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11 妻としての役目を果たしてくるわ
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さすがのロコッドもミアーナのためにパーティードレスを用意していた。サイズについてはメイドたちが把握していたため、彼女たちが既製品を買って来ただけだったが、ミアーナ的にはそれで良かった。
「ミアーナ様が持っておられたドレスの好みで今の流行りを取り入れたドレスを選んでみましたが、いかがでしょう?」
「とっても素敵よ。このドレスを選んでくれてありがとう」
今年の流行りの色は水色で、ミアーナも好きな色だった。アンクル丈なので動きやすく、胸元のピンク色の大きな花がワンポイントというシンプルなドレスだが、メイドが自分の好みをよくわかってくれているのだと思うと、それだけで嬉しかった。
胸元の花と同じ花のコサージュを髪につけ、エントランスホールに向かうと、すでに正装したロコッドが待っていた。
「お待たせしてしまい申し訳ございません」
「いや……、かまわないけど、なんか、雰囲気が違うね。とても綺麗だよ」
「ありがとうございます。髪形にアクセサリー、メイクがいつもと違いますので、気づいていただけて、とっても嬉しいですわ」
ミアーナにしてみれば、ロコッドが自分のいつもの姿を覚えているわけがないと思っていたので、そんな言葉が出ただけでも驚きだった。作り笑顔で礼を言った彼女の元に、ルイティーが近づいてくる。
「ミアーナさん。本当に素敵だわ。そんな素敵なドレスを贈ってもらえるなんて羨ましい。私なんて、マーベリックから何も贈ってもらったことがないのよ」
こう言えば同情してもらえると思ったのか、悲し気な様子でルイティーが呟くと、真っ先にロコッドが反応した。
「いくら忙しいからって酷すぎる。僕が代わりに何か贈るよ」
「ありがとう、ロコッド!」
見つめ合う二人に、ミアーナは笑顔で話しかける。
「おかしいですわね。お義兄様からルイティー様宛に、お手紙と贈り物が定期的に送られてきているとメイドから聞きましたけど、今までルイティー様が受け取っていたプレゼントは、誰からの贈り物だと認識されているのでしょうか」
「えっ!? あ……、そうね。そう言われてみればそうだったかも」
「ふふふ。ルイティー様は忘れっぽいところがあるのですね」
ミアーナが笑うと、ルイティーは苦笑してロコッドに話しかける。
「寂しくなるから早く帰ってきてね」
「わかった」
名残惜しそうに見つめ合う二人の横で、ミアーナはメイドたちに宣言する。
「さあ、精一杯、妻としての役目を果たしてくるわ! うまくいくことを祈っておいてね!」
「はい! お帰りをお待ちしておりますね!」
「お土産話を楽しみにしております。気をつけて行ってきてくださいませ!」
多くの使用人に見送られ、ミアーナは待たせていた馬車に乗り込んだ。別々に行きたいところだが、仲良しアピールをしなければならないので仕方がない。
(狭い馬車の中で二人きりなんて最悪ね。どうせ、ルイティー様のことで文句を言うんでしょう)
案の定、少し遅れて入ってきたロコッドが眉根を寄せてミアーナに話しかける。
「どうして、ルイティーに意地悪なことを言うんだ」
「意地悪なこととはどのようなことでしょうか」
「プレゼントのことだよ。忘れてしまうことだってあるだろう」
「何十日かに一度ならまだしも、十日くらいの感覚で贈られているのですよ? しかも一年以上です。忘れるなんてありますか?」
「そ、それは、まあ、ちょっと忘れるっていうのは、うん、酷いかな。で、でも、結婚初日に出征するなんてありえないだろう」
「それはお義兄様が決めたことではないのでしょう?」
「決めたのは国王陛下だけど」
「お義兄様にとって義父に当たる方でもありますし、何より国王陛下の命令です。逆らえるはずがないでしょう。どうしても放置されているとおっしゃりたいようですが、少なくとも嫁いだ初日に兄の妻を愛しているとおっしゃって、本当の妻を放置している方よりかは、お義兄様のほうが納得できる理由をお持ちだと思いますけどね」
はっきり言われたロコッドは言い返す言葉もなく、これ以上話をしたくないと言わんばかりに、流れる景色に目を向けた。
「ミアーナ様が持っておられたドレスの好みで今の流行りを取り入れたドレスを選んでみましたが、いかがでしょう?」
「とっても素敵よ。このドレスを選んでくれてありがとう」
今年の流行りの色は水色で、ミアーナも好きな色だった。アンクル丈なので動きやすく、胸元のピンク色の大きな花がワンポイントというシンプルなドレスだが、メイドが自分の好みをよくわかってくれているのだと思うと、それだけで嬉しかった。
胸元の花と同じ花のコサージュを髪につけ、エントランスホールに向かうと、すでに正装したロコッドが待っていた。
「お待たせしてしまい申し訳ございません」
「いや……、かまわないけど、なんか、雰囲気が違うね。とても綺麗だよ」
「ありがとうございます。髪形にアクセサリー、メイクがいつもと違いますので、気づいていただけて、とっても嬉しいですわ」
ミアーナにしてみれば、ロコッドが自分のいつもの姿を覚えているわけがないと思っていたので、そんな言葉が出ただけでも驚きだった。作り笑顔で礼を言った彼女の元に、ルイティーが近づいてくる。
「ミアーナさん。本当に素敵だわ。そんな素敵なドレスを贈ってもらえるなんて羨ましい。私なんて、マーベリックから何も贈ってもらったことがないのよ」
こう言えば同情してもらえると思ったのか、悲し気な様子でルイティーが呟くと、真っ先にロコッドが反応した。
「いくら忙しいからって酷すぎる。僕が代わりに何か贈るよ」
「ありがとう、ロコッド!」
見つめ合う二人に、ミアーナは笑顔で話しかける。
「おかしいですわね。お義兄様からルイティー様宛に、お手紙と贈り物が定期的に送られてきているとメイドから聞きましたけど、今までルイティー様が受け取っていたプレゼントは、誰からの贈り物だと認識されているのでしょうか」
「えっ!? あ……、そうね。そう言われてみればそうだったかも」
「ふふふ。ルイティー様は忘れっぽいところがあるのですね」
ミアーナが笑うと、ルイティーは苦笑してロコッドに話しかける。
「寂しくなるから早く帰ってきてね」
「わかった」
名残惜しそうに見つめ合う二人の横で、ミアーナはメイドたちに宣言する。
「さあ、精一杯、妻としての役目を果たしてくるわ! うまくいくことを祈っておいてね!」
「はい! お帰りをお待ちしておりますね!」
「お土産話を楽しみにしております。気をつけて行ってきてくださいませ!」
多くの使用人に見送られ、ミアーナは待たせていた馬車に乗り込んだ。別々に行きたいところだが、仲良しアピールをしなければならないので仕方がない。
(狭い馬車の中で二人きりなんて最悪ね。どうせ、ルイティー様のことで文句を言うんでしょう)
案の定、少し遅れて入ってきたロコッドが眉根を寄せてミアーナに話しかける。
「どうして、ルイティーに意地悪なことを言うんだ」
「意地悪なこととはどのようなことでしょうか」
「プレゼントのことだよ。忘れてしまうことだってあるだろう」
「何十日かに一度ならまだしも、十日くらいの感覚で贈られているのですよ? しかも一年以上です。忘れるなんてありますか?」
「そ、それは、まあ、ちょっと忘れるっていうのは、うん、酷いかな。で、でも、結婚初日に出征するなんてありえないだろう」
「それはお義兄様が決めたことではないのでしょう?」
「決めたのは国王陛下だけど」
「お義兄様にとって義父に当たる方でもありますし、何より国王陛下の命令です。逆らえるはずがないでしょう。どうしても放置されているとおっしゃりたいようですが、少なくとも嫁いだ初日に兄の妻を愛しているとおっしゃって、本当の妻を放置している方よりかは、お義兄様のほうが納得できる理由をお持ちだと思いますけどね」
はっきり言われたロコッドは言い返す言葉もなく、これ以上話をしたくないと言わんばかりに、流れる景色に目を向けた。
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