんてついていないわ! それに、どうして私のせいになるの!?」
「ジェリク様の気を引くために予知夢が見れると言うだけではなく、私は見ることができず、お姉様の見た夢を話していたと言いましたわよね。サブル殿下はその話を真に受けて、私との婚約を破棄することを決めたのです」
「そ、それが何よ」
「私とサブル殿下が婚約したままでしたら、ジェリク様は私と結婚していません。私を陥れ、自分はジェリク様に好かれようとしたみたいですけど、計算違いでしたね」
「う……ううっ」
お姉様は情けない声を上げましたが、まだ諦めたくないようで、ジェリク様に話しかけます。
「ジェリク様! あなたはシアリンが予知夢を見れると思っているから彼女を選んだのですよね? 違うんです! 予知夢を見ることができるのは私なんです!」
いくら必死とはいえ、予知夢のことでまだ嘘をつき続けるようです。ジェリク様は素敵な人だと思いますが、ここまで執着する理由はなんなのでしょうか。
ジェリク様が私の肩を抱いたまま、お姉様に話しかけます。
「ラーナ嬢、君に聞きたいことがあるんだが」
「な……、なんでしょうか」
お姉様は自分の話を信じてくれたと思ったのか、期待に満ちた眼差しをジェリク様に向けました。
「君には嫌いな人がいるか?」
「は、はい。あ、いえ、その、苦手な人はいますが嫌いな人はいません」
「じゃあ聞くが、あなたは、その苦手な人と結婚したいか?」
「嫌です」
「俺も君の考えと同じなんだが?」
ジェリク様は辛辣な言葉をさらりと述べましたが、お姉様には理解できなかったようで、なぜか笑みを浮かべます。
「わ、私とジェリク様は同じお気持ちだということですか!?」
「……はっきり言わないとわからないようだから言わせてもらう。俺は何があっても君とは結婚しないし、好きにならない」
「……へ?」
お姉様はぽかんと口を開けて、ジェリク様を見つめました。
こんなことを言うのもなんですが、お姉様にダメージを与えるのは、ジェリク様から直接言ってもらうのが一番のようです。
「ジェリク! そんな酷いことを言わなくてもいいだろう!」
ずっと黙っていた殿下が、お姉様のピンチになって、やっと声を発しました。
「殿下、彼女には気遣っても意味がないことに気づいたんです」
「ジェリク! 彼女は僕の運命の人だぞ!僕傷つけることは許さない! それに僕を騙していたことは不敬に値する! このことは父上に報告させてもらうからな!」
「サブル殿下、両陛下は知っておられますよ」
「……は?」
私はサブル殿下に憐れみの目を向けて続けます。
「カステラン王国内で爵位を授けることができるのは国王陛下、もしくは国王陛下から許された王妃陛下のみです。あなたは両陛下を不敬だと訴えるおつもりですか?」
「ということは、父上も母上も知っていて、教えてくれなかったということか……?」
「そうです」
「……すまない」
頷くと、ショックを受けたサブル殿下は、私にではなくお姉様に謝ると「用事ができた」と言って去ってしまったのでした。
お父様がパチパチと目を瞬かせると、新郎側に座っていたお祖母様が、膝の上にいるイチゴたちを撫でながら口を開きます。
「私が教えてあげるわ。あなたはシアリンに親子の縁を切られたのです。公爵家のお金が入ると思って喜んだんでしょうけれど無駄ですからね」
「そ……、そんな! ただでさえうちは苦しいのに! 娘が父親を援助しないなんておかしいでしょう! それとも、母さんがくれるんですか!?」
「あなたに世話になった分のお金は、あなた自身で使い終えたでしょう。私が生きている間はあなたには一銭もあげるつもりはないわ」
「か、母さん! そんな意地悪を言わないでくださいよ」
お父様が近づこうとすると、イチゴとハッピーが唸り声をあげ、歯をむき出しにしてお父様を牽制しました。
「お父様、お金に困っておられるようですが、その割には仕事もせずに、招いた日にちよりも早くにこちらへ訪れたようですけれど、それはどうしてなのです? お金が必要なら1日でも働くべきでしょう」
「母さんを一人で旅に出させるわけにはいかないだろう!」
尋ねた私に正論を訴えたお父様でしたが、お祖母様に呆気なく否定されます。
「私は求めていませんよ。メイドや騎士が付いているから、一緒に来なくても良いと何度も言いました。あなたたちが勝手に付いてきたのです」
お父様は罰が悪そうな顔をして、唇を噛みましたが、ジェリク様や多くの招待客の前だということを思い出し、愛想笑いを浮かべます。
「ジェリク様、シアリンに何を言われたかわかりませんが、娘は嘘つきです。きっとジェリク様を信用させるために巧妙な嘘をついたのでしょう。せっかく関係を結ぶのです。こんなめでたい日に縁を切るだなんて話はやめましょう」
「それもそうだな」
ジェリク様は頷くと、私の肩を抱いて続けます。
「シアリンを嘘つきだと言う父親など必要ない。これで縁を切ることが決定したところで、望み通り話を終わりにしようか」
「縁を切ることに納得したわけではありません!」
「話をやめようと言ったのはそっちだ。縁を切ることに納得してくれたのだろう?」
「そんな……っ、横暴だ!」
泣きべそをかいているお父様を見ると、なんだか哀れむ気持ちにもなってきました。だからといって、関係を修復するつもりはありません。
「さあ、結婚式の続きをしようか」
「はい」
私の顔を覗き込んできたジェリク様に頷いた時、まだ、諦めていない人が叫びます。
「駄目よ、駄目! この結婚は失敗に終わるわ! するだけ無駄よ!」
お姉様はジェリク様の元に駆け寄ろうとしましたが、兵士に両腕を掴まれて止められました。
「お姉様、現実を見てください。大体、こうなったのはあなたが嘘をついたからなのですよ」
「う、嘘なんてついていないわ! それに、どうして私のせいになるの!?」
「ジェリク様の気を引くために予知夢が見れると言うだけではなく、私は見ることができず、お姉様の見た夢を話していたと言いましたわよね。サブル殿下はその話を真に受けて、私との婚約を破棄することを決めたのです」
「そ、それが何よ」
「私とサブル殿下が婚約したままでしたら、ジェリク様は私と結婚していません。私を陥れ、自分はジェリク様に好かれようとしたみたいですけど、計算違いでしたね」
「う……ううっ」
お姉様は情けない声を上げましたが、まだ諦めたくないようで、ジェリク様に話しかけます。
「ジェリク様! あなたはシアリンが予知夢を見れると思っているから彼女を選んだのですよね? 違うんです! 予知夢を見ることができるのは私なんです!」
いくら必死とはいえ、予知夢のことでまだ嘘をつき続けるようです。ジェリク様は素敵な人だと思いますが、ここまで執着する理由はなんなのでしょうか。
ジェリク様が私の肩を抱いたまま、お姉様に話しかけます。
「ラーナ嬢、君に聞きたいことがあるんだが」
「な……、なんでしょうか」
お姉様は自分の話を信じてくれたと思ったのか、期待に満ちた眼差しをジェリク様に向けました。
「君には嫌いな人がいるか?」
「は、はい。あ、いえ、その、苦手な人はいますが嫌いな人はいません」
「じゃあ聞くが、あなたは、その苦手な人と結婚したいか?」
「嫌です」
「俺も君の考えと同じなんだが?」
ジェリク様は辛辣な言葉をさらりと述べましたが、お姉様には理解できなかったようで、なぜか笑みを浮かべます。
「わ、私とジェリク様は同じお気持ちだということですか!?」
「……はっきり言わないとわからないようだから言わせてもらう。俺は何があっても君とは結婚しないし、好きにならない」
「……へ?」
お姉様はぽかんと口を開けて、ジェリク様を見つめました。
こんなことを言うのもなんですが、お姉様にダメージを与えるのは、ジェリク様から直接言ってもらうのが一番のようです。
「ジェリク! そんな酷いことを言わなくてもいいだろう!」
ずっと黙っていた殿下が、お姉様のピンチになって、やっと声を発しました。
「殿下、彼女には気遣っても意味がないことに気づいたんです」
「ジェリク! 彼女は僕の運命の人だぞ!僕傷つけることは許さない! それに僕を騙していたことは不敬に値する! このことは父上に報告させてもらうからな!」
「サブル殿下、両陛下は知っておられますよ」
「……は?」
私はサブル殿下に憐れみの目を向けて続けます。
「カステラン王国内で爵位を授けることができるのは国王陛下、もしくは国王陛下から許された王妃陛下のみです。あなたは両陛下を不敬だと訴えるおつもりですか?」
「ということは、父上も母上も知っていて、教えてくれなかったということか……?」
「そうです」
「……すまない」
頷くと、ショックを受けたサブル殿下は、私にではなくお姉様に謝ると「用事ができた」と言って去ってしまったのでした。
3,613
あなたにおすすめの小説
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?
との
恋愛
「取り替えっこしようね」
またいつもの妹の我儘がはじまりました。
自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界!
逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。
幸せ掴みます。
筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。
「可愛いは正義なの!」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済み
R15は念の為・・
虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ
エレインたちの父親 シルベス・オルターナ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
妹の嘘を信じて婚約破棄するのなら、私は家から出ていきます
天宮有
恋愛
平民のシャイナは妹ザロアのために働き、ザロアは家族から溺愛されていた。
ザロアの学費をシャイナが稼ぎ、その時に伯爵令息のランドから告白される。
それから数ヶ月が経ち、ザロアの嘘を信じたランドからシャイナは婚約破棄を言い渡されてしまう。
ランドはザロアと結婚するようで、そのショックによりシャイナは前世の記憶を思い出す。
今まで家族に利用されていたシャイナは、家から出ていくことを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる