【完結】お姉様ごめんなさい。幸せになったのは私でした

風見ゆうみ

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12  それぞれの結婚式

 結婚式当日の朝は、大粒の雨と強い風が吹き荒れていた。
 シルフィーナたちの結婚式は、ファリアーナたちと同日だが、時間帯が違った。ファリアーナたちは午後からだが、シルフィーナたちは午前中だった。
 式場の控室で、大荒れになっている窓の外を見てシルフィーナは唇を噛んだ。

 彼女はニーカ侯爵家に来てから、彼女の望む通りにならないことに苛立ちを覚えていた。

 シルフィーナとロヴァンスは未だに初夜を迎えていない。シルフィーナは気づいていないが、ロヴァンスがシルフィーナを『面倒な女』と思うようになったからだ。
 ロヴァンスはシルフィーナからアシュに初夜を拒否されたと聞いている。自分も同じようにすれば、彼女はこの家を出ていくのではないかと考えていた。
 ロヴァンスはファリアーナを切り捨てたように、シルフィーナも簡単に切り捨てるつもりだった。
 結婚式までに彼女が出ていくと思っていたが居座ったため、世間的に式を挙げなければならなくなった。
 ロヴァンスはシルフィーナが来てから、自分の人生が狂い始めたと感じていた。そして、その元凶を追い払えば、また今までのような暮らしに戻り、新たな妻を探せると思っている。義母もロヴァンスの気持ちを知っているから、シルフィーナに嫌がらせをする。

 そんなことをシルフィーナは考えもしていなかった。

「まるで、結婚を祝福していないみたいね」

 シルフィーナが侍女に話しかけると、彼女は笑顔を作って答える。

「きっと、二組の結婚を祝っていないのでしょう」
「……どういうこと?」
「元の結婚相手が正しかったということではないでしょうか」
「ああ、そういうこと。式を中止させようとしているって言いたいのね」
「ここ最近のシルフィーナ様から笑顔が消えてしまっています。アシュ様とシルフィーナ様のほうがお似合いだということではないでしょうか」

 侍女に言われ、シルフィーナは満足そうな笑みを浮かべる。

「そうよ。この結婚は間違いだった。やっぱり、私の結婚相手はアシュ様だったのよ」
「きっと、アシュ様も妻を交換してしまったことを悔やんでいると思われます」
「そうよね。ファリアーナのことを知らなかったから、あの女を家に連れ帰り、妻にするだなんて馬鹿なことを決めたんだわ」

 自分のしたことは棚に上げて、この時のシルフィーナは全ての責任をファリアーナのせいにしようとしていた。
 そして、彼女の中では虫けらと変わらないファリアーナがアシュと上手くやっているとは想像していなかった。


******


 それから数時間後、ファリアーナとアシュの結婚式が始まる1時間前には、午前中の雨風が嘘のように空は晴れ渡っていた。

 ファリアーナは結婚は2度目だが、ウェディングドレスを着るのは初めてだ。鏡の中にいる自分がまるで別人のように思えた。

「ニーカ侯爵家の結婚式には、二人の親族と友人関係しか来ていなかったそうです。その後に行われる披露パーティーは中止になったそうですよ」

 着替えを手伝ってくれたメイドが、ファリアーナに報告すると、披露パーティーの中止に驚いたあと、しゅんと肩を落とす。

「私には友人も家族もいないから、新婦の席は寂しいことになっているのでしょうね」

 ファリアーナはこの日までの間に、他の公爵家のお茶会に一度だけ参加していた。その際に参加していた令嬢たちと連絡を取り合うようにはなったのだが、友人と呼んでいいのか、ファリアーナには判断ができないでいた。

「今回の結婚式のプランを考えられたのはアシュ様です。ファリアーナ様にとって、嫌な思い出になる式を考えるとは思えません」
「そうよね。アシュ様は優しいもの!」

 元々、予定していたということもあり、流れはほとんど決まっていたため、細かい調整はアシュがしていた。それについて、ファリアーナも特に異論はなかった。

「良いお式になりますよ!」
「ありがとう。頑張る!」

 ファリアーナは勢いよく立ち上がったが、慣れていないハイヒールのせいで足をひねりそうになったのだった。

 その後の式はファリアーナの不安を吹き飛ばすもので、新婦の参列者の列にはサシャや茶会のメンバーが来ていただけでなく、それに気がついたファリアーナに笑顔で手を振ってくれた。
 ブーケトスも令嬢らしからぬブーケを奪い合うという展開で盛り上がった。

 この後の披露パーティーも順調に進むと思われていたが、ファリアーナの不幸な姿を一目でも見たいシルフィーナがロヴァンスを引き連れてやって来たのだった。
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