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12 ちょっとスッキリしました
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「クラーク辺境伯、彼女の無礼は私からお詫び致します。申し訳ございませんでした」
ディーンが深々と頭を下げると、ロレーヌ嬢は不服そうにしながらも彼にならって、金色の長い巻き髪を揺らしながら頭を下げた。
「謝る相手が違うだろう」
ラルフ様が言うと、ディーンは私を見て言います。
「リノアは気にしていないよな?」
「気にするに決まっているでしょう! 私はロレーヌ男爵令嬢とは今日を含めて二回しかお会いしてませんけど!?」
「もっと会わせるべきだったかな?」
困ったように笑うディーンを見て、婚約破棄してもらえた事を心の中で喜んだ。
こんな人と結婚なんてしたら、イライラするだけでした!
破談になって本当に良かったのです!
ロレーヌ嬢には感謝しないといけませんね。
そうなると、馴れ馴れしくされたくらいで怒るのは違う気もしてきました。
「私にとってあなたは過去の人なんです。出来れば二度とお会いしたくないです」
「そんな事を言うなよ。俺達の新居は君の家の近くなんだ。せっかくだし仲良くしてくれよ」
「どうして私の家の近くなんですか!」
おさまっていた怒りが再燃してしまって声を荒げて聞き返すと、返ってきた声はディーンではなく、ラルフ様のものでした。
「潰そうか?」
「はい?」
「家が出来たら越してくるんだろう? 逆に家が出来なければ引っ越してこれない」
「ラルフ様!」
笑顔で言われるので、ラルフ様の腕の袖をソッとつかんでから首を横に振る。
「もったいない事をしてはいけません。引っ越してきてくれなければ良いのですよ」
言ってから口をおさえる。
つい、本音が出てしまいました。
「リノア様、もしかして私とディーンが仲良くしている姿を見るのがお辛いとか?」
「辛いという事は絶対にありません」
心配そうな表情でロレーヌ嬢が聞いてきましたが、絶対にこれ、心配してませんよね。
だから、はっきりと答えると、なぜか馬鹿にしたように笑われた。
腹が立つので、私は言葉を続ける。
「それにもし、ロレーヌ男爵令嬢がそう思われるのでしたら、そちらがそれこそ私の住んでいる場所の近くに引っ越してくるのをやめていただきたいのですが」
屋敷から出なければ顔を合わす事もないかもしれませんが、こういう人達はきっと遠慮なく私の家に訪ねてくる事でしょう。
もちろん、使用人達が彼らを屋敷の中に入れるとは思えませんが。
「リノア、もう行こうか。彼女達と話をしている時間がもったいない」
「そうですね」
話の終わりどころをどうするか迷っていた所だったので、ラルフ様の申し出はすごくありがたい。
けれど、ロレーヌ嬢はそんな事はおかまいなしに話しかけてくる。
「あら、せっかくお店にいらしたのに何も食べて帰られないの? しかもお土産もなく? 伯爵家ってそんなにお金がないものなの?」
ロレーヌ嬢はディーンの腕に顔を寄せ、上目遣いで彼を見ながら尋ねる。
ディーンはふわふわの茶色の髪をかきあげてから、誇らしげにロレーヌ嬢に答えた。
「伯爵家にも寄るんだよ。俺なら大丈夫だけれど、リノアの家は無理なのかもしれないね」
「……」
それくらい出せますよ。
と言ってやりたい気持ちにもなりましたが、関わる事が面倒くさいのです。
無視して行きましょう、と声を掛けようと、ラルフ様の方を見上げると、恐ろしい形相をされておりました。
「あ、あのラルフ様」
「お前達は俺が女性に金を出させる様な男だと思っているのか」
「い、いえ、とんでもございません!」
ディーンがびくりと身体を震わせ、ロレーヌ嬢を自分の方に引き寄せながら首を横に振った。
「では、先程の発言はなんだ。クラーク家には金がないと言いたいのか?」
「いえ、違います! ブルーミング家にないのだと」
「俺の義実家になるんだ。金がないはずないだろう」
んん?
普通に私と結婚する気でいらっしゃいますね。
ツッコミたいところですが、今は違うような気がするので黙っておく事にします。
「言っておくが、俺達はもう食べ終えたあとだ。お前達もVIPルームを予約しているのか」
「…一般の予約席です」
肩を落とすディーンをラルフ様は鼻で笑ったあと、私に優しい笑みを向けられました。
「行こうか、リノア」
「はいなのです!」
本当は私が言い返したいところでしたが、お金の問題になりますと、ラルフ様が断然上です。
すれ違いざまにロレーヌ嬢を見ると悔しそうな表情をされておられたので、ちょっとスッキリしました。
ディーンが深々と頭を下げると、ロレーヌ嬢は不服そうにしながらも彼にならって、金色の長い巻き髪を揺らしながら頭を下げた。
「謝る相手が違うだろう」
ラルフ様が言うと、ディーンは私を見て言います。
「リノアは気にしていないよな?」
「気にするに決まっているでしょう! 私はロレーヌ男爵令嬢とは今日を含めて二回しかお会いしてませんけど!?」
「もっと会わせるべきだったかな?」
困ったように笑うディーンを見て、婚約破棄してもらえた事を心の中で喜んだ。
こんな人と結婚なんてしたら、イライラするだけでした!
破談になって本当に良かったのです!
ロレーヌ嬢には感謝しないといけませんね。
そうなると、馴れ馴れしくされたくらいで怒るのは違う気もしてきました。
「私にとってあなたは過去の人なんです。出来れば二度とお会いしたくないです」
「そんな事を言うなよ。俺達の新居は君の家の近くなんだ。せっかくだし仲良くしてくれよ」
「どうして私の家の近くなんですか!」
おさまっていた怒りが再燃してしまって声を荒げて聞き返すと、返ってきた声はディーンではなく、ラルフ様のものでした。
「潰そうか?」
「はい?」
「家が出来たら越してくるんだろう? 逆に家が出来なければ引っ越してこれない」
「ラルフ様!」
笑顔で言われるので、ラルフ様の腕の袖をソッとつかんでから首を横に振る。
「もったいない事をしてはいけません。引っ越してきてくれなければ良いのですよ」
言ってから口をおさえる。
つい、本音が出てしまいました。
「リノア様、もしかして私とディーンが仲良くしている姿を見るのがお辛いとか?」
「辛いという事は絶対にありません」
心配そうな表情でロレーヌ嬢が聞いてきましたが、絶対にこれ、心配してませんよね。
だから、はっきりと答えると、なぜか馬鹿にしたように笑われた。
腹が立つので、私は言葉を続ける。
「それにもし、ロレーヌ男爵令嬢がそう思われるのでしたら、そちらがそれこそ私の住んでいる場所の近くに引っ越してくるのをやめていただきたいのですが」
屋敷から出なければ顔を合わす事もないかもしれませんが、こういう人達はきっと遠慮なく私の家に訪ねてくる事でしょう。
もちろん、使用人達が彼らを屋敷の中に入れるとは思えませんが。
「リノア、もう行こうか。彼女達と話をしている時間がもったいない」
「そうですね」
話の終わりどころをどうするか迷っていた所だったので、ラルフ様の申し出はすごくありがたい。
けれど、ロレーヌ嬢はそんな事はおかまいなしに話しかけてくる。
「あら、せっかくお店にいらしたのに何も食べて帰られないの? しかもお土産もなく? 伯爵家ってそんなにお金がないものなの?」
ロレーヌ嬢はディーンの腕に顔を寄せ、上目遣いで彼を見ながら尋ねる。
ディーンはふわふわの茶色の髪をかきあげてから、誇らしげにロレーヌ嬢に答えた。
「伯爵家にも寄るんだよ。俺なら大丈夫だけれど、リノアの家は無理なのかもしれないね」
「……」
それくらい出せますよ。
と言ってやりたい気持ちにもなりましたが、関わる事が面倒くさいのです。
無視して行きましょう、と声を掛けようと、ラルフ様の方を見上げると、恐ろしい形相をされておりました。
「あ、あのラルフ様」
「お前達は俺が女性に金を出させる様な男だと思っているのか」
「い、いえ、とんでもございません!」
ディーンがびくりと身体を震わせ、ロレーヌ嬢を自分の方に引き寄せながら首を横に振った。
「では、先程の発言はなんだ。クラーク家には金がないと言いたいのか?」
「いえ、違います! ブルーミング家にないのだと」
「俺の義実家になるんだ。金がないはずないだろう」
んん?
普通に私と結婚する気でいらっしゃいますね。
ツッコミたいところですが、今は違うような気がするので黙っておく事にします。
「言っておくが、俺達はもう食べ終えたあとだ。お前達もVIPルームを予約しているのか」
「…一般の予約席です」
肩を落とすディーンをラルフ様は鼻で笑ったあと、私に優しい笑みを向けられました。
「行こうか、リノア」
「はいなのです!」
本当は私が言い返したいところでしたが、お金の問題になりますと、ラルフ様が断然上です。
すれ違いざまにロレーヌ嬢を見ると悔しそうな表情をされておられたので、ちょっとスッキリしました。
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