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21 レイドック侯爵家の応接室での話①
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簡単な挨拶のあと、お父様がファニたちに席に着くように促すと、ファニ以外は重い表情で椅子を引いて腰を下ろした。
総勢8名ということでソファタイプではなく長テーブルタイプの応接室で、向かって右側にブァーカルド家とラギリ家が座り、その向かい側にわたしとお父様が座った。
事前にファニのご両親であるブァーカルド子爵夫妻に話を聞いてみたところ、オズックとの話は何も聞いておらず、ラギリ様と上手くやっていると思い込んでいるようだった。
ファニは寮生活をしていて実家にはあまり戻っていないそうだから、ご両親が職場での詳しい話を知らなくてもおかしくはないとは思う。
ファニの婚約者をラギリ様と呼んでいたけれど、ラギリ男爵と一緒になりそうなので、今からはレッド様と呼ばせていただく。
レッド様のご実家は男爵家で、レッド様のお父様は元々は伯爵令息で、伯爵家はレッド様の伯父が継いでいる。
レッド様はラギリ家の長男なので、最終的には男爵家を継ぐと思われていた。
でも、彼は男爵になることは望まず、騎士の道を選び、男爵の爵位はレッド様の弟が継がれる予定だ。
ファニはそれが不満だった。
それを知ったレッド様は、ファニに内緒で密かに準備をしていたことがあった。
そのことと婚約について、レッド様は今日この場で、ファニに話すつもりらしい。
そして、わたしはファニに慰謝料を請求するつもりだ。
レッド様からのお話はあとにして、わたしの話を先にさせてもらうことにした。
斜向かいに座るファニに話しかける。
「ファニ様、あなたにお伝えしたいことがあります」
「アルミラったらどうしたの。いつも私のことはファニって呼んでくれていたじゃない」
「それは昔の話よ。あなたがオズック様と恋仲になって、わたしを裏切らなければ今もそう呼んでいたでしょうし、あなたはここに来なくても良かったでしょう」
「……恋仲?」
聞き返してきたのはファニではなく、彼女の母であるブァーカルド子爵夫人だった。
不思議そうにしているので、真相を伝えることにする。
「最近、わたしとオズック様が婚約破棄になったことは知っていらっしゃいますわよね?」
「……はい。存じ上げております」
「その原因を作ったのがファニ様です」
「い、一体、どういうことなのです? オズック様にファニが誘惑されたのでしょうか」
ブァーカルド子爵はわたしがこの先何を言おうとしているかや、この話を聞いたラギリ男爵夫妻が何を言い出すのか予想がついたようで、みるみるうちに顔が青ざめていく。
気の毒とは思うけれど、遠慮なく言わせてもらう。
「二人が浮気をすることになったのは、わたしが職場でのオズック様の様子を教えてほしいと、ファニ様に頼んだからだと思っておりましたが、実際は違うようでしたの」
「違わないわ! 私はあなたのためにオズック様と仲良くなったのよ」
「じゃあ聞くけれど、どうしてあなたはわざわざ、実家から離れた場所で就職しようと思ったの?」
「そ、それは、その、検問所は大事な役割をする場所だからよ。やりがいがあると思ったの」
「それなら、別に検問所じゃなくても役場でも良かったんじゃないの?」
「検問所に就職しちゃ駄目な理由でもあるの!?」
「そうね。そんな理由はないわね」
ファニに聞いても素直に答えてくれそうにないので、ブァーカルド子爵夫妻に尋ねてみる。
「ファニ様はお二人に就職先を決める際は、なんとお話をされたのでしょうか」
「嫁に行く前に社会経験をしておきたいと聞きました。なぜ、検問所に就職するのかについては教えてもらえていません」
子爵はそう答えたけれど、夫人のほうは何か思い出したのか、口を手で押さえた。
「ブァーカルド子爵夫人、何か思い出したことがあるなら素直に言いなさい」
お父様が命令すると、子爵夫人はつばを飲み込んだあと、渋々といった感じて口を開く。
「知り合いがいるから、そのほうが働きやすいと言っていました」
「だそうだけど、あなたの知り合いというのは誰だったの? 嘘をついても無駄よ。確認すればすぐにわかるから」
ファニのことだから、わたしの婚約者だから知り合いと言ったと言うのでしょう。
そう思っていたら案の定だった。
「オズック様が検問所に勤めていると聞いていたからよ! 私はあなたのために就職したのに!」
「わたしのつもりだったけれど、オズック様に誘惑されて浮気したって言いたいの?」
「私は浮気なんてしていないわ!」
ファニが興奮した様子で立ち上がって叫んだ。
「ファニ、もう認めてくれよ。君の職場では君とオズック様の件で持ち切りなんだ。言い逃れはできない」
一つ席を空けて座っていたレッド様が眉尻を下げて言った。
総勢8名ということでソファタイプではなく長テーブルタイプの応接室で、向かって右側にブァーカルド家とラギリ家が座り、その向かい側にわたしとお父様が座った。
事前にファニのご両親であるブァーカルド子爵夫妻に話を聞いてみたところ、オズックとの話は何も聞いておらず、ラギリ様と上手くやっていると思い込んでいるようだった。
ファニは寮生活をしていて実家にはあまり戻っていないそうだから、ご両親が職場での詳しい話を知らなくてもおかしくはないとは思う。
ファニの婚約者をラギリ様と呼んでいたけれど、ラギリ男爵と一緒になりそうなので、今からはレッド様と呼ばせていただく。
レッド様のご実家は男爵家で、レッド様のお父様は元々は伯爵令息で、伯爵家はレッド様の伯父が継いでいる。
レッド様はラギリ家の長男なので、最終的には男爵家を継ぐと思われていた。
でも、彼は男爵になることは望まず、騎士の道を選び、男爵の爵位はレッド様の弟が継がれる予定だ。
ファニはそれが不満だった。
それを知ったレッド様は、ファニに内緒で密かに準備をしていたことがあった。
そのことと婚約について、レッド様は今日この場で、ファニに話すつもりらしい。
そして、わたしはファニに慰謝料を請求するつもりだ。
レッド様からのお話はあとにして、わたしの話を先にさせてもらうことにした。
斜向かいに座るファニに話しかける。
「ファニ様、あなたにお伝えしたいことがあります」
「アルミラったらどうしたの。いつも私のことはファニって呼んでくれていたじゃない」
「それは昔の話よ。あなたがオズック様と恋仲になって、わたしを裏切らなければ今もそう呼んでいたでしょうし、あなたはここに来なくても良かったでしょう」
「……恋仲?」
聞き返してきたのはファニではなく、彼女の母であるブァーカルド子爵夫人だった。
不思議そうにしているので、真相を伝えることにする。
「最近、わたしとオズック様が婚約破棄になったことは知っていらっしゃいますわよね?」
「……はい。存じ上げております」
「その原因を作ったのがファニ様です」
「い、一体、どういうことなのです? オズック様にファニが誘惑されたのでしょうか」
ブァーカルド子爵はわたしがこの先何を言おうとしているかや、この話を聞いたラギリ男爵夫妻が何を言い出すのか予想がついたようで、みるみるうちに顔が青ざめていく。
気の毒とは思うけれど、遠慮なく言わせてもらう。
「二人が浮気をすることになったのは、わたしが職場でのオズック様の様子を教えてほしいと、ファニ様に頼んだからだと思っておりましたが、実際は違うようでしたの」
「違わないわ! 私はあなたのためにオズック様と仲良くなったのよ」
「じゃあ聞くけれど、どうしてあなたはわざわざ、実家から離れた場所で就職しようと思ったの?」
「そ、それは、その、検問所は大事な役割をする場所だからよ。やりがいがあると思ったの」
「それなら、別に検問所じゃなくても役場でも良かったんじゃないの?」
「検問所に就職しちゃ駄目な理由でもあるの!?」
「そうね。そんな理由はないわね」
ファニに聞いても素直に答えてくれそうにないので、ブァーカルド子爵夫妻に尋ねてみる。
「ファニ様はお二人に就職先を決める際は、なんとお話をされたのでしょうか」
「嫁に行く前に社会経験をしておきたいと聞きました。なぜ、検問所に就職するのかについては教えてもらえていません」
子爵はそう答えたけれど、夫人のほうは何か思い出したのか、口を手で押さえた。
「ブァーカルド子爵夫人、何か思い出したことがあるなら素直に言いなさい」
お父様が命令すると、子爵夫人はつばを飲み込んだあと、渋々といった感じて口を開く。
「知り合いがいるから、そのほうが働きやすいと言っていました」
「だそうだけど、あなたの知り合いというのは誰だったの? 嘘をついても無駄よ。確認すればすぐにわかるから」
ファニのことだから、わたしの婚約者だから知り合いと言ったと言うのでしょう。
そう思っていたら案の定だった。
「オズック様が検問所に勤めていると聞いていたからよ! 私はあなたのために就職したのに!」
「わたしのつもりだったけれど、オズック様に誘惑されて浮気したって言いたいの?」
「私は浮気なんてしていないわ!」
ファニが興奮した様子で立ち上がって叫んだ。
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