酷いことをしたのはあなたの方です

風見ゆうみ

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 私がビアラと仲良くしているところを見たオルザベートは、案の定、腹を立てて、店の中に入ろうとしてきたみたいだけれど、エドと護衛の人達が止めてくれた事により、彼女は店の中に入れず、店の出入口付近でウロウロしているみたいだった。
 叫んだりすれば、店の人が通報する可能性があるから、大人しくしているみたい。
 
 ウロウロしているだけでも不審だし、営業妨害な気もするけれど。

「ただ、食べてる物を交換したくらいで、よくもあそこまでイライラできるものね」
「本当にね…。だけど、オルザベートの様子を見れば見るほど、ビアラが心配になるんだけど…」
「気にしなくていいって何回言ったらわかるの」
「ビアラが逆の立場だったら、絶対に気にしていると思うわ!」

 喧嘩とまでは言わないけれど、二人で言い合っていると、エドが戻ってきた。

「上手くいったよ。後は、トゥッチがビアラにどう手を出してくるかだ」
「今の段階で捕まえる事は出来ないの?」
「今の段階で捕まえても軽い罪だから、すぐに出てくるだろ? どうせなら、すぐに出れない、もしくは彼女に関しては入れてあげたい施設がある」
「入れてあげたい施設…?」

 聞き返したけれど、エドは答える気がないのか、もしくは言いにくい場所なのか、苦笑しただけだった。

「それにしても、簡単にひっかかってくれましたね」
「相手が馬鹿だと、罠をかけるには簡単に済んで助かる。ただ、ビアラ、これからは君が危ない」
「承知しております」

 エドの言葉に、ビアラは慎重な面持ちで頷いてから続ける。

「どう仕掛けてくるか、ですけど、出来れば長引かせない様に持っていきたいとは思ってます。ただ、さすがに命の危険を感じたら、自分の命を優先させてもらいます」
「当たり前でしょう!」
「それは当たり前だ」

 私とエドが言うと、ビアラは笑顔になって言う。

「それなら大丈夫です。とっとと終わらせてしまいましょ」

 護衛達からの連絡では、一時間以上経っても、オルザベートが外で待っているというので、店の人に事情を話すと、裏口から路地に出れ、そこから、オルザベート達がいる通りとは別の通りに出られると教えてくれたので、私達は裏口からお店を出た。

 オルザベートがどれくらい待ったのかはわからない。
 私達が席を立った事はわかっているはずだから、中々、出てこなかったのなら、諦めて帰るはず。

 そして、きっとこの恨みはビアラにいく事になる。
 もちろん、これは予想していた事だし、私達の計画通りでもある。

 問題はオルザベートが、何を考えているかわからないという事。
 そして、オルザベートと一緒にいるロンバートは、何を考えているのかしら。
 オルザベートが私を諦めたら、子供と3人で一緒に暮らすつもりみたいだけど、今の感じだと、オルザベートと逃避行しちゃうんじゃないかしら?

 残された子供は、祖父母に育てられるのと、どちらが幸せなのかしら?




 せっかくの旅行なのに、宿から出ずにゆっくりしていた、次の日のお昼前の事。
 ビアラが外出してくると言うので、一緒に行くと言ったけれど、危ないから部屋にいろと言われてしまった。
 しょうがなく、エドと二人で宿の部屋で大人しくしていたのだけれど、慌てた様子で、ビアラに付いていた護衛の一人が私達の部屋にやって来て叫んだ。

「ロードウェルがミゼライト嬢に接触してきました。ミゼライト嬢を脅して連れて行く予定だった様ですが、彼女がすんなり同行を認めた為、手荒な真似はせずに、潜伏先に向かったようです」
「わかった。ご苦労だった」

 エドは護衛の人にねぎらいの言葉を掛けたあと、私の方を見て続ける。

「僕は行ってくる。彼女に何かあったら大変だしな」
「ディラン様に怒られるから?」
「それだけじゃない。僕にとっても友達だから」

 エドの言葉を聞いて、椅子に座っていた私は立ち上がって言う。

「なら、私も行く。だって友達だから。もちろん、足手まといにならないようにする。あと、オルザベートにはちゃんと私の口で伝えないと駄目だと思うから。もちろん、彼女と会うつもりはないけれど」

 私の言葉を聞いたエドは困った顔をした。
 けれど、すぐに諦めて首を縦に振る。

「時間がない。すぐに出かける用意をしてくれ」
「はい!」

 今度こそ、ちゃんと終わらせよう。
 それがたとえ、彼女にとって残酷な言葉だったとしても、私はちゃんと、彼女に自分の気持ちを伝えないといけない。
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