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中が騒がしいから気になるけれど、中に入ってはいけないと言われているので、護衛の人と一緒に家の前で待っていると、少しだけ疲れた顔をしたビアラが家の中から出てきた。
「ビアラ! 大丈夫だった?」
「大丈夫だけど、かなりヒヤッとしたわ」
中の様子がどんな感じかはわからないけれど、とりあえず、ビアラが無事でホッとしていると、家の中から、オルザベートの声が聞こえてきた。
「今の声はエアリスなの?」
「……」
私とビアラは顔を見合わせた後、私は自分の顔がオルザベートに見えない様に、玄関とは正反対の方に顔を向けた。
すると、ビアラが小さな声で言う。
「トゥッチは騎士達におさえられてる。今は、外へ出ないように止めてくれてるみたいだけど、トゥッチには、あなたの姿は見えてるわ」
「ありがとう」
エドにはオルザベートに伝えたい事があると伝えてある。
だけど、直接、伝えたい訳ではないと。
だから、外には出て来ずに、家の中からオルザベートを出さずにいてくれている。
そんなオルザベートに聞こえる様に、わざと大きな声を出す。
「ビアラが無事で本当に良かったわ! ビアラに何かあったら、私は絶対にその相手を許せないから」
「ありがとう、エアリス。だけど、私がいなくなっても、他に友達はいるじゃない?」
ビアラの言葉を聞いたオルザベートが叫ぶ。
「そうよ、エアリス! あなたには私がいるわ! だから、そんな女と話をしていないで、私に顔を見せてよ!」
オルザベートは私が誰かと仲良くしていると邪魔をしてきた。
『エアリスは私の事を友達だと思ってくれてないのね?!』
『エアリスが他の子と仲良くしたら、私は一人ぼっちになるじゃない!』
なんて、責められもした。
いま、思えば、どうして、責められなければいけなかったの?
私の学園生活は、ほとんどオルザベートと過ごす事になってしまい、ルームメイトのビアラとだって、外で遊んだりする事なんて、ほとんど出来なかった。
オルザベートに休みの日も拘束されていたから。
それは、ロンバートと付き合い始めても一緒だった。
私がいてあげないといけない。
そんな風に思い込む様になってしまった。
きっぱりと断われなかった私も悪かったのかもしれない。
だから、遅くなってしまったけれど、言う事にする。
「私が本当の友達だと思えるのは、今、思い浮かぶ限りではビアラとノノレイだけよ。これから、新たな友達が出来たら、それはそれで嬉しいけど、私は親友が二人もいてくれるだけで幸せよ」
「待って、エアリス! あなたは大事な人を忘れてるわ! 私よ! オルザベートよ! あなたが私を忘れるわけない!」
そうね。
オルザベート、あなたの事は、一生忘れられないと思う。
心の中では答えるけれど、口に出して言葉は返さない。
「たしか、学園時代に仲が良かった子がいた様な気もするけど…、誰だったかしら、忘れちゃったわ。まあ、それくらいの友人だった、って事かしら?」
「そうね。思い出せないくらいなら、その程度でしょ」
私の意図を汲み取ってくれた様で、ビアラが頷いてくれた。
すると、またオルザベートが叫ぶ。
「エアリス! 酷い! あんなに仲良くしていた私が思い出せないって言うの?! お願い、エアリス! こっちを向いて! そうすれば自分が間違っている事がわかるわ!」
「エアリス、私、もう疲れたから行きましょ」
オルザベートの声など一切聞こえないかの様に、ビアラが促してきた。
「そうね。厄介な事に巻き込まれたみたいだけど、もう大丈夫よね。だって悪い人は捕まるんだから」
「そうそう。私を殺そうとしてきた人がいるのよ。無理だったけどね。何もしなければ良かったのに、カッとなって殺人未遂になっちゃった可哀想な人なの。心神喪失かもしれないけど…」
ビアラの言葉を聞いたオルザベートがまた叫ぶ。
「エアリス、聞いたでしょう?! その女はひどい女なのよ! 自分が殺されかけても笑える様な女なのよ?!」
そんな事ない。
ビアラは表面的には笑っているけど、いつもの笑顔じゃない事くらい、仲の良い私にはわかる。
本当は怖かったはず。
だけど、それを人前で…、オルザベートの前では見せちゃいけないと虚勢を張ってるだけ。
ビアラの手に触れると、彼女がびくりと震えた。
「ごめんね、ビアラ」
「エアリスが謝る事じゃないわよ」
「違うの。今からやる事、ビアラが嫌がりそうだから」
そう言って、ビアラの返事を待たずに手を握る。
「行こう、ビアラ」
「…そうね」
ビアラは笑ってから頷くと、私と手をつなぎ直す。
手を繋ぐ。
この行為はオルザベートはしたかったみたいだけど、私が絶対にしてあげなかった事。
「嫌よ! やめて、エアリス! 私以外の女と手を繋ぐなんて、そんなの嫌ぁっ! お願い、エアリス! こっちを向いて! エアリス! どうして、どうして、そんな酷い事をするのよ?!」
どうして?
あなたが正気ではないから。
それに、先に酷いことをしたのはあなたの方でしょう?
オルザベートの声が聞こえなくなるまで、振り返らずに、ビアラと手を繋いで歩いた。
「ビアラ! 大丈夫だった?」
「大丈夫だけど、かなりヒヤッとしたわ」
中の様子がどんな感じかはわからないけれど、とりあえず、ビアラが無事でホッとしていると、家の中から、オルザベートの声が聞こえてきた。
「今の声はエアリスなの?」
「……」
私とビアラは顔を見合わせた後、私は自分の顔がオルザベートに見えない様に、玄関とは正反対の方に顔を向けた。
すると、ビアラが小さな声で言う。
「トゥッチは騎士達におさえられてる。今は、外へ出ないように止めてくれてるみたいだけど、トゥッチには、あなたの姿は見えてるわ」
「ありがとう」
エドにはオルザベートに伝えたい事があると伝えてある。
だけど、直接、伝えたい訳ではないと。
だから、外には出て来ずに、家の中からオルザベートを出さずにいてくれている。
そんなオルザベートに聞こえる様に、わざと大きな声を出す。
「ビアラが無事で本当に良かったわ! ビアラに何かあったら、私は絶対にその相手を許せないから」
「ありがとう、エアリス。だけど、私がいなくなっても、他に友達はいるじゃない?」
ビアラの言葉を聞いたオルザベートが叫ぶ。
「そうよ、エアリス! あなたには私がいるわ! だから、そんな女と話をしていないで、私に顔を見せてよ!」
オルザベートは私が誰かと仲良くしていると邪魔をしてきた。
『エアリスは私の事を友達だと思ってくれてないのね?!』
『エアリスが他の子と仲良くしたら、私は一人ぼっちになるじゃない!』
なんて、責められもした。
いま、思えば、どうして、責められなければいけなかったの?
私の学園生活は、ほとんどオルザベートと過ごす事になってしまい、ルームメイトのビアラとだって、外で遊んだりする事なんて、ほとんど出来なかった。
オルザベートに休みの日も拘束されていたから。
それは、ロンバートと付き合い始めても一緒だった。
私がいてあげないといけない。
そんな風に思い込む様になってしまった。
きっぱりと断われなかった私も悪かったのかもしれない。
だから、遅くなってしまったけれど、言う事にする。
「私が本当の友達だと思えるのは、今、思い浮かぶ限りではビアラとノノレイだけよ。これから、新たな友達が出来たら、それはそれで嬉しいけど、私は親友が二人もいてくれるだけで幸せよ」
「待って、エアリス! あなたは大事な人を忘れてるわ! 私よ! オルザベートよ! あなたが私を忘れるわけない!」
そうね。
オルザベート、あなたの事は、一生忘れられないと思う。
心の中では答えるけれど、口に出して言葉は返さない。
「たしか、学園時代に仲が良かった子がいた様な気もするけど…、誰だったかしら、忘れちゃったわ。まあ、それくらいの友人だった、って事かしら?」
「そうね。思い出せないくらいなら、その程度でしょ」
私の意図を汲み取ってくれた様で、ビアラが頷いてくれた。
すると、またオルザベートが叫ぶ。
「エアリス! 酷い! あんなに仲良くしていた私が思い出せないって言うの?! お願い、エアリス! こっちを向いて! そうすれば自分が間違っている事がわかるわ!」
「エアリス、私、もう疲れたから行きましょ」
オルザベートの声など一切聞こえないかの様に、ビアラが促してきた。
「そうね。厄介な事に巻き込まれたみたいだけど、もう大丈夫よね。だって悪い人は捕まるんだから」
「そうそう。私を殺そうとしてきた人がいるのよ。無理だったけどね。何もしなければ良かったのに、カッとなって殺人未遂になっちゃった可哀想な人なの。心神喪失かもしれないけど…」
ビアラの言葉を聞いたオルザベートがまた叫ぶ。
「エアリス、聞いたでしょう?! その女はひどい女なのよ! 自分が殺されかけても笑える様な女なのよ?!」
そんな事ない。
ビアラは表面的には笑っているけど、いつもの笑顔じゃない事くらい、仲の良い私にはわかる。
本当は怖かったはず。
だけど、それを人前で…、オルザベートの前では見せちゃいけないと虚勢を張ってるだけ。
ビアラの手に触れると、彼女がびくりと震えた。
「ごめんね、ビアラ」
「エアリスが謝る事じゃないわよ」
「違うの。今からやる事、ビアラが嫌がりそうだから」
そう言って、ビアラの返事を待たずに手を握る。
「行こう、ビアラ」
「…そうね」
ビアラは笑ってから頷くと、私と手をつなぎ直す。
手を繋ぐ。
この行為はオルザベートはしたかったみたいだけど、私が絶対にしてあげなかった事。
「嫌よ! やめて、エアリス! 私以外の女と手を繋ぐなんて、そんなの嫌ぁっ! お願い、エアリス! こっちを向いて! エアリス! どうして、どうして、そんな酷い事をするのよ?!」
どうして?
あなたが正気ではないから。
それに、先に酷いことをしたのはあなたの方でしょう?
オルザベートの声が聞こえなくなるまで、振り返らずに、ビアラと手を繋いで歩いた。
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