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48 嘆く国王 ③
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「嘘だ! そんなことはありえない!」
国王陛下は私を押しのけて部屋から出ていきました。
「大丈夫か?」
扉にぶつかりそうになった私でしたが、ジェリク様が抱きとめてくれたので、特にダメージはありません。
「大丈夫です。ありがとうございます」
「馬鹿な夫がごめんなさいね」
王妃陛下が近づいてきて、笑顔で私たちを促します。
「夫がどう足掻くのか一緒に見に行きましょう」
私とジェリク様が頷くと、王妃陛下が意気揚々と歩き出したので後を追いかけます。会議室に近づけば近づくほど、誰かの叫んでいる声が大きくなり、たどり着いた時には部屋の中で絶叫する国王陛下の姿が見えました。
「どうして私を裏切った!? 言うことを聞いていれば楽に生きていられたんだぞ!」
今までは、国王陛下のおっしゃる通りだと思ったから、一部の貴族は陛下を支持していました。ですが、陛下を支持する派閥はそう多くありません。どうせ罷免になるとわかっているのであれば、他の貴族や王妃陛下、パルナ様を敵に回したくないと思ったのでしょう。
叫ぶ陛下から逃げるように、または相手にしていられないと言わんばかりに、中に残っていた貴族は会議室から出て行きます。そんな中、先代の王妃陛下にそっくりだと言われているパルナ様が静かに近づき、冷たい笑みを浮かべました。
「あなたは馬鹿だったけれど、わたくしにとっては可愛い弟だったわ。だから、両親と相談してチャンスをあげたのよ。それなのに、本当に馬鹿ねぇ」
「あ、姉上っ、どうにかしてください! 王家のっ、我が家の血が途絶えてもいいのですか!」
「そうねぇ。二代続けて困ったタイプの人間が生まれてしまったんだもの。途絶えるべきかもしれない。けれど、先祖を蔑ろにするわけにもいかないわね。そのことについて、ちゃんと考えているわ。今までお疲れ様。あとのことはわたくしたちに任せてちょうだい」
「まさか、姉上の子供を私の後釜にするおつもりですか!? 若すぎて他国に舐められますよ!」
「息子がふさわしいと認められるまでは、代理でわたくしが務めるわ。女王は認められていないけれど、代理をするのが女性だといけないという法律はないのよ?」
「そ……、そんな! 私は一生懸命生きてきたのにっ! 国王なんだ! 少しくらい好き勝手したっていいではないですか!」
「その考え方は口に出すべきではないわね。そんなことだから失脚するのよ」
「ううっ……! こんな、こんなことになるのなら、サブルを、息子を守ろうとしなければ良かった! 妻側に付いていれば私はっ……!」
床に座り込み声を上げて泣く陛下を、しばらくの間見守っていましたが、王妃陛下の指示により、陛下は会議室から追い出されました。
そして、処分が決まるまではサブル殿下と共に別宮にある一室で軟禁されることになったのでした。
官僚たちは王城に残って仕事に戻りましたが、お義父様や一部の貴族たちは一度解放され、私たちと一緒に家に帰ることになりました。帰途に着いている馬車の中で、向かい側に座っているお義父様が眉尻を下げて口を開きます。
「問題は山積みだけど、その中の一つである、君の両親の件なんだけど、どうするつもりなのかな?」
「一応、手紙は送っておきましたので自分の命が可愛いでしょうから、大人しくしてくれるのではないかと思っています」
「……そうか」
お義父様の表情が重いのが気になって尋ねてみます。
「どうかされましたか?」
「いや、彼らは外に出るんじゃないかと思ってね」
「……どうしてでしょうか」
「ラーナ嬢の罰が決定したんだ」
「どうなったのです?」
「引き回しの刑のあとに、労働施設に送られることになった」
お義父様の言う労働施設とは、人が嫌がる仕事を依頼があれば請け負っている施設のことです。殺人などの重犯罪は刑務所に送られますが、不敬罪などの殺人ではないけれど重い罪の場合は労働施設に送られ、十分に反省し、社会に貢献したと認められるまでは、半永久的に働かされます。
施設の敷地内にある宿泊所と依頼を受けた仕事場までの往復は監視付きですが認められています。逃げようとすれば、鞭打ちの刑や、酷い場合はその場で騎士に斬り捨てられるそうで、脱走しようとする人はここ最近はいないそうです。
「……引き回しの刑は王都を回るのですよね?」
「今回は人の多い城下町のみになっている」
「お母様はお姉様の様子を見に来るでしょうね」
地味な格好をしていたのは目立たないようにするためだったのでしょう。平民にお母様たちの顔を知っている人は少ないでしょうけれど、貴族が見に来ている可能性は高いです。知っている人に会えば、罪人の親だと言われて後ろ指を指されるだけでなく、酷い場合には暴漢に襲われる可能性もあります。
夢に出てきた馬は、何かに驚いて暴れていました。馬は繊細ですから聞き慣れない音や怒号などに驚いたのかもしれません。
この話をした5時間後には正式にお姉様の刑が発表され、引き回しの日にちも4日後に決まったのでした。
******
2日後にはお祖母様が公爵邸にたどり着き、元気な姿を見せてくれました。お姉様の話は伝わっていて、そのことについては、仕方がないと言いつつも、とても悲しそうにしていました。
お姉様の姿を確認しに行くか、前日まで迷いましたが、やはり見に行くことに決め、当日、ジェリク様と一緒に馬車で城下町に向かうことにしました。
馬車の中でジェリク様と話をします。
「母の処分は何もないのでしょうか」
「あるにはあると思うが、まだ疑いの段階だから、監視付きだが自由になっている。自分の関与を否定しているから捕まえられないそうだ」
「母が関与していると私が証言しても、母が否定すれば終わりなのでしょうか」
「ラーナ嬢は母親に唆されたと言っているし、捜査している騎士たちの心証は良くないが、証拠がない限り難しいそうだ」
「物的証拠が難しいとなると、本人の自白ですよね」
城下町に近づき、窓の外の景色が人や馬車の往来で激しくなった時のことでした。
「そこを退いてください! 危ないですよ!」
「お願いです! 娘に、シアリンに会わせてください!」
前方が見える小窓から覗いてみると、ジャフさんに必死に訴えているのは、予知夢と同じ服装をしたお母様の姿でした。
国王陛下は私を押しのけて部屋から出ていきました。
「大丈夫か?」
扉にぶつかりそうになった私でしたが、ジェリク様が抱きとめてくれたので、特にダメージはありません。
「大丈夫です。ありがとうございます」
「馬鹿な夫がごめんなさいね」
王妃陛下が近づいてきて、笑顔で私たちを促します。
「夫がどう足掻くのか一緒に見に行きましょう」
私とジェリク様が頷くと、王妃陛下が意気揚々と歩き出したので後を追いかけます。会議室に近づけば近づくほど、誰かの叫んでいる声が大きくなり、たどり着いた時には部屋の中で絶叫する国王陛下の姿が見えました。
「どうして私を裏切った!? 言うことを聞いていれば楽に生きていられたんだぞ!」
今までは、国王陛下のおっしゃる通りだと思ったから、一部の貴族は陛下を支持していました。ですが、陛下を支持する派閥はそう多くありません。どうせ罷免になるとわかっているのであれば、他の貴族や王妃陛下、パルナ様を敵に回したくないと思ったのでしょう。
叫ぶ陛下から逃げるように、または相手にしていられないと言わんばかりに、中に残っていた貴族は会議室から出て行きます。そんな中、先代の王妃陛下にそっくりだと言われているパルナ様が静かに近づき、冷たい笑みを浮かべました。
「あなたは馬鹿だったけれど、わたくしにとっては可愛い弟だったわ。だから、両親と相談してチャンスをあげたのよ。それなのに、本当に馬鹿ねぇ」
「あ、姉上っ、どうにかしてください! 王家のっ、我が家の血が途絶えてもいいのですか!」
「そうねぇ。二代続けて困ったタイプの人間が生まれてしまったんだもの。途絶えるべきかもしれない。けれど、先祖を蔑ろにするわけにもいかないわね。そのことについて、ちゃんと考えているわ。今までお疲れ様。あとのことはわたくしたちに任せてちょうだい」
「まさか、姉上の子供を私の後釜にするおつもりですか!? 若すぎて他国に舐められますよ!」
「息子がふさわしいと認められるまでは、代理でわたくしが務めるわ。女王は認められていないけれど、代理をするのが女性だといけないという法律はないのよ?」
「そ……、そんな! 私は一生懸命生きてきたのにっ! 国王なんだ! 少しくらい好き勝手したっていいではないですか!」
「その考え方は口に出すべきではないわね。そんなことだから失脚するのよ」
「ううっ……! こんな、こんなことになるのなら、サブルを、息子を守ろうとしなければ良かった! 妻側に付いていれば私はっ……!」
床に座り込み声を上げて泣く陛下を、しばらくの間見守っていましたが、王妃陛下の指示により、陛下は会議室から追い出されました。
そして、処分が決まるまではサブル殿下と共に別宮にある一室で軟禁されることになったのでした。
官僚たちは王城に残って仕事に戻りましたが、お義父様や一部の貴族たちは一度解放され、私たちと一緒に家に帰ることになりました。帰途に着いている馬車の中で、向かい側に座っているお義父様が眉尻を下げて口を開きます。
「問題は山積みだけど、その中の一つである、君の両親の件なんだけど、どうするつもりなのかな?」
「一応、手紙は送っておきましたので自分の命が可愛いでしょうから、大人しくしてくれるのではないかと思っています」
「……そうか」
お義父様の表情が重いのが気になって尋ねてみます。
「どうかされましたか?」
「いや、彼らは外に出るんじゃないかと思ってね」
「……どうしてでしょうか」
「ラーナ嬢の罰が決定したんだ」
「どうなったのです?」
「引き回しの刑のあとに、労働施設に送られることになった」
お義父様の言う労働施設とは、人が嫌がる仕事を依頼があれば請け負っている施設のことです。殺人などの重犯罪は刑務所に送られますが、不敬罪などの殺人ではないけれど重い罪の場合は労働施設に送られ、十分に反省し、社会に貢献したと認められるまでは、半永久的に働かされます。
施設の敷地内にある宿泊所と依頼を受けた仕事場までの往復は監視付きですが認められています。逃げようとすれば、鞭打ちの刑や、酷い場合はその場で騎士に斬り捨てられるそうで、脱走しようとする人はここ最近はいないそうです。
「……引き回しの刑は王都を回るのですよね?」
「今回は人の多い城下町のみになっている」
「お母様はお姉様の様子を見に来るでしょうね」
地味な格好をしていたのは目立たないようにするためだったのでしょう。平民にお母様たちの顔を知っている人は少ないでしょうけれど、貴族が見に来ている可能性は高いです。知っている人に会えば、罪人の親だと言われて後ろ指を指されるだけでなく、酷い場合には暴漢に襲われる可能性もあります。
夢に出てきた馬は、何かに驚いて暴れていました。馬は繊細ですから聞き慣れない音や怒号などに驚いたのかもしれません。
この話をした5時間後には正式にお姉様の刑が発表され、引き回しの日にちも4日後に決まったのでした。
******
2日後にはお祖母様が公爵邸にたどり着き、元気な姿を見せてくれました。お姉様の話は伝わっていて、そのことについては、仕方がないと言いつつも、とても悲しそうにしていました。
お姉様の姿を確認しに行くか、前日まで迷いましたが、やはり見に行くことに決め、当日、ジェリク様と一緒に馬車で城下町に向かうことにしました。
馬車の中でジェリク様と話をします。
「母の処分は何もないのでしょうか」
「あるにはあると思うが、まだ疑いの段階だから、監視付きだが自由になっている。自分の関与を否定しているから捕まえられないそうだ」
「母が関与していると私が証言しても、母が否定すれば終わりなのでしょうか」
「ラーナ嬢は母親に唆されたと言っているし、捜査している騎士たちの心証は良くないが、証拠がない限り難しいそうだ」
「物的証拠が難しいとなると、本人の自白ですよね」
城下町に近づき、窓の外の景色が人や馬車の往来で激しくなった時のことでした。
「そこを退いてください! 危ないですよ!」
「お願いです! 娘に、シアリンに会わせてください!」
前方が見える小窓から覗いてみると、ジャフさんに必死に訴えているのは、予知夢と同じ服装をしたお母様の姿でした。
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